夏祭りの胸騒ぎ(3)
SFカテゴリーで『光と陰-織りなす夢に形』に、双子の美人をヒロインにして毎日投稿しています。
純文学のエッセイでも思ったことを随時投稿していますが、短編集も書いてみることにしました。
反応が強かった短編を長編にしていこうかなと思っています。これもまた宜しくお願い致します!
僕らはB2からワンフロアずつ6階まで見て回った。
この界隈でのメジャーブランドの説明もしながら、
GALマーケットの中でのターゲットの違いも説明してみたのだが、
わかってもらったのだろうか?
「一ノ瀬さん、どお、わかったかな?」
「はい、なんとなくわかりました。実は私、109に入るのが初めてだったのですが、
とても楽しかったです。有難うございます!」と怖いものでも見るような表情で、
興奮している彼女がそこにいた。そして繋いでいる手が少し汗ばんでいるのを感じた。
「明日、社長にもちゃんと説明できるかな?」
「もちろんです!ご心配なさらないで大丈夫ですよ」
そして、お役目御免ということで、1階入り口ゲートに戻り手を離した。
「じゃ、これでいいかな?僕も久々にデートみたいで楽しかったよ。
明日の社長レポートよろしくね!」と言って帰ろうとして歩き出した時だった。
「あっ石塚さん、待ってください! 社長へレポートの反応とか知りたいですよね?」
「えっ まあね。」
「じゃ、その報告会と今日のお礼を兼ねて、来週の金曜の同じ時間空けておいて欲しいのですが。」
「来週の同じ時間?・・・別に大丈夫だよ。」
「では、私が場所を探しておきますので、来週また連絡しますね!」
「わかった。じゃーよろしくお願いしますね。」
「私も楽しみにしています。今日は本当に有難うございました。」
そして、僕は渋谷駅から地下鉄で帰路に着いた。
帰宅ラッシュで激混みの車内で吊り革にぶら下りながら疲労でボーとしていると、
一ノ瀬さんの顔と容姿が自然に浮かんできたのだった。
「しかし、今日の出来事はなんだったんだろうか?」
「でも、やっぱり、彼女は正統派日本人美人に入るんだろうな!?社内で人気があるわけだ。
なんか思わせぶりな態度とか表情がね・・・」と感じたのは驚きだった。
何故なら僕は、外人の女性にしか興味が湧かず、実際付き合っている彼女もイギリス人だったのだ。
遠距離恋愛がかれこれ8年ぐらい続いているだろうか・・・
遠距離ではあるが、彼女を本当に愛しているため日本国内で他の女性とは悪さをしない
潔癖を保っていたのだ。
少年時代はさておき、そういった性癖のため、日本人女性には全くと言っていいほど
興味がなかったのだった。
もちろん自社内の女性3人スタッフも他から見れば可愛い子ばかりである。
いわばうちの3人とも企画デザイナー職のため、商社やアパレルメーカーさんの
営業担当と商談をするのである。そう言ったお取引先に対しては超人気であり
彼女達と商談という立場でお話をしたい男性がほとんどであった。
そのため、ポッと出のしがない会社であるが、彼女達の人気のお陰で
特別枠での商談や生産を進めていけるのだ。
一番お姉さんのユキは、ライバルの大手アパレルからの転職で、
デザイナーアシスタントとして3年の経験があった。
色白でどちらかと言えばお姉さん系GALとOLの中間的な見た目である。
真ん中のジュンはもろGALの109系ブランド出身で販売を経て
小物やアクセサリーのバイイングを担当していたらしい。
男っぽい性格でサッパリしておりGAL友達も多く必ず厚底ブーツを履いている。
最年少のリサは、萌系というか細身の可愛い系で、人が足りなくてんてこ舞いの
僕を助けるべくアシスタントとして入社した。もちろん僕が面接しなんとなくピンと来た
ため採用してみたのだったが将来はデザイナー希望だとか。
そう、おわかりだろうが、3人とも系統が違うのだ。
キレイ系、セクシー系、カワイイ系と分布しているため
オジサンたちはもれなくどれかに引っ掛かるのだった。
彼女達とオジサン達との商談をハタから見ていると
面白いぐらいにオジサン達は嬉しそうなのがわかる。
いわば真面目な正統派キャバクラみたいだ。
言い換えてみると、ウチの会社の素晴らしい武器なのだ。
一番経験があるユキには、難易度が高くブランドの顔を作る
布帛商品を担当しもらっている。
ジュンにはGAL要素が求められるアクセサリー全般のバイイングと企画
おまけにショップの内装及びVMDの担当でもあるのだ。
そして、リサには、僕が担当するメインとなるシーズンコンセプト商品群の
アシスタントデザイナー的な役割とその他諸々もお願いしている。
「いやー、昨日は109で社長秘書に説明しなくちゃならなくて大変だったよー。あれから
残った仕事は終わったかな?」
「はい、終わりました。でも、メーカーさん的には2月の立ち上げに納品するのは
もしかしたら難しいかもしれないと言ってました。どうしましょう?」とリサが答えた。
「まあ、間に合ったに越したほうがいいけど、Tシャツだから、少し遅れても問題にはならないから
ベストを尽くしてもらえればいいよ。逆にニットは大丈かな?」
「はい、ニットは1月末納期で大丈夫です。」
「その社長秘書って・・・去年入社の超人気っていう人ですか?」
「ああ、そうみたいだよ。」
109系のGAL(女性)ブランドを立ち上げるのであるが、実は男性である僕が
全商材の7割をデザインしそれをマーチャンダイジングしているのである。
業務のフローとしては、僕が生地を選んだり作ったりして、まず素材を選び、
走り描きで商品デザインとなるスケッチを描いて3人の中の各担当に渡す。
それを彼女達は自分たちのセンスも入れながらメーカーさん達と商談をして
商品化していくという流れなのだ。
僕がこんなことができる要因としては、神様からのギフトにあたると思うのだが、
まず、半年から1年先の売れるファショントレンドが自然とわかるという特技と
生まれ育った環境のお陰で生地をみるとデザインが浮かぶという特性があったのだ。
この2つの能力は極めて高く、また店頭に並ぶ商材を組んでいくマーチャンダイジング
においても、あたかもチェスをやるかの如く戦略的に進めていけるのであった。
そうした3つの特性のお陰で、今まで担当していたインターナショナルブランドを短期間で
0から50億ブランドへと短期間で育てることができたのだった。
まあ、というのが目下の僕の仕事である。
意外に読んでいただいているようなので、この短編をまだ続けていこうかと思っています。”いいな”と思った方は是非 サイトに登録して頂き『いいね』、『ブックマーク』『評価』もお願いしますね!お待ちしていまーす!!