捻くれた優しさ
柚月は基本病院です。
生活費と入院費は現在、兄の夏樹が出してます。そして緋月のお小遣いも……
――数年後、
僕は中学を卒業して、通信制の学校に進学した。
その頃にはもう外に出ることも苦痛で、
僕はほとんど家から外に出ることは無かった。
柚月の見舞いにも最近は行っていない。
夢を叶えてアメリカから帰国した兄さんは、
僕が引き篭もり、柚月の見舞いに行っていないと知ると
柚月の見舞いに行くまで家に入れない。という恐ろしい強硬手段に出た。
……考えても見てほしい。
時折、野良猫に餌をやりに近場の公園に足を運ぶだけですら気力を使い果たすような引き籠りに、歩いて30分くらいかかる病院まで行けなどと正気の沙汰ではない。
抵抗はしたが、16の引き籠りとバリバリ働く成人男性。
どちらが勝つかなど目に見えていた。
問答無用で家の外に叩き出された僕は渋々病院へ向かった。
運動不足の引き籠りには30分も歩くのはしんどかったが、
交通機関を使うのはできなかった。
……兄さんめ、外に出すなら駄賃を渡しておけ。おかげで交通機関は一切使えない。
……持たされていても使えないが。
――そんなこんなで、病院に着く頃には疲労感とストレスで機嫌も気力も最低だった。
「ひーちゃん久しぶり!どうしたの?疲れてるみたいだけど大丈夫?」
久しぶりに見舞いにやってきた僕に、柚月は目を瞬かせる。
「ボケた兄さんが家から叩き出したんだよ。
おかげで家からここまで徒歩とか……やってらんない。
お前にはこれが大丈夫に見えるの?」
睨みつけて「お前はバカなの?」と言う緋月に
柚月は特に気にした風もなく「大変だね」と返す。
緋月が捻くれていることなんて今に始まったことではない。
それに、緋月は別に柚月を嫌っているわけでも傷つけたいわけでもない。
寧ろ体の弱い妹の柚月を心配している。素直に出さないだけで。
「……これ、やる。」
「ありがとう!!可愛いな。この子、茶色い子かわいい」
緋月がぶっきらぼうに渡したのは猫の写真。
柚月は動物が好きで、緋月はそれを知っている。
捻くれた緋月の不器用な優しさに柚月は嬉しそうに笑った。
捻くれていて不器用だけど、兄妹思いの緋月。夏樹も柚月もそれに気づいてます。
緋月の不器用な優しさに。
公園で猫を可愛がっては時折、写真をとってます。それを柚月へあげるんです。主に夏樹を通じて。自分で渡せばいいのに、と思った夏樹の強行です。
捻くれって何だ。捻くれ書けない。難しい……今更感半端ないけれども。