喫茶店
先輩は鬼気迫る顔で夢の話をしゃべり続けた。
あまりの内容に近くにいたママグループの中には耳を塞ぐ人がいた。
それでも先輩はその耳栓を通り抜けるぐらい、大きな声で、何か怖いものを威嚇するような震えた大声で、しゃべり続けた。
「俺は、校舎から出る前に! 目が覚めたんだよ!!」
先輩の目はさらにギラギラと光って、口の端から泡が出て、血管が切れそうなぐらい真っ赤な顔になっていた。
近くの席にいたサラリーマンが黙って席を立った。帰ろうと思ったのだろう。
そのサラリーマンが横を通り過ぎる時、先輩はサラリーマンの腕を掴みあげて投げ飛ばした。
ママグループからは悲鳴が上がる。
俺はサラリーマンに駆け寄り、大丈夫かと声を掛けた。
先輩は大声で笑いながら出入口の前に、喫茶店から誰も出さないように、塞ぐように立った。
「それから、毎晩! 俺はその校舎で、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、ずっと! 走ってるんだよ!!」
先輩の奇行をやめさせようと掴みかかった。しかし、俺も結局はサラリーマンと同じように投げ飛ばされてしまった。
「もうすぐあいつに追いついてしまう。そうなるとどうなるか、分かるだろう?」
その後も数人で先輩を店の外に出そうとしたが、けが人が増えるだけだった。
やせ細った先輩の、どこにそんな力があるのか分からなかった。それぐらい、先輩は追い詰められていたんだろう。
「一年前、俺はな、違う人間からこの旧校舎の夢の話を聞かされたんだ」
ふと、先輩が俺の近くの、誰もいない空間を見つめた。
黙って目線で何かを追いかけて、俺を見た。
「あぁ!! 感染した!! やっと!」
俺に向かって指さした。
先輩はゲラゲラと笑った。
「お前が幸せになるはずがない! 俺がもうすぐ死ぬのに! お前だけ幸せになるのは許さない!」
先輩はママグループの一人を指さした。
「お前にも! お前にも感染したぞ!! ざまぁみろ!!!」
先輩は店中に響く大声でゲラゲラと笑い続けて。
そのまま笑いながら喫茶店を出ていった。
ママグループは泣きだすし、俺はサラリーマンとマスターに頭を下げて謝って、多めにお金を払って。
その日は帰ったんだ。




