92杯目 巨大な朝市
「これは、すごいな!!」
中央市場に続く道を一歩曲がると、目の前に巨大なエリアが広がっていた。
大量の色とりどりのテントで様々な物が飛び交うように商いされている。
中央には巨大な噴水があり、規則正しく並んだ木々の緑と水の輝きが市場全体を輝かせているようだった。
冒険者風の人間も多く、民族衣装に身を包んだ市民もたくさんいる。
活気が物凄い。
いくつか店を覗いてみると、商品が非常に豊富で、見たことがないものもたくさんある。
「ぬぅ……これは、欲しいっ!」
特に香辛料は大量に揃えられていて、一つ一つ香りを確かめながら厳選したものの、小遣いからすれば少し多すぎる買い物をしてしまった。
「さすがは匠皇のお膝元だな」
魔道具も多岐にわたる。
出土品から開発品まで、何に使うんだよっ!ってものから、かゆいところに手が届く品、そして憧れの物まで、冒険者の心を捉えて離さない。
大量のテントが並ぶ外側には、立派な店構えの店舗が並んでいる。
武器防具屋、高級魔道具屋などはこちらになっている。
さらに上質な店は城の近くに集まっているらしいが、今の俺には市場の武具屋を冷やかしているぐらいが丁度いい。細かな消耗品の補充もこなしていくが、土地が変わると品も変わり、今持っているものより良さそうな物を試したり、いくつかケイトに意見具申をするために考えをまとめたりした。
そんな事をしていたらいい時間になっていたので、何店か目をつけていた店で朝食をお願いした。
薄いピタパンに、ラム肉にたっぷりスパイスパウダーをまぶした物と野菜が挟まっている。そこに激辛ソースも入っている。
かぶりつくと、最初はスパイスの風味が来るが、遅れてブワッと辛味が襲いかかってくる。しかし、少し野趣味のある肉と恐ろしいほど合う。気がつけば汗をかきながら平らげてしまった。その熱くなった身体と口の中を押さえてくれるのがミントティーだ。爽やかでスッキリした味わいが口の中で涼やかな風を通してくれる。
食後に色鮮やかなフルーツ盛り合わせを頬張れば、小さな幸せを感じられる。
大満足だ。
公園に寝っ転がって空を見上げる。
砂漠の空は、恐ろしいほどに美しい。
あまりにも澄んだ空のせいで太陽を直接見てはいけない。
空気が透き通っている。
雲もひとつもない。
まさに青空。蒼空だ。
外に出れば、砂漠の黄色と空の青、過酷な環境を忘れてしまうほどに美しい。
「世界は、美しい。もっと、色々と見るぞ。そして、食うぞ」
俺は、改めて自分の目的を確かめた。
有意義な時間を終えて宿へと戻ると3人が揃っていた。
「おはよう」
「おはようございます、ゲンツさん」
「おはようございます! ゲンツさんはどちらに行かれてたのですか?」
「身体をほぐすついでに中央市場に行ってきたよ」
「凄いですねゲンツさん、昨日はあんなに飲んだのに」
「習慣だな。体のメンテナンスをきちんとしないと、老体には堪えるのじゃよ」
「どうやらいい時間だったようだな、ゲンツ」
「ああ、美味かったし、気持ちよかった」
ケイトは優しくほほえみうなづいてくれる。他の二人もだ。
「予定通り今日は必要なものの買い出しをして、明日からの準備をしよう」
それからは4人で行動をした。ケイトにおねだりはなかなか通用しなかったが、なんとか解体用のナイフを新調出来たので満足しよう。
解体用ナイフの真髄は、その完璧なバランスにある。刃と柄の重さが絶妙に調和し、まるで手の延長のように感じられる。これにより、繊細な作業から力強い動きまで、自在に扱うことができる。ナイフは、ただの道具としてだけでなく、伝統と歴史の継承でもある。古くから受け継がれてきた技術と、現代の革新が融合した一品。使い込むことで、自らの手によって歴史の一部となる。単なる狩りや解体のためだけではない。それは冒険者の誇りであり、信念であり、ロマンである。荒野を駆ける男にとって、このナイフは決して裏切らない相棒であり、無限の可能性を秘めたツールなのだ。ナイフの刃が獲物の肉を裂くたびに、冒険者は自分自身の強さとスキルを感じる。ナイフの鋭い切れ味は、まるで冒険者の魂がその刃に宿っているかのようだ。その刃先にこめられた力強さと正確さは、冒険者の精神と技術の結晶だ。さぁ、君もナイフを手に取り、狩猟の旅に、冒険に出かけよう!! と熱弁したら許してくれた。
バリバリ稼いで自由に使える金を増やしてやる。
それからはパーティの共通のアイテムの補充などを進めていく。
ついでにソフィアとのより詳しい能力や使えるスキルなどの相互理解も進めていく。
「とりあえず一度潜ってみようか、魔導書などが必要なのかどうか、それからでいいだろう」
新生蒼空の旅人のダンジョンデビューは、首都そばの50階層の中規模ダンジョンを選んだ。人気も高く情報も多い、ひねった敵も出ないのでうってつけだと判断した。
きちんと体調を整え、まだ日が登る前からあいのり馬車で移動した。
「よし、それじゃあ行くぞ!」
ダンジョンアタックだ!




