20 亀裂
夜の静けさが工場の廃墟に広がっている
新しい拠点として決めたこの場所は寒々しく
安心感など到底得られるものではなかった
ジアは壁にもたれかかりながら、眉間に深いしわを寄せ、仲間たちの声を聞き流していた
「どうして場所がバレたんだ……」
頭を巡るのはその疑問ばかりだった
誰かが情報を漏らさなければ、あの襲撃はあり得なかった
それは明らかだが、それを考えるたびに胸の奥が締め付けられる
仲間たちは家族同然――その誰かが裏切った可能性を認めるのが耐え難かった
「ジア」
シノの声が近づく
彼は薄茶色の髪を揺らしながら、ジアの隣に腰を下ろした
「お前、ずっと考え込んでるな。裏切り者のことか?」
ジアは答えない
ただ視線を暗い床に落とし、唇を一文字に結ぶ
「まあ、それは当然だ。誰だって疑心暗鬼になる。だが……」
シノはわざと少し間を置き、低い声で続けた
「あんまり深く悩みすぎると、全体が崩れるぞ」
廃工場の一角、仲間たちは焚き火を囲み低い声で囁き合っていた
その声の一部はあきらかに攻撃的だった
「あの人間、怪しいと思わないか?」
「あいつが連れてこられてから、アジトが襲撃された。タイミングが良すぎる」
その言葉に他の仲間も頷き始める
「確かにな……俺たちの情報を売ったんじゃないか?」
その場をジアが通りかかると、火の明かりが彼の険しい表情を照らした
言葉を交わさずとも、その視線だけで場が凍り付く
「ふざけるな」
彼は短く低い声で言い放った
その声に込められた威圧感は、場の空気を一気に変えた
「あみがそんなことをするわけがない」
しかし、その言葉が逆に一部の仲間たちの苛立ちを煽った
「ジア!どうしてそこまでかばうんだ?俺たち獣人があいつを疑うのは当然じゃないか!」
ジアの拳が思わず硬く握られるが
その瞬間、間に入ったのはシノだった
「おい、やめろ」
彼は冷静な声で言い、仲間たちの視線を一人ひとり受け止める
「感情的になるな。今はお互いを疑う時じゃない」
「だが……。」反論しようとする声を、シノはすぐに遮った
「ジアはリーダーだ。その判断に従え。それに、今は生き延びる方が先だろうが」
その一言で、ぎすぎすしていた空気が徐々に収まっていく
仲間たちは渋々ながらその場を去り、ジアとシノだけが残った
「助かった」
ジアは低い声で呟くと、シノは笑みを浮かべながら肩をすくめた
「まあ、お前が口下手なのは知ってるからな。サポートくらいしてやるさ」
ジアは再び壁にもたれかかり、空を見上げる
胸にはまだ重いものが残っていたが
少なくとも今は嵐が一時的に過ぎ去った感覚だった
「これからどうする?」シノが尋ねると、ジアは答えた
「裏切り者がいるなら、必ず見つける。だが、それよりも先に仲間たちを守る」
その声には決意が込められていた
どれだけ疑いの目が向けられようと、あみを守る
その想いが、彼をさらに強くするのだった――




