第106話:星を穿つ塔
凄まじい衝撃波によって吹き飛ばされたアリシアは、そのまま集中治療室へと緊急搬送されていた。
心電図の規則的な電子音が鳴り響く病室で、窓の外を見つめていたエリカがそっと息を吐く。
「……命に別状は無さそうですわね」
「ええ……ですが、アレが『序列1位』……」
レインは手元にある一枚の紙切れを強く握りしめた。校長が言っていた。話を下に、荒らされた校長室でタンポポが見つけ出したという例示学園の旧順位表。その最頂点、1位の欄には誇らしげに『ライラ』の名が刻まれていたのだ。
「はぁ……はぁ……っ」
病室の床に、カシウスが激しく額を擦り付けていた。
「申し訳……ございません……! 私の魔力覚醒のせいで、あんな化物を目覚めさせてしまい……っ!」
壊れた義手を抱え、悔し涙を落とすカシウスの肩に、レインは優しく手を置いた。
「顔を上げなさい、カシウス。貴方のせいではありませんわ。遅かれ早かれ、誰かの魔力覚醒に反応してあの方は復活していた……止められない運命だったのです」
「……それにしても、魔法ではなく『超能力』……ですのね」
エリカが呟いたその時、壁掛けの大型モニターが突如としてノイズを発し、緊急ニュース映像へと切り替わった。
『た、大変です! 本日未明、ネオ東京ギャラクシーツリーが何者かによって占拠されました!』
アナウンサーの悲鳴のような声とともに映し出されたのは、雲を遥かに突き抜け、大気圏のその先へと伸びる途方もない構造物だった。
ネオ東京ギャラクシーツリー――古代の潤沢な力によって強度を保たれたその塔は、旧時代の1000倍、実に『634キロメートル』という宇宙空間に届く高さを誇る、この国の象徴である。
画面が切り替わり、ツリーの最上層・展望デッキの映像が映し出された。そこには、マイクを片手に退屈そうに佇むライラの姿があった。
「あ〜あ〜、マイクテスト、1、2、ゼロゼロ……!』
ライラはカメラに向かって不敵に口元を歪めると、世界中へと通じる回線越しに堂々と告げた。
「私たちはこれより、この腐りきった国に……そして世界に宣戦布告を行う! 150年前、私は権力というものを甘く見ていた……故に、これより「日本奪還」を開始する!」
宇宙へと届く巨塔から解き放たれた宣戦布告。世界を揺るがす壮大な反逆劇が、ついにその幕を上げた。




