↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘ラブコメ短編集  作者: 創綴世 優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/4

sweet3.5 うちのエルフメイドは、小さくなってでも甘えたい


 自室で本を読んでいると、扉の向こうから小さなノックの音が聞こえた。


「ご主人様……入ってもよろしいでしょうか……?♡」


「ルシィか? 構わないが」


「! し、失礼いたします……♡」


 俺が返事をすると、扉がゆっくりと開いた。


 俺は本から顔を上げ、エルシアの方へ視線を向ける。


 しかし。なぜなのか、いつまで待ってもエルシアの顔が見えなかった。


「……?」


 声からして、扉を開けたのは間違いなくエルシアのはずだ。

 そのことを訝しみ、周囲を見回す。

 最後に視線を下へ落として――ようやく理由が分かった。


「…………ルシィ?」


「はい♡」


 そこにいたのは、見慣れた桃色の髪をした――しかし、知っているよりも遥かに小さな少女。

 長い耳も翡翠色の瞳もエルシアそのものだが、背丈は俺の腰上ほどしかない。


 メイド服まで身体に合わせて縮んでいるあたり、間違いなく魔法だろう。


「何をしてるんだ、お前」


「あ、あの、えっと……♡」


 エルシアは背中で両手を組み、もじもじと身体を揺らした。

 その顔はやけに赤く染まっており、自由奔放で悪びれない彼女にしては歯切れが悪い。

 そして、何か言いたそうに俺を見上げている。


「ご、ご主人様……」


「ん、なんだ」


「だ、だっこちて……♡」


「…………」


 沈黙。

 言った本人の頬が、一瞬で耳まで真っ赤になった。


「……ルシィ、お前な。魔法で小さくなったところで、精神はそのままだろう」


「てへ……♡ バレてしまいました♡」


「最初から分かっている。それに顔が真っ赤だぞ、恥ずかしいなら初めからやるな」


「うぅ……だって。ご主人様に甘えたくて……♡」


 エルシアは恥ずかしそうに俯きながら、こちらへ両腕を伸ばしてくる。


「……たまにはご主人様に、だっこ、してほしいのです……♡」


「普通の姿でも時々してやるだろう」


「ですが、小さいほうがたくさん可愛がっていただけるかと……♡」


「どういう算段だ」


 本を置き、呆れながら――エルシアの前へしゃがむ。


 両脇へ手を入れて持ち上げると、小さくなった身体は驚くほど軽かった。


「きゃっ……♡」


 そのまま抱き上げると、エルシアは嬉しそうに俺の首へ腕を回す。


「えへへ……♡ ご主人様のお顔がとても近いです♡」


「満足したか?」


「まだです♡」


「今日はまた一段と我儘だな。……それで、何をしてほしい」


「そうですね……では、もっとなでなでしてください♡」


 ため息を吐きながらも、桃色の頭へ手を置く。


 腕の中に収まった桃色の頭をゆっくり撫でると、エルシアは目を細め、俺の肩へ頬を寄せた。


「ん……♡」


「随分ご機嫌だな」


「はい……♡ いまのエルシアは、ご主人様に持ち運んでいただけるサイズ感ですので……♡」


「物みたいに言うな」


 「私の全てはご主人様のものですから、モノみたいに扱ってくださっても構いませんのに♡」などというエルシアの戯言を聞かなかったことにして、ソファへ腰を下ろす。

 そのままエルシアを膝の上へ乗せると、小さな身体は当然のようにこちらへ向き直り、俺の胸へぴったりとくっついてきた。


「……ルシィ。いつでも元には戻れるんだろ?」


「…………はて」


「おい」


「ええと、魔力が足りませんので……♡」


「嘘をつけ。お前の魔力が枯渇するところなど、この十数年で見たこともない」


「……これは失態ですね、もう少しか弱い女の子を演じておくべきでした……あと五分だけ、このままでは駄目ですか?」


 胸元から、エルシアが恐る恐るとこちらを見上げてくる。

 そんな顔をされて、無理に降ろせるほど俺も冷たくはない。


「……五分だけだぞ」


「はいっ♡」


 途端にエルシアの顔が綻ぶ。

 また首へ腕を回し、今度は遠慮なく俺の胸へ頬を擦り寄せてきた。


「ご主人様、大好きです……♡」


「分かったから、大人しくしていろ」


「はい♡ ……あの」


「今度は何だ?」


「五分経ったら、もう五分お願いしてもよろしいでしょうか……?♡」


「駄目だ、それを世間では十分《じゅっぷん》という」


「そんなぁ……♡」


 不満を漏らしつつも、エルシアは俺の腕の中で幸せそうに微笑んでいた。


 結局――エルシアが元の姿へ戻ったのは、それから三十分ほど後のことだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。