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悪役姫は誘導される。

 火を噴いたドロップキックは手加減したもののクリティカルヒット間違いなしだった。


 しかしミリアリアの胸の内は、爽快とは程遠い。


「あのクマがある以上……魔王案件は確実。マジヤバですわ」


「いやでも……クマがあるだけでなんてことするんですかミリアリア様……」


 いやだってクマだよ? これは魔王による精神干渉の決定的な証拠なのだ。


 メタ的なことを言えば2周目をやってよく見ると、洗脳の影響下にあるキャラ差分にはクマがあることにプレイヤーは気づく。


 注意していれば、いつからその影響下にあったのかわかる仕組みだった。


 まさかそれがここまでダイレクトに反映されているとは思わなかったが、出ているのだから仕方がない。


「なんか……長年の苦労が水の泡になったようでビックリですわね。いったい誰に憑りついて復活したのか……宰相様?」


 完全に意識を飛ばしているマイヤーは、直接憑かれているにしては弱すぎる。


 手加減してもこれなら、原作通り洗脳の影響下にあるとみるのが自然だった。


「まぁ、でも初期ボスは撃破ですわ! 順番に行きましょう。事態は確実によくなっていますわ」


「いやミリアリア様? 事態が悪化したようにしか見えないんですけど?」


「……そうだな。お前はもう少し思慮深く行動するべきだと思うぞ?」


「えー」


 確かに槍の切先は近くなったが、マイヤーを倒した時点で突き出されなかった槍などビビる気にもならない。


 ただミリアリアとしては槍を持って囲まれている時点で、若干イラっとはしていた。


 そこまで考えてミリアリアの目からふと光が消えていた。


「なんか……めんどくさいですわね」


「大変だ! ミリアリア様がめんどくさがっておられる!」


「雑にやられるぞお前達! 武器を収めろ! いや防御を固めろ!」


「さっきから失礼ですわよ? 仲間達よ」


 仲間から失礼な叫びが飛び出したけど、全員謎の黒い沼に落として動きを止めるくらいしか考えてないですわ。


 だからレオンもそんなにビクついて丸くならなくてもよいのですよ?


 でもそれはあまりよくなかった。


 この中で見た目一番大きなレオンが怯えていることで、これはいけるとでも勘違いしたのか取り囲んでいた兵士達が勢いづいてしまったのである。


「決死の覚悟で挑め! 必ず無傷で捕らえるのだ!」


「油断するな! 並みの使い手ではないぞ!」


「槍を構えろ! 対精霊術結界を敷け!」


 なんとも無駄のない、洗練された動きで無駄なことをする兵士達を眺めながらミリアリアはため息を吐いた。


「なんか……猛獣を追い立ててるみたいな構図が地味にイラつきますわね」


 いよいよ蹴散らしてしまうかと腕まくりしたミリアリアだったが―――その時、突然突風が巻き起こって、土埃が視界をふさいだ。


「なんです?」


「……ミリアリア様。こちらに」


 そして声が耳元に届く。


 何者かは知らないが、どうやら声の主はミリアリアに用があるらしい。


「ふむ……好転の兆し? なら、行ってみましょうか?」


 ミリアリアは騒ぎにまぎれて、転移でレオンをいったん車ごと国の外に転移させる。


「み、ミリアリア様! 一体何なんですかこれ!」


「メアリー。あんまり声をだすとバレますわ」


 そしてとりあえずメアリーの襟首を掴んで、声の誘導に従うことにした。



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