忘れられない日(下)
会場に着くと既に場内は賑やかだった。
試合開始前に最期の練習している選手や
コーチから熱い指導を受ける選手達。
熱気と騒がしさでいっぱいだった。
私は少し落ち着いた。
この雑音の中なら1人ぼっちの寂しさが紛れる気がした。
大会が開始され試合が始まった。
先輩達や普段無視される友達の試合を
私も部員のみんなと一緒になって応援する。
一生懸命声出しをした。
何が理由かさえ分からないにも関わらず、
罪を償うように。
私がまた受け入れてもらえるように。
こんな私が変われるように。
そんな事を思って行動しても
みんなと話せることは無かった。
12:00をとっくに過ぎた頃、
ようやくお昼休憩の時間となった。
私は自分の席に腰を下ろした。
自分の椅子の列だけ誰も人がいない。
みんなは前列の席に座っていて、
私は視界にさえ入らない。
1人は寂しいと思ったけど、
部活前の会話の輪に入れずに
コートの隅で座り込む時間より、
何か食べている方が気が紛れるからマシだと思った。
私も早くご飯を食べよう。
食べたらトイレにでも篭っていよう。
この空間から少しでも逃げたい。
そう思いながら母から持たされたお弁当箱を開けると、中身は可愛いクマのキャラ弁だった。
私はこの時初めて抑えきれずに涙が溢れた。
表では絶対に泣かない。
そう心に決めて毎日ピンと張りつめていた糸が
一瞬にして切れ、いろんな想いが込み上げて来た。
なんでこんな時に限ってお弁当なんだろう…
せっかく頑張って作ってくれたお弁当。
みんなに自慢したかったな、
今の私にそんなこと出来ないけど。
そんな言葉が浮かんだ。
母が早起きして私の為に作ってくれた、
こんなに凝ったお弁当。
1人で食べなきゃいけないのが苦しかった。
いつも当たり前に作ってくれるお弁当が、
こんなに優しさで溢れてるなんて。
毎日部活で無視をされてる日々の中で、
人の温もりを感じられないこの瞬間の中、
母の想いが詰まったお弁当で涙が止まらなかった。
そして無視をされてる今の自分が惨めで、
こんな自分を親に知られたくないと思った。
わたしはずっと下を向いて前に座っている
みんなに分からないように静かに泣いた。