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この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています。

間の悪い婚約破棄

間の悪い婚約破棄

作者:九曜 蓮
 たくさんある婚約破棄ものを読んでいるうちに、私も挑戦してみたくなりまして。
笑っていただければ幸いです。

【追記】かつてない評価に気が動転しつつ、ちょっと分かりにくかった部分を加筆修正しました。
 何といいましょうか、もとより王族に在るまじく察しの悪いオツムをなさっ…もとい、所謂空気を読むということが若干苦手な方だと言うのは存じておりましたが。

「メアリー=スーディフォルト公爵令嬢! 今この時をもって傲慢な貴様との婚約を破棄し、この心清らかなフローラル=ブレーイン男爵令嬢を我が后とする!」

 “エーアヘッド王子は致命的に空気読めない”

 よく囁かれていたそれが比喩でなくなる前に、不本意ながら一応婚約者だった者として何か出来る事があったのではないか?と切なくも思いましたが……
王と王妃初め主だった重臣の皆様勢揃いの会議の間に乱入して唯でさえ重かった空気を戯言で凍りつかせた挙句、「ああん、エーアヘッド様ぁvフローラル嬉しいですぅv」なんてクネクネしてる女性を抱き寄せてドヤ顔してるのを見てしまっては……「うん、無理☆」意外の言葉が浮かばないのも詮なきことかと存じます。



 さて、もはや私に出来る事はありませんので……僭越ながら状況を説明させていただきますわね。
 改めまして、スーディフォルト公爵家長女、メアリーと申します。
このフェアリーテイロ王国の第二王子エーアヘッド様の婚約者でありました。
普通に政略結婚を前提とした婚約でございます。
 自分で言うのも何ですが、容姿も才能も公爵家長女としてそこそこ恥ずかしくはない程度ではありますものの、絶世の美少女であるとか、内政に非凡な才を発揮するというような事はございません。
前世の“日本”という異世界で過ごした記憶が少しばかりございますが、それも私が知っているだけでも三人ほどおりますし、さして珍しい事でもないかと存じます。

そんな私をエーアヘッド様はお気に召さなかったご様子で……運命の恋をして心から愛する女性と結ばれたい、私は哀れな籠の鳥だ! などと初顔合わせのお茶会で宣って、王妃様のコメカミに青筋を作っておいででした。


 そんな夢見がちなエーアヘッド様は、王立学園において運命の恋をなさいました。
 お相手はこの場に共に居るフローラル=ブレーイン男爵令嬢。
ゆるくウェーブを描くふわふわとしたピンクブロンドと柔らかいスカイブルーの瞳の、たいそう美しい令嬢です────黙ってじっとしていらっしゃれば。

学園の皆様曰く“ゆるふわ残念美人”。

 やや垂れ目の大きな瞳はこぼれるようで、薔薇の花びらを浮かべたような唇は瑞々しく、それこそお人形か妖精かと見まごうばかりなのですが……言動が、その、淑女としてどうかと言いましょうか、それ以前の問題と言いましょうか……
 妾腹で、本家に迎えられてまだ数年との事なので、貴族としてのマナーですとか仕来りに疎いのは仕方のない事と言えなくも無いかも知れません。
ですが、女子寮の警備を担当してくださっている元冒険者である女性護衛官の方までも「流石にあれはないわー」と首を振ってらっしゃいました。
 学園でも極一部を除いては、さりげなく距離を取り、そっとしておこうというのが大勢の見解だそうです。

 フローラル様は大層素直な方で、私を廃してエーアヘッド様の婚約者となり、逆ハーレムを作って贅沢三昧したいという大望を包み隠す事はなさいません。
 先日などは私が嫉妬、もしくは身分をかさにフローラル様を虐めたり危害を加えたりしたという風聞を流して失脚を狙ってらっしゃいました。
ですがその計画があまりにゆるふわだったために、極々一部の方を除いて完全にスルーされてしまい、皆様の集まるサロンで地団駄を踏んでらっしゃったのは記憶にも新しい事でございます。

 そんなフローラル様ですが、エーアヘッド様とはとてもお似合いでいらっしゃいます。
ですので、私としては是非とも北の離宮あたりをお二人だけの愛の巣として生涯寄り添って表に出てこないでくれないかなぁ~と思う次第です。
 出来る事なら早々に婚約を破棄させて頂きたかったのですが、政治的事情や利権関係の都合でそれも叶わず……けれど、最近では流石に王陛下初め高位貴族の方々も見切りを付け始……もとい、若い二人の愛を遂げさせて差し上げるべきではないかという方向に傾きつつあり、大変喜ばしく思っておりました。

 ですので、婚約解消のお申し出であれば何時でも喜んでお受けしましたのに…ええ、本当によりによって何故このタイミングなのか。


 大変間の悪いことに、本日この会議の間ではある重要な会議が開かれていたのです。
それは王陛下のタマを左からもぐか右からもぐかという────え?訳がわからない?

 まあ、私としたことが……確かにそれでだけでは何がなんだか解りませんわね。
失礼をいたしました。

 事の始まりは現王陛下が王太子であられた時代の事でございます。
容姿端麗、文武の才にも恵まれ、気性も優しくあられた陛下は当時から賢王間違いなしと将来を嘱望されておいででした。
お年頃になれば、その隣に立つのはどのような姫君かと国民の間でも噂になるほどであったそうです。
 そして、陛下がお選びになったのは三大公爵家のひとつ、テンプル公爵家次女であられた現王妃陛下エリザヴェータ様でございました。
美貌は元より祖父に先々王陛下を持ち、聡明で才女と名高く、王妃としてこれ以上相応しい姫君はいないと周囲も両手を挙げて歓迎したと聞いております。

 ですが、問題がひとつ。

 当時エリザヴェータ様は神殿に入られ、王国初の女教皇を目指していらっしゃったのです。
それというのも幼き頃から神童と誉れ高く、特に詩歌と学問を司る主神ミティーザーネに深く傾倒しておられ、ご本人の強い希望と、王家と神殿の互いの繋がりを強化したいという思惑が上手く一致した結果でございます。
 そのような次第ですので、王太子であられた陛下の求愛も初めは素気なく断られたそうです。
 ですが諦めず何度も神殿に足を運んでは真摯に愛を請うその情熱に絆され、一つの条件のもと目出度くお輿入れされたのです。

 その一つの条件というのは、「決して節度無い不必要な女性関係をもつべからず」というもの。

 確実なお世継ぎの確保や政治等諸々の事情から、我が国では王妃以外に妾妃を持つことは珍しくありません。むしろ義務とも言えます。
 しかし、両陛下の祖父にあたるチャラーオ三世陛下は政治的バランスも生家の家格もお相手の資質も何もかも無視して公爵家の姫君から果ては町娘まで際限なく手を付けた挙句妾妃の甘言に惑わされ、当時の王妃様はもとより国ごと巻き込んで大変な騒動を起こされました。
 幼い頃目にしたそれに強い嫌悪感を抱いていらしたエリザヴェータ様は、ご自身以外に妾妃を迎えるのは仕方のない事だとしても、あくまでも節度と誠意と理性を忘れぬ事を誓われるよう望まれたのです。
エリザヴェータ様を深く愛しておられ、ご自身も祖父君の起こされた騒動で大変苦労なさった父君を見て育たれた陛下はむしろ喜んで主神ミティーザーネとエリザヴェータ様に誓いを捧げられました。

その誓い通り、現妾妃であられるレスボス伯爵家出身のサフォーネ様は妾妃として非の付け所のないお方です。
楚々とした美女ですが、常に両陛下を立てつつも社交において王妃陛下をよく支え、お産みあそばした第三王子殿下へも、王家と王太子殿下の助けになるようにと言い含め厳しくも愛情深く育てておられます。

 妾妃に迎えられる事が正式に決まった夜、王宮の庭園の隅で

「っしゃあ!これで麗しのエリザヴェータ様と間接×××……ぐふっふふはははは!」

 などとガッツポーズなさっていたというのは幻覚ですので全く問題ありません。


 しかし、そんな平穏な両陛下の日々を揺るがす事態が起こってしまったのです。
何と、陛下がこっそり侍女の一人と関係を持っていた事が発覚いたしました。
 調査してみれば実は隣国からの密偵、所謂ハニートラップだったのですが…王妃陛下のお怒りの前にはただの浮気もハニトラも変わりはありません。
 緊急会議の招集を受けて来てみれば、常と変わらぬ優雅な口調と笑顔のまま、右手にクラシカルなペンチを、左手にフルボッコされた王陛下を引きずった王妃陛下に先ほどの議題を問われた重臣の皆様一同の心境を思うと……本当にご愁傷様でございます。
何故か私も呼ばれていたのですが。

 拘束された件の密偵も、まさかこのような事態になるとは想定外だったようで

「上司に命令されただけなんです! 陛下も最初は全然乗り気じゃなくて、あの、私これでも特殊訓練受けてますし、一応魅了の魔眼っぽいと言えなくも無いかな~っていう物も持ってますし! だから、その、不可抗力っていうか、王妃様への王様の愛情は変わらないっていうか……あの、も、もももいじゃうのだけは勘弁してあげてくださいいぃ!」

 と涙ながらに懇願なさっています。

 重臣の皆様も真っ青な顔で震えながらも

「初犯でありますし、本人に深く反省の色も見られます。ここは何卒執行猶予を…」

 となんとか修羅場どころかR-18Gな事態だけは回避をと言を尽くしてらっしゃいました。


 そこへ、エーアヘッド様(アホ女と浮気した脳足りん)とフローラル様(あちこちユルふわな泥棒猫)が乱入したのでございます。
 ────ちなみに、フローラル様がらみのアレコレは王妃様のお耳には入れられておりませんでした。
一発で逆鱗クリティカルヒット確実でしたので、未熟な若者の過ちを穏便に収めようとした周囲の温情だったのですが……


「ほほほ、今何と言ったのかしら? この母にもう一度言ってご覧なさい?」

 あくまで優雅な微笑をうかべられたまま、顔面アイアンクローでお二人を吊り上げる王妃陛下。
宙ぶらりんにされたお体が痙攣してらっしゃいますが…とりあえず、その御手を外さなければ話す事は不可能だと愚考いたします。

「婚約者のいる身で堂々と浮気した挙句、破棄? 婚・約・破・棄といいましたか?」

 メキメキと音を立ててお二人のオツムに王妃陛下の嫋やかな指先が埋まっ…いえ、気ノセイデス。

「最低限浮気した方が詫び入れて土下座で婚約解消をお願いするのが筋でしょうがっ! このボンクラ息子!!」

 ……重臣の皆様、何故私にアイコンタクトを送ってこられるのですか?
王妃様をお止めするなら陛下に……え?さっきからピクリとも動かない?

「大体何が真実の愛だ? 君は強いから大丈夫だけど精細な彼女は僕が支えてあげないとだ? テメエとあの女の股がだらしないだけの話だろうが! 結婚式の三日前に寝言垂れやがって、しかも今九ヶ月って何時から浮気してやがったんだナメてんのかこの野郎!」

 だから無理ですって!
結婚式キャンセルになったって聞いて、「浮気は男の甲斐性っていうじゃねえか。」なんて慰めてんだか貶めてんだか判らないKY発言したマル暴課の井上課長を三秒で沈めた通称「交通課のカーリー」先輩ですよ? 私が出来ることなんてありませんから!
 あと先輩、それは王子じゃなくて前世のダメ男のした事です。

「このボケ共キッチリ教育し直してやるわ! 佐々木、アタシの木刀持って来な!」

 この世界にはありません。
あと私今はメアリーですから!
 蛇足ですが、交通課のカーリー先輩は思春期にヤンチャしてたところ、お世話になった警察官が良い方だったおかげで更正した口だったりします。わりと昔気質な面倒見の良い方です。
 佐々木さんはお父さんがお巡りさんだったので自分もという、大人しめの地味子さんでした。

【2016.04.26 一部加筆修正】
分かりにくくてすみません。先輩の婚約者は井上課長とは別の人です。
手直ししましたが……これで大丈夫かな。

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