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7/24

>>5 お茶会の準備を頑張っています

開いていただけて感謝です。

 第一回ドッジボール大会がオースティン家の中庭で開催されたあと、ドッジボールはあっという間に私たちが住むハイベリカム王国全土に広まった。

農民や平民が多く住む下町の空き地や舗装されてない道路などでは、ボール片手に投げつけあう子供たちの光景がよく見られて、ドッジボールをやってる本人たちもそれを見つめる大人たちにも、明るい表情が増えたらしい。

私のおつかいで下町に出ていたソフィアが嬉しそうに話してくれるのを、私は相槌を打ちながらほのぼのとした気持ちで聞いていた。ソフィアは平民の出だから、地元に活気が増えてとても嬉しそうだ。子供たちが元気そうでよかったです、と笑ったソフィアはとても優しい顔で笑っていた。

そのソフィアの顔を見て、ドッジボール愛好家としてもこの国の公爵の娘としても、誇らしく思った。


 ちなみに、ドッジボールでの私と父様と兄様の腫れた頬は三日ぐらいで無事に治りました。さすがに公爵令嬢としては頬に傷が残るのは避けたかったので、(しかもそれがドッジボールでなんてお笑い種だ)大いに胸をなで下ろした。

それに一番の目的だった兄様との関係回復は問題なく進み、今では普通の兄妹として問題ないくらい仲良しだ。暇な時に二人で屋敷の中をお散歩したり、お気に入りの木の下で日向ぼっこしたりお茶会をしたり。

……こうしてふりかえると、ちょっと仲良くなりすぎたかなぁと思ったり。でも、仲良いに越したことはないもんね。


 そんなふうに全ての事が順調に運び、私エリザベス・オースティンは六歳にして、兄様と共同でお茶会を主催する運びになりました!

この世界において、六歳と八歳の子供が茶会を開くなんて特例中の特例。この茶会が、ドッジボールをみんなで楽しもう!みたいな茶会なわけで、伝えた本人の私たちに王家から依頼された茶会であるからこそ実現したものだ。

 噂によると王家の純粋な血を引く第一王子がいたくドッジボールを気に入ったらしく。是非とも皆で楽しもうと王宮で茶会を開こうとしたらしいのだが、広めた私たちを差し置いて勝手に茶会はまずいだろうということで。わかりやすく私たちに茶会を開けと依頼が来たのだ。

それに私は喜んで飛びつき、兄様も笑って快諾。なにかと私たちに甘い父様も渋ったもののゴーサインをだし、半月後とお茶会の日を定めてにして準備を進めていた。


 招待状を送るのは、ハイベリカム王国各地の土地を治める貴族たち。一番遠いところからは約五日かけて来てもらうことになる。主に十五歳以下の子供がいる屋敷に送るつもりだ。私の理想は身分関係なく平民や農民の子供も招待したいのだが、やはり差別的な考えが根ずいたこの国でそれは、身分の低い人たちにとってまずいんじゃないかと兄様に言われ、渋々断念。だけど、使用人とか身近な人に十五歳以下の人がいたら連れてきて貰えるようにお願いするつもりである。

だって人がいっぱいいた方が楽しいし、ドッジボールのおかげで身分差別が柔らかくなりましたって嬉しいよねって思うから。


 庭師の人たちには依頼が来て直ぐにそれを伝えると、頬を紅潮させて「期待に添えるように頑張ります!」と言って早速花壇の手入れを始めてくれる。強面の彼らが花を優しげに手入れする姿は少し可笑しくて笑ってしまったけど、同時に、幸せだなぁと思った。

庭にある木をハート型にしてって言ったら流石に兄様にとめられたけど。うん、そうだよね、公爵家の中庭に特大ハートは嫌だよね。すいませんでした。


今回のお茶会のメインはドッジボールを楽しむことなので、中庭で行うことになった。以前大会をした時にも思ったけど、さすがは公爵家。中庭といえどとてつもなく広い。中学校の体育館二つ分ぐらいかな、と頭の隅で思った。

太いロープのようなものでコートを二つ分作る。庭師たちにそれをお願いしたら、最初めちゃめちゃに大きいコートを作られたので顔を青くして止めた。そんな大きさにしたら誰も当てられない。ボールに当たるのは地面だけなんて悪夢になるかもしれない。

結局、中心に固めてコートを作ることで話は落ち着き、四隅にある屋根や植物の蔦で日陰になった部分にテーブルを設置し軽食をつまめるようにすることにした。


 廊下を通ると中庭に繋がるドアがある大広間には、子供たちの付き添いとして来ることが予想される多くの大人たち用のおもてなしを考えた。中庭に置く予定の軽食は片手でつまめたり、甘く食べやすいものであるのに対して、大広間に置くのは甘みを抑えた見た目に凝ったもの。それに催し物も考えているが、兄様に一任してあるので、私は当日まで知らない。


 私が任されたのは中庭と大広間の軽食の中でもお菓子と、中庭のセッティング。残り一週間と少しの今日、ソフィアと3人ほどのお茶会に参加資格のある男女を集めて、軽食と並んで出すお菓子を決めるつもりだ。客間で、王都にある有名なお菓子屋さんが持ってきてくれたお菓子を試食して、職人と相談。ここから店までの距離や作れる数、子供たちの反応なんかを考えて十数種類ほど決めるつもりだった。


 「わぁ、このクッキーのお菓子かわいい!」


大きな丸テーブルに並べられた、数多くのお菓子たち。それに皆顔を輝かせ、頭を寄せ合う。

その中の、前世でいうアイシングが使われたクッキーを見て私が声を上げると使用人の一人である、十三歳のネルも同意する。


「そうですね。このクッキーに描かれた模様がとても可愛らしい。中庭でも大広間でも、お客様にお出し出来そうです。……けどお嬢様、この模様を描くには時間がかかりそうです」


キリッとカッコイイ容姿をしたネルを見ていると、さすが乙女ゲームの世界、と手を叩きたくなる。攻略キャラではないのに、兄様と同じくらいかっこいい。

眉根を寄せて困ったような顔をするネルに豊富な白ひげを蓄えた、部屋に並んだ菓子職人の一人が答える。


「お褒めいただけて光栄です。

確かにそのデコレーションは私と数人の職人でしているものですが日持ちがきくし、味も風味も劣らないので数が必要なら作ることもできます」


それに私は頷いて、思わず笑みを浮かべた。


「それじゃあ、お茶会には四十人ほどの人が来てくださるそうなので__」


幾つにしようか迷った私が意見を求めるようにソフィアを見る。するとソフィアは、八十個ほどがいいでしょう、と言った。


「うん。じゃあこのクッキーを八十個、お願いします」


王家のお茶会にお菓子をだすということは、王家御用達の呼び込み文句が使えるようになるということ。その称号が店に呼び込む利益は、元々がどんな人気店でも三倍になると言われている。つまり、あまり有名でなかった店がその称号を手にすれば、十倍や十五倍も夢じゃない。

このクッキーを作った職人は嬉しそうに頷くと、御意、と言って一礼した。


「お嬢様お嬢様、こちらの小さなケーキも可愛らしくて美味しいです!」

「お嬢様お嬢様、このマカロンも小さくていろんな種類があります!」


以前父様の頬にボールをヒットさせた時、湿布を取りに行ってくれた双子のメイド、十一歳のアズとレズ。そっくりな見た目にくりくりとした可愛らしい見た目は、私のような悪役顔よりもヒロインに近い。

それに中身も優しくて思いやりがあるとってもいい子。いずれこの世界の他の女のようにはさせない!

ここ数日で急に仲良くなった彼女たちに、密かに私はそんな決意を抱いた。


「アズ、レズ。一つずつ言わないと、お嬢様が困ってしまいます」


 そんな2人を窘めるのは、十五歳のケント。アズ、レズのお兄ちゃんみたいな存在の男の子。……六歳の幼女に男の子って言われるのいやかな?


「「あ、すみませんでした、お嬢様」」


ケントに言われて、はっとしたような顔をした2人は、さすが双子!とこちらが手を叩きたくなるような息ぴったりで謝ってくれる。ぺこりと下げた頭の位置も全く同じで、思わずうわぁ、と感嘆の声が漏れた。

それに2人が首をかしげたが、さっきの感動に浸ったままの私は、特に何か考える訳でもなく、「2人のすきにしていいよ」と言ってしまった。


それに目を輝かせた2人にチラリと不安を覚えたが、その顔がまた可愛くて、そんな不安直ぐに忘れてしまった。

ネルとソフィアの不安げな顔が私を見つめ、ケントのため息が私の耳を弄んだ。



ごたごたとしたままお菓子決めは進み……__。

遂にお茶会本番を迎えることになる。



お疲れ様でした。

今回お兄様の出番なし……


多くの方々に見てもらえて、とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。

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