第十六章 —— ヴィレリア・プライム
第十六章 —— ヴィレリア・プライム
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**10.20**
ASTRAEONとランの貨物船が、二度目となるヴィレリア・プライムの軌道に入った。
紬はコックピットの窓の前に立ち、眼下に広がる緑の惑星を見つめた——広大な農地が緑の絨毯のように広がり、きらめく川が大地を縫っている。遠くでは、星系の恒星が黄金色の光を放ち、ゆっくりと流れる白い雲を照らしている。
「セラフィエル、戻ってきたな。」
「はい、紬。ヴィレリア・プライムは前回と同じ姿です。」
「この惑星が好きだ。何か落ち着く。」
「ヴィレリアは農業惑星です。リラディスのような商業の中心地よりも、生活は穏やかです。」
紬は頷いた。
「同じ宇宙港にドッキングするのか?」
「はい。ランが全て手配しています。貨物は宇宙港近くの倉庫で待機しています。」
「よし。すぐに降りよう。」
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**10.45**
紬とセラフィエルはASTRAEONを離れ、宇宙港へ向かった。
外の空気は爽やかだ——土と植物の香りが心地よい。紬は深く息を吸い込み、宇宙ステーションの空気とは異なる感覚を楽しんだ。
宇宙港の入り口で、ランが明るい笑顔で待っていた。
「星崎船長! ヴィレリアへようこそ。」
「ありがとう、ラン。貨物は準備できているか?」
「ええ。全て梱包済みで、積み込みの準備はできています。」ランは宇宙港近くの大きな倉庫を指した。「食料3,000トン——米、小麦、野菜、果物です。品質は私が直接確認しました。全て最高級品です。」
「よし。すぐに積み込もう。」
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**11.00**
三人は倉庫へ歩いていった。
内部には、食料の入ったコンテナが整然と積み上げられている——大きな袋に入った米、木箱に入った小麦、保冷容器に入った野菜や果物。
紬はコンテナの間を歩き、いくつかを確認した。
「これら全部をケイレンズ・リーチに運ぶのか?」
「ええ。これまでに運んだ中で最大の貨物です。今の食料危機なら、飛ぶように売れるでしょう。」
「売却でどれくらいの利益が見込める?」
ランは微笑んだ——既に計算済みであることを示すような微笑みだ。
「現在の市場価格で全て売り切れば、利益は約30万ギャラクシークレジットです。あなたの契約報酬を合わせると、総額約40万になります。」
紬は静かに口笛を吹いた。
「それは大きいな。」
「ええ。でもリスクも大きい。ケイレンズ・リーチへの航路は決して安全ではありません。」
「リスクには対応するつもりだ。」
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**11.30**
積み込み作業は迅速に進んだ。
自動ドローンが倉庫からランの貨物船へとコンテナを運んでいく。紬は遠くから見守り、全てが順調に進むことを確認した。
「セラフィエル、全ての貨物は計数済みか?」
「はい、紬。数量は契約通りです——食料3,000トン。品質も良好です——損傷や腐敗の兆候はありません。」
「よし。」
その間、ランは倉庫の作業員たちと話していた——積み込みのスケジュールを調整し、書類を確認している。
紬は彼女に近づいた。
「ラン、何か問題でも?」
「いいえ、全て順調です。ただ……」ランは言葉を切り、表情が少し真剣になった。「……悪い知らせを聞きました。」
「何だ?」
「二日前、ケストレル区域で貨物コンボイが襲撃されたそうです。目的地は同じ星系で、食料を運んでいたとのことです。」
紬は眉をひそめた。
「被害は?」
「死者はいませんが、貨物は全て略奪されました。約2,000トンの食料を失ったそうです。」
「最初の契約で遭遇した海賊たちと同じか?」
「わかりません。でもこの航路で海賊活動が増加していることを示しています。」
紬は考えた。
「警戒を強めなければならない。」
「ええ。私も貨物船の警戒を強化します。」
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**12.00**
積み込みが完了した。
紬とランは倉庫を出て、宇宙港内のレストランエリアへ向かった。
二人は遠くに農地が見える小さなレストランに座った。
「二人分の昼食を注文しました」とランは言った。「地元の料理です——新鮮な野菜とローストミート。きっと気に入りますよ。」
「楽しみにしている。」
しばらくの間、二人は黙って景色を楽しんだ。
そしてランが言った:
「船長、一つお聞きしたいことがあります。」
「どうぞ。」
「あなたはこの銀河に来たばかりだと言いました。でもとても自信に満ちているように見えます。どうしてこんなに落ち着いていられるのですか?」
紬は考えた。
「わからない。たぶん他に選択肢がないからだと思う。パニックになったら、やっていけない。」
ランは微笑んだ。
「現実主義者ですね、船長。それが良いと思います。」
「ただやるべきことをしているだけだ。」
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**12.30**
料理が運ばれてきた——香り高いソースのかかったローストミートと新鮮な野菜だ。
紬は夢中で食べ始めた。
「美味い。」
「ヴィレリアは料理で有名です。畑から直接採れた新鮮な食材を使っています。」
紬は頷き、食べ続けた。
「ラン、この後はすぐにケイレンズ・リーチへ向かうのか?」
「ええ。遅らせる理由はありません。早く着けば、早く売って戻れます。」
「よし。俺も先延ばしは好きじゃない。」
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**13.00**
昼食が終わった。
紬とランは宇宙港へと歩いて戻った。
そこで紬は、壁の大きなディスプレイに地元のニュースが表示されているのを見た。画面には、ケストレル区域での海賊襲撃の報道が流れている。
紬は立ち止まった。
「セラフィエル、あれは何だ?」
「ケストレル区域での海賊襲撃に関するニュースです。報告によれば、貨物コンボイが正体不明の海賊グループに襲撃されたとのことです。」
紬は注意深く画面を読んだ。
「……襲撃は二日前に発生。コンボイは全ての貨物を失った。死傷者なし。現地当局が調査中。」
ランが彼の隣に立ち、同じニュースを読んだ。
「心配ですね」と彼女は静かに言った。
「ああ。でも怖がって止まるわけにはいかない。」
ランは彼を見つめた。
「おっしゃる通りです、船長。でももっと注意しなければなりません。」
「いつも注意している。」
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**13.30**
紬はASTRAEONに戻った。
コックピットで、彼はケイレンズ・リーチへの航路図を確認した。ケストレル区域はその航路の一部だ——海賊活動で知られる領域だ。
「セラフィエル、ケストレル区域を避けることはできるか?」
「代替航路はありますが、より長くなります——約2日間の追加移動です。そしてその航路にも独自のリスクがあります。」
「どんなリスクだ?」
「その地域は警備パトロールが稀です。海賊がより大胆に活動している可能性があります。」
紬は考えた。
「つまり、完全に安全な航路はないわけだ。」
「ありません、紬。ここは辺境の領域です。リスクは常に存在します。」
「ならば、直行ルートを行く。永遠に逃げ続けるわけにはいかない。」
「賢明な判断です、紬。」
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**14.00**
紬はランからメッセージを受信した。
「船長、こちらは全て準備完了です。出発はいつにしますか?」
紬は通信ボタンを押した。
「30分後に出発する。最後の点検をいくつか終わらせるだけだ。」
「わかりました。待っています。」
「ラン。」
「はい?」
「ケストレル区域での襲撃のことは知っているよな?」
「ええ、知っています。」
「あんなことにはさせない。」
数秒の沈黙。
そしてランの声——先ほどよりも温かみを帯びて。
「あなたを信頼しています、船長。」
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**14.30**
全ての準備が完了した。
紬はパイロットシートに座り、ケイレンズ・リーチへの航路を示す画面を見つめた。
「セラフィエル、出発準備はできている。」
「はい、紬。全システム準備完了です。ランの貨物船も所定の位置についています。」
「ランに連絡して、まもなく出発することを伝えろ。」
「了解しました。」
数秒後、ランの声が聞こえる。
「こちらラン。準備はできています。マークした航路に従ってください。」
紬は通信ボタンを押した。
「了解。ASTRAEON、出発する。」
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**14.45**
ASTRAEONとランの貨物船がヴィレリア・プライムを離れた。
窓の外では、緑の惑星が小さくなり始めている——太陽の光を受けてきらめく美しい球体だ。
「船長、ケイレンズ・リーチへ向けて10分後にFTLに入ります。」
紬は頷いた。
「よし。位置を維持しろ。」
「紬。」
「何だ?」
「この旅は予想以上に危険かもしれません。それでも船長は確信していますか?」
紬はケイレンズ・リーチへの航路を示す画面を見つめた——遠くの明るい点が、見知らぬ領域に囲まれている。
「確信している、セラフィエル。始めよう。」
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**15.00**
FTLが始まった。
紬はASTRAEONが超光速に入る際の微かな振動を足元に感じた。窓の外では、星々が伸びる光の線へと変わった。
「セラフィエル、FTLでどのくらいかかる?」
「ケストレル区域まで約12時間です。そこから亜光速で数時間移動し、ケイレンズ・リーチに到着します。」
紬は頷いた。
「監視を続けてくれ。危険の兆候があればすぐに知らせろ。」
「もちろんです、紬。」
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**16.00**
紬は船長専用居住区のリビングルームへ歩いていった。
彼はソファに座り、FTLの景色——青い光の線が流れ続ける窓の外を見つめた。
彼はこの旅のことを考えていた。ランのこと。貨物のこと。ケストレル区域の海賊のこと。
「セラフィエル。」
「はい、紬?」
「海賊に遭遇すると思うか?」
「可能性は高いです。ケストレル区域は海賊活動の多い地域です。しかしASTRAEONがあれば、ほとんどの船が持っていない優位性があります。」
「わかってる。でも船の力に頼りすぎたくない。良い船長になることを学びたい。」
「船長は既に良い船長です、紬。」
紬は小さく微笑んだ。
「いつもそう言うな。」
「それが真実だからです。」
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**18.00**
紬はセラフィエルと夕食をとった。
料理は質素だ——野菜スープと温かいパン。
「セラフィエル、ランにも食事を送ってくれ。」
「既に送りました、紬。ランは喜んで受け取りました。」
「よし。旅の間、彼女に健康でいてほしい。」
「船長は本当にランのことを気にかけているのですね。」
紬は頷いた。
「彼女は取引相手だ。そして彼女は……」彼は言葉を切り、適切な表現を探した。「……友達だ。」
セラフィエルは微笑んだ。
「それは良い進展です、紬。」
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**20.00**
紬はランからメッセージを受信した。
「船長、夕食をありがとうございます。セラフィエルは本当に素晴らしい料理人ですね。」
「伝えておく。」
「あなたの船に乗せてもらえることにも感謝しています。ここにいるとより安全だと感じます。」
「感謝する必要はない。これは仕事の一部だ。」
「それでも、感謝しています。」
「ラン。」
「はい?」
「あと数時間でケストレル区域を通過する。警戒を強める。君も注意しろ。」
「注意します、船長。お知らせいただきありがとうございます。」
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**22.00**
紬はコックピットに戻った。
画面では、航路図が彼らがケストレル区域に近づいていることを示している。
「セラフィエル、危険の兆候はあるか?」
「まだありません、紬。センサーは何も検知していません。しかしまだ安全な距離にいます。」
「監視を続けてくれ。」
「もちろんです、紬。」
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**23.00**
紬はパイロットシートに座り、画面を見つめていた。
FTLの景色は変わらない——青い光の線が流れ続ける。
彼は眠気を感じ始めていたが、起きているように努めた。
「セラフィエル、少し眠る。何かあったら起こしてくれ。」
「了解しました、紬。船は私が守ります。」
「ありがとう、セラフィエル。」
紬は目を閉じた。
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**01.00**
紬はセラフィエルの声で目を覚ました。
「紬。起きてください。」
彼は素早く目を開けた。
「何だ? どうした?」
「遠方に信号を検知しました。小型船三隻、低速で移動中です。FTL航路の外側に位置し、待ち伏せしているかのようです。」
紬は背筋を伸ばした。
「海賊か?」
「可能性が高いです。その動きパターンは不審です。」
「距離は?」
「約20万キロメートルです。まだ我々を検知していません。」
「よし。位置を維持しろ。監視を続けろ。」
「了解しました、紬。」
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**02.00**
紬はコックピットに留まり、画面を見つめていた。
三つの信号はまだそこにあった——ゆっくりと動き、何かを待っているかのようだ。
「セラフィエル、彼らは俺たちの存在に気づいているか?」
「まだです。我々は彼らの標準センサーの範囲外にいます。しかし接近すれば、彼らが我々を検知するでしょう。」
「彼らを通過するまでどのくらいかかる?」
「現在の速度で約2時間です。」
紬は考えた。
「彼らを回避できるか?」
「航路を少し変更できます——彼らの位置から遠ざかるように。移動時間は約30分増えますが、検知されずに通過できます。」
「それで行こう。わざわざ問題を探す必要はない。」
「了解しました、紬。航路を変更します。」
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**04.00**
航路の変更に成功した。
三つの信号はその位置に留まり、ASTRAEONとランの貨物船が安全な距離を保って通過したことに気づいていない。
紬はほっと息をついた。
「セラフィエル、まだ追跡しているか?」
「いいえ。彼らはその位置に留まっています。どうやら別の船を待っているようです。」
「よし。今のところは安全だ。」
「はい、紬。安全です。」
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**06.00**
FTLが終了した。
窓の外に、紬は新しい恒星系を見た——オレンジ色の恒星と、その周囲にいくつかの惑星が浮かんでいる。
「船長、ケイレンズ・リーチ星系に到着しました。」
紬はその星系を見つめた。
「ケイレンズ・リーチ……着いたな。」
「はい、紬。1時間以内に主要ステーションにドッキングします。」
「よし。ランに連絡して、到着したことを伝えろ。」
「了解しました。」
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**06.30**
紬はランからメッセージを受信した。
「船長、私の貨物船からケイレンズ・リーチが見えています。着きましたね!」
その声は安堵に満ちている——喜びと安心が混ざったような声だ。
紬は微笑んだ。
「ああ、ラン。着いたぞ。後は貨物を売るだけだ。」
「既に買い手に連絡を取っています。ステーションで待っています。」
「よし。終わらせよう。」
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【次回予告 第十七章 —— 「情報の値段」】
ケイレンズ・リーチに到着した紬とランは、貨物の販売に成功する。しかし紬は、この銀河では情報が貴重な商品であることに気づく。彼は情報ブローカーを訪れ、この地域の海賊活動に関するデータを購入する——そして驚くべき何かを発見する。
【第十七章へ続く…】




