第119話:歪んだ特権と古き傷跡
ネオ東京ギャラクシーツリーの最上層・司令室。
巨大なマルチモニターには、世界各地で繰り広げられる惨劇の映像が次々と映し出されていた。
『緊急報道です! 本日未明、都内の大手IT企業社長および金融グループ会長が、自宅にて暗殺されているのが発見されました。現場には過激派組織「レッドエコーズ」の犯行声明が――』
画面に流れる、無残に殺害された富裕層たちの遺体。
現代の日本において、能力者は憲法上、政治に参加する権利――すなわち国政選挙での投票権や、政治家になる権利を完全に剥奪されていた。しかし、それは裏を返せば「政治以外の権力」は保持できたということを意味していた。莫大な財力を築いた実業家、巨大企業の社長、経済界を牛耳る富裕層――彼らの多くは、瞳に密かな光を宿す「能力者」たちだったのだ。
政治から遠ざけられ、陰で経済を支える便宜上の駒として利用され、そして最後は「能力者」であるという理由だけで、レッドエコーズの過激派どもに虫ケラのごとく狩られていく。
「……ふざけた真似を」
モニターを見つめるライラの声は、静かだが地獄の底から響くような冷気と怒りを孕んでいた。
「政治に関わらせず、金と力だけを吸い上げ……用済みになれば『危険分子』として非能力者の手で殺させる。どこまでも、どこまでも……あいつらのやり方は変わらないねぇ」
ライラの頭裏に過ったのは、150年前の惨劇だった。
かつて自分たち『第一世代』の能力者が覚醒した際、当時の権力者や反日勢力は彼らの絶大な力を恐れ、徹底的な弾圧と惨殺を行った。都合の良い時は兵器として持て囃し、怯えれば裏切って殺す。友が、家族が、理不尽な理由で血の海に沈んでいったあの日の光景。
「ライラ様……」
重苦しい空気の中、ミオンが静かに頭を下げた。
「150年前、私たちが国連と反日の手先どもに追い詰められた歴史が……今、この現代でも何食わぬ顔で繰り返されていたのです。彼らは『日本人』という血脈そのものを恐れ、虐げ、殺し続けてきた」
「あはは……あははははっ!」
ライラは突然、乾いた笑い声を響かせた。その瞳には、狂気と漆黒の憎悪が渦巻いている。
「そうか……そうかい! 150年経っても、人間の醜さは一ミリも変わっていないわけだ! 奪われ、殺されるのは……いつだって私たち『日本人』の側だ!!」
ライラは胸元の「隕石の欠片」を力任せに握りしめた。
「許さないよ……。私たちが流してきた血の重さを、今度こそ世界に教えてやる。レッドエコーズも、国連の残党も、この歪んだ世界秩序そのものを……根こそぎ叩き潰してやる!!」
覚醒者たちの怒りは頂点に達し、選別の戦いは真の「復讐劇」へとその色を激しく深めていった。




