第三十四章 —— 非常識な値段
第三十四章 —— 非常識な値段
メイラスク・ドック・セツルメントの朝は、前日と同じ活動で始まった——小型船がステーションの間を行き交い、採掘作業員たちがシフトの準備をし、商人たちが露店を開き始める。しかし紬にとって、この朝は違っていた。
彼は一時間前から商業取引所にいて、部屋の隅にある小さなテーブルの一つに座り、商品価格を表示するモニターを見つめていた。隣ではランがタブレットを手に座り、絶えず変化するデータを素早く読み取っている。
「チタンの価格がまた上がっています」とランは顔を上げずに言った。「昨日より十四パーセント高いです。」
紬は眉をひそめた。
「上がり続けているのか?」
「はい。チタンだけじゃありません。プラチナ、ニッケル、その他の希少金属も上がっています。これは普通の変動じゃない——トレンドです。」
紬はモニターのグラフを見つめた。そのパターンは明らかだった——過去数週間にわたる安定した上昇で、大きな下落はない。データを読むことに慣れた者として、彼はこういうパターンが自然に発生するものではないことを知っていた。
「原因について何か情報はあるか?」
「中心部の星系からの需要が増えています。いくつかの大工場が生産を拡大しているという報告があり、大量の原材料を必要としています。」
紬は頷いた。それは筋の通った説明だ。しかし何かが彼を引っかかっていた。
「セラフィエル、過去一年間のフロンティアでの鉱物価格のデータはあるか?」
「はい、紬。現地の取引データベースにアクセスします。」
彼の前の画面が変わり、より長期のグラフが表示された。紬は現在の上昇パターンと過去のデータを比較した。何かが違っていた——今回の上昇はあまりに安定しており、あまりに規則的だ。
「ラン、これを見ろ。」
ランが近づき、紬が示したグラフを見つめた。
「何か見つけたのか?」
「上昇パターンを見ろ。これは通常の市場変動じゃない。整然としすぎている。誰かが価格を操作しているみたいだ。」
ランは眉をひそめ、そのグラフを注意深く調べた。
「……確かに。普通は価格は不規則なパターンで上下する。でもこれは……階段みたいだ。少し上がって、安定して、また少し上がって、安定する。」
「誰かが市場を支配している。」
ランは長く息を吐いた。
「ここはフロンティアです、船長。こういうことは起きます。時には大企業が自分たちの利益のために価格を弄ぶこともあります。」
紬は考えた。これは投資前に考慮すべきリスクだった——市場リスクだけでなく、操作のリスクだ。
「セラフィエル、この価格上昇から最も利益を得ているのが誰か、調べられるか?」
「試してみます、紬。しかしフロンティアのデータは中心部の星系ほど完全ではありません。時間がかかるかもしれません。」
「できる範囲で頼む。」
「了解しました。」
ランが紬を見つめた。
「で、どうする? まだ買うつもりか?」
紬はもう一度グラフをしばらく見つめた。そして頷いた。
「買う。ただし一度に全部は買わない。一部を買って、反応を見てから残りを買う。」
ランは微笑んだ。
「賢明な判断です、船長。ボリンに連絡します。」
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一時間後、彼らはボリンの倉庫にいた——金属鉱石のコンテナで満たされた広い部屋だ。ボリン自身は、鋭い目と率直な態度を持つ、厚い髭のドワーフだった。
「チタンを買いたいんだってな?」彼は好奇心を持って紬を見つめながら尋ねた。
「はい。話し合った通り、五十トンです。」
ボリンは頷いた。
「いいだろう。今日の価格は先週より十五パーセント高い。でも新規の客だから、五パーセントの割引をしてやる。それでも十分に儲かる。」
紬は頷いた。価格交渉は迅速に進んだ——ボリンは無駄話を嫌うタイプの商人だ。十五分も経たないうちに、彼らは合意に達した。
「よし。契約書を用意する」とボリンは言った。「ちょっと待ってくれ。」
彼は奥の部屋へ歩いていき、紬とランを倉庫に残した。
ランが紬を見つめた。
「本当にこれでいいのか?」
「リスクは計算済みだ。輸送費、保管費、保険、市場変動。たとえ価格が十パーセント下がっても、まだ利益は出る。」
ランは敬意を込めて頷いた。
「本当に全部計算しているんですね。」
「不必要なリスクは取りたくない。」
ボリンがタブレットを持って戻ってきたが、その表情は変わっていた。
「問題が起きた」と彼は言った。
紬は眉をひそめた。
「何だ?」
「市場が凍結された。一時的に。」
「凍結?」
「ああ。フロンティア貿易当局が、全ての鉱物取引の一時的な凍結命令を出した。調査が終わるまで、誰も売買できない。」
ランは警戒した表情で紬を見つめた。
「何の調査だ?」
ボリンは肩をすくめた。
「彼らは言わなかった。でもここ数ヶ月で何度か起きている。大抵は一、二日で終わる。」
紬はその意味を考えた。市場凍結は取引を完了できないことを意味する——少なくとも当面は。そしてもし凍結が長引けば、市場が再開された時に価格が急変する可能性がある。
「回避する方法はあるか?」
「合法的にはない。闇商人と取引することもできるが、それは危険だ。そしてフロンティアに来たばかりなら、彼らと関わりたくはないだろう。」
紬は頷いた。
「わかった。待つ。」
ランは不満そうな表情で彼を見つめた。
「船長、時間を無駄にしています。」
「金を失うよりは時間を無駄にする方がましだ。凍結が終わるまで待つ。その間に、実際に何が起きているのか調べる。」
ボリンは同意して頷いた。
「賢明な判断だ、船長。新しい商人の多くはパニックになって悪い決断をする。あなたはそうじゃない。」
紬は答えなかった。彼はただ、ランのタブレットに表示された凍結通知——フロンティア貿易当局からの公式発表——を見つめていた。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「この凍結について情報を得られるか?」
「試してみます。しかし先ほども申し上げた通り、フロンティアのデータは中心部の星系ほど完全ではありません。」
「できる限り頼む。」
「了解しました。」
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彼らは商業取引所に戻った。そこでの雰囲気は以前とは異なっていた——より緊張している。数人の商人が落ち着かない様子で、低い声で話し合っている。年老いた男性が隅に座り、不機嫌そうな表情を浮かべている。
ランが紬に近づいた。
「何人かの商人に話を聞きました。全員が困惑しています。なぜこの凍結が起きたのか、誰も知りません。」
「誰も知らないのか?」
「大企業が価格を下げるための戦術だと言う者もいれば、市場操作の調査に関係していると言う者もいます。」
紬は考えた。どちらの可能性も理屈に合っている——あるいは両方とも正しいかもしれない。
「待つ。でも待っている間に、できるだけ多くの情報を集める。」
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午後、紬は前日と同じレストランに座っていた。レアが傭兵事務所での用事を終えて合流した。
「市場が凍結されたのか?」ランの説明を聞いて彼女は尋ねた。
「ああ。一時的にな。」
レアは肩をすくめた。
「これがフロンティアだ、船長。こういうことはよく起きる。時には大企業が価格を弄び、時には現地当局が何かを制御しようとする。」
「これは明日の護衛契約に影響するのか?」
「いいや。あの契約は鉱物取引とは関係ない。ただの通常の貨物護衛だ。」
「よし。少なくとも一つは順調だ。」
レアは微笑んだ。
「心配しすぎだ、船長。フロンティアはこんなものだ——順調な時もあれば、止まる時もある。大事なのは動き続けることだ。」
紬は思わず微笑みそうになった。
「その通りだ。動き続ける。」
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夜、紬はコックピットの窓の前に立ち、遠くで点滅するメイラスク・ドック・セツルメントを見つめた。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「凍結について何か見つけたか?」
「興味深いパターンを見つけました。過去六ヶ月間に、四回の同様の凍結がありました。全て鉱物価格が上昇している時に発生しています。そして凍結が終了した後、価格は常に約十から十五パーセント下落しています。」
紬は眉をひそめた。
「つまり、この凍結は実際には価格を下げるために使われているのか?」
「可能性があります。誰か、あるいは何者かが凍結を利用して市場を操作している可能性があります。価格を上昇させ、市場を凍結し、再開時に安値で買い占めるのです。」
「市場操作か。」
「はい。そしてその犯人は、貿易当局に影響力を及ぼす十分な力を持つ大企業かもしれません。」
紬は考えた。もしセラフィエルの推測が正しければ、今回の凍結は事故ではない——それは戦略の一部だ。
「何かできることはあるか?」
「凍結が終わるのを待ち、価格が下がった時に購入することができます。あるいは、誰がその黒幕なのかを突き止め、操作を暴露しようとすることもできます。」
紬は第一の選択肢を選んだ。今のところ、彼は自分の取引を安全に完了したいだけだった。
「待つ。でもこの情報は後で取っておく。」
「了解しました、紬。」
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リビングルームで、ランとレアは明日の予定について話し合っていた。
「隣のステーションへの護衛契約だ」とレアが言う。「短い旅だ、FTLで約四時間。積荷はエンジン部品と医療器具だ。」
ランが頷いた。
「あまり危険ではない?」
「リスクは低い。でも警戒は怠らない。」
紬が部屋に入ってきた。
「明日の契約は順調に進むと聞いた。」
レアが頷いた。
「ああ。朝早く出発して、夕方には戻る。」
「俺も行く。」
レアは眉を上げた。
「船長が来る必要はない。俺一人で十分だ。」
「わかってる。でもフロンティアをもっと見てみたい。」
レアは微笑んだ。
「わかった。モビルフレームの準備をしておく。」
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就寝前、紬はソファに座り、あの年老いた商人から買った地図を読んでいた。セラフィエルは既にデジタル化しており、今はタブレットの画面で同じ記号を見ることができる。
「セラフィエル、この地図を我々の航法データと比較したか?」
「はい、紬。公式データベースに記録されていない場所がいくつかあります——おそらく小さな鉱山、私設ステーション、あるいは隠れ家でしょう。」
「隠れ家?」
「フロンティアには記録されていない場所が多くあります。独立した採掘者によって使われるものもあれば、闇商人や海賊によって使われるものもあります。」
紬は考えた。
「この情報は保存しておこう。いつか役立つかもしれない。」
「賢明な判断です、紬。」
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【次回予告 第三十五章 —— 「フロンティアにはフロンティアのルールがある」】
市場凍結は終了するが、紬は取引が簡単に完了できないことを知る。仲裁によって解決しなければならない交易紛争が発生する——そして紬はフロンティアが独自の法制度を持つことを学ぶ。仲裁手続きの最中、セラフィエルがヴァスケリル小惑星帯から緊急信号を受信する。
【第三十五章へ続く…】




