第147話 Q.E.D.
「真実の愛って……純愛とハーレムはどう考えても共存不可能に思えるんだが?」
「ふ、そう考えるのがお前の限界だ。凡人郷間武よ!」
「いやまあ、凡人ってのは認めるけど……一々腹立つ言い方すんなよ」
どうやら自分が凡人である自覚だけはある様だ。
それすらも分からない愚か者じゃなくて、友として俺は心から安心したぞ。
「まず、俺の作品は転生がテーマだ」
そう、転生者である。
そしてこの転生というものすっっっごく都合のいい展開こそ、純愛とハーレムを両立させる最強のキーワードとなるのだ。
まあ賢い奴なら、きっとこの時点で気づく事だろう。
現に――
「転生……そうか、その手があったわけね」
―—玲奈はもう気づいた様だ。
「主人公の住む世界は、異世界から襲来された邪神によって滅ぼされることになる。そして転生だ。だが……その転生先にも邪神は襲来し、更に滅ぼされてしまう。それを何度か続ける訳だが……」
「行く先々で邪神を呼び寄せるとか、まるでメガネをかけた某少年探偵張りの死神っぷりだな」
郷間が茶々を入れて来た。
黙って人の話を聞けない奴である。
「邪神は世界を滅ぼしまわってるんだよ。主人公が引き寄せてる訳じゃねぇ」
後、某少年探偵も別に事件を引き寄せてる訳じゃないだろう。
毎日、狭い範囲で数件殺人事件なんかが起きて、たまたまその多くに遭遇しているだけなのだから。
まあ現実なら絶対ありえないし、もし本当にその状況になったら確かに死神扱いされもするだろうが……
ま、そんな事はどうでもいい。
「で、だ。主人公は転生しまくる訳だが……ただ、基本的に転生先で前世の記憶を思い出す事はない。なので、全部真っ白に近い状態でそれぞれの人生を送る訳だ」
「なにも思い出せないんじゃ、転生の意味が――」
分かり切った郷間の質問を俺は掌を奴に向ける事で遮る。
言うまでもなく、最後まで前世を思い出さないまま進める訳などない。
それこそ、本当に転生させる意味がなくってしまうからな。
「前世の力や技術なんかは、最終的に全部引き継ぐ事になってるから安心しろ」
「ああ、そうなのか」
「基本的に思い出せないが、実際は引き継いでて……で、前世の事を引っ張り出すにはトリガーを引かないと駄目。そんな状況だと思ってくれ」
ものトリガーは……もちろん愛だ。
当然だよな?
愛は全てを越える。
そこに理由も理屈も不要だ。
……しかしあれだな。
玲奈の時は黙って聞いてたくせに、俺の時だけやけに話の腰を折ってきやがる。
郷間の野郎。
続きを聞きゃ直ぐに分かる事を、一々途中で聞いてきやがって。
獅子身中の虫とはまさにこの事か。
「話を続けるぞ。まず……主人公は最初の世界で女性と恋に落ちる訳だが、そこに邪神が襲来する」
邪神の目的は世界を亡ぼす事だ。
滅ぼす理由?
そんなん、何となく滅ぼしたかったとかでいいだろ。
ギャルゲーなんだし。
ま、それは流石に冗談だが……
理由はまだ考えていない。
キーポイントではないしな。
ま、その辺りは俺のプランを通した後おいおい考えればいいさ。
「邪神の襲来によって、世界の興亡かけた戦いが始まる訳だ。で、主人公はそのヒロインと一緒に邪神に挑むも……力及ばず返り討ちにあう事に。そしてその際、生まれ変わったら今度こそ一緒になろうと。そう相手の女性と約束して息絶える訳だ」
悲運に終わったカップルが、来世の再会を約束する。
お約束展開の一つだな。
約束だけしてバッドエンドの場合もあれば――主人公じゃないカップルに多いイメージ。
本当に転生して、再会するハッピーもある訳だが。
俺の構想では――
「そして主人公は転生する。が、転生するのは主人公だけ。女性の方は転生先には居ない」
そう、転生するのは主人公だけ。
ヒロインはいない。
「なので、主人公は転生先で別の女性と恋に落ちる」
「おいおい、前世の約束は守らねーのかよ」
「いくら前世の約束があるとはいえ、記憶もなければ相手もいない状態なんだぞ。致し方なしだ。その状態で前世の相手にみさおを立てろとか、無理ゲーってもんよ」
覚えてないんだから操も糞もねぇ。
まさに不可抗力。
致し方なしである。
「そしてその世界にも邪神が襲来し……あ、これは最初の世界を滅ぼした奴な。共通の敵で、ラスボスだと思って貰えばいい」
ゲームクリアは、邪神を倒して平和な世界でハッピーエンドって形を想定してるからな。
「そこでも邪神に敗れる事になる。で、二人は死ぬ前に来世で幸せになろうって約束する訳だ」
「普通に二股じゃねぇか?」
「前世の事を思い出せないんだから致し方なしだ」
「致し方なしってお前……」
「いいか。仮に郷間に前世があって、来世を誓い合った女性がいるとしよう」
「え?俺にそんな相手いるのか?」
「仮の話だ。お前が前世でそんなドラマチックな死に方してる訳ねぇだろ」
少し考えたら分かる事だ。
というか、仮に輪廻転生があったとしても、殆どの人間がそんなロマンチックな最後ではないはず。
「勇者だから、その辺りも分かるのかと思ったじゃねぇか」
「分かるわけあるか」
勇者は霊能力じゃねぇんだよ。
「で、だ。お前には前世に約束している相手がいたとして。でも、その相手は転生していない。この状態で誰かと恋をしたら二股だってんなら、お前は一生独身を貫くのか?」
「それはちょっと……いやかな」
「そういう事だ。だから致し方なしって言ったんだよ。そもそも、記憶ねーんだからそこを責めるのは酷だろうに」
魂が覚えている?
いやいや相手いないんだから、そこは魂さんも気を効かしてくれるさ。
「じゃ、話を戻すぞ。そこで死んだ主人公はまた転生する。そこでも女性は転生しておらず、別の相手と恋に落ちる事に。だが邪神が襲来。世界は滅ぼされ、主人公と女性は来世を誓って死んでいく。って言うのを、何回も繰り返す訳だ。主人公は」
そうして積みあがって行く、来世の約束という名の因果。
そしてその因果は、世界の終着点にて同時に果たされる事となる。
「で、邪神によって全ての世界が破壊され、最後に残った世界に主人公は転生する訳だが……まあここまで言えば分かるよな?その場所に、それまで来世を約束した全ての恋人達が全員転生して来る訳だ」
一堂に会する運命のヒロイン達。
しかももう世界はそこしか残っておらず、約束を次回に回すなんてのも現実的じゃない。
そんな状況で、その中から一人だけを選べるか?
否!
否だ!
そんな真似ができる訳がない!
だからハーレムしかないのだ!
純愛ゆえに!
Q・E・D!
証明終了!
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