表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/121

悪役姫は囲まれる。

「さてでは緊急会議です。これから、ハミング王国にいったん戻ろうと思いますわ」


 そう宣言した時、ミリアリアに向けられた視線は、こいつ何言ってんだと言わんばかりだった。


「言いたいことがあるのはわかりますが、行くのは決定ですわよ?」


「いえ、個人的には嬉しいですが本当に大丈夫なんですか?」


「まぁ絶対ひと悶着あるでしょうけど、どうにかして見せますわ」


「私としては「どう」どうにかするのか聞きたいところなんですが?」


「さもありなん。でも、今のところノープランですけれどね!」


「胸を張って言うことだろうか?」


「お黙りなさいなダーク。だからこそ作戦会議ですわ」


 実際適当なことを言っている自覚はあるのでそこは甘んじて批難は受け入れるが、ミリアリアとしては様子を見ることが出来ればそれでいい。


 今更首を突っ込んでイケメンゲットとか欠片も思ってはいない。


 それに当初の目算では、今王都は平和そのものであるはずなのだ。


 ミリアリアの予想では現在ハミング王国はラブコメに突入しているのではないかと考えていた。


 最後に出会った攻略対象たちがずいぶん個性的になっていたのが気にかかるが、まさかミリアリアがいなくなったからと言って完全に恋愛要素がなくなることはないと思うけれど、火種がなければ火事は起こらないはずである。


「まぁ学園の様子を見るだけだから難しいことはありませんけどね。注意するのは主要キャラと……あと要注意なのは原作で重度の洗脳を施されていた二人……元宮廷精霊術師の男、教師のマイヤーという男。そして宰相のアダージョくらいわね。主要キャラクター以外だと立ち絵がありますから」


「……そいつらはなんなんだ?」


 ダークの質問に、ミリアリアはすらすらと答えた。


「簡単に言えば最初のボスと中ボスですわ。わたくしが魔王だった頃、彼らの心の闇を利用して、ガッツリ洗脳するんですわ。マイヤーというやつはライラの精霊術の最初の教師なのですが、性格が最悪でライラを影でいじめていたのです。まぁ性格悪いのがばれて学園の教師になっていたんですけどね?」


「性格悪いのに勤まるんですか教師なんて?」


「ギリッギリですわね。書類上は元宮廷のお抱え精霊術師でしたから、不思議なことに。わたくしもあまり好きではなかったから、昔煽られたのでドロップキックをかましてやりましたわ! 顔面に!」


「「ドロップキックを……!」」


 そこ、やってしまわれましたか姫様!みたいな顔をするんじゃありません。当然の折檻だったのです姫的に。


 幼い頃のお茶目でそんな目を向けられるのは少々きついものがあった。


「あとアダージョの方は……ものすごく印象薄いですわね。強くもないみたいですわ」


「いえ? 強さはこの際関係ないのでは? 宰相が敵って大変じゃないですか」


「まぁそうです。差し向けてくる刺客が厄介なので突撃するわたくし達には関係ないってことですわ。実際の働きとしては、おそらく内政的なところが大きいでしょう」


 元々所詮はチートなしのミリアリアでは、圧倒的に政治の経験が足りなかった。女王亡き後そこを補わせるための洗脳である。


 もちろん他にも洗脳しているだろう。


 細々した部分では闇の術を多用していくスタイルは、依り代が誰であろうと根っこが魔王なので同じことだと思われる。


 しかし説明があってなおメイドのメアリーは不安そうだった。


「しかし……それはミリアリア様が、悪の魔王になった場合なんですよね? では今回の場合は違う可能性もあるのではないでしょうか?」


「いい質問ですわメアリー。いいでしょう……では一つ洗脳されている人間の簡単な見分け方を教えましょう」


「は、はい……」


「あるのかそんなものが?」


「もちろん。ダークも覚えておくといいですわ」


 そう闇の洗脳を受けた者を一発で見分けるのは実に簡単だ。


 ミリアリアは自分の目の下に指をあてると断言した。


「クマですわ! 目の下にビックリするくらい濃いクマが出来るのですわ!」


「……はぁ。真剣に聞いて損しましたね」


「全くだ。あるわけないだろそんなこと」


「んな! 本当ですわよ! あと肌の色調が一段暗くなるんです! ほんとですってば!」


 ミリアリアの必死の訴えは彼らに届くことはなかった。


 でもまぁきっとこんな情報は無駄になるに違いない。


 だってミリアリアの目的は現在の原作がきちんと崩壊しているかどうかの確認だけなのだから当然である。




「……そのはずだったんですがね」


「ミ、ミリアリア様」


 涙目のメアリーにミリアリアはやれやれとため息を吐く。


 案外何でもないですよーって顔してさらっと入れば、学園の様子見くらい楽勝だと思っていたのに、どういうわけかミリアリアは大量の兵士に囲まれていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ