悪役姫は語られる。
いやまぁ確かに感想は色々とあるが、それはさておきこれは由々しき問題だった。
言わなくてもいいんじゃないかなーとは正直思った。
でも言ってしまったからには仕方がないのでミリアリアは力強く主張する。
「だって! そんな闇落ちすると闇属性になるとか……精霊王様が言うと説得力が違うんだからホントやめてくださいまし! ただでさえダークサイドなイメージがつきがちですのに、とどめになりかねませんわ!」
「……まぁ……そうかも?」
「子どもの時から闇属性の人もいるんですわ! そこ、大事なところですわよ? 単純に自分のピンチに新たな属性に目覚めることはあるのですわ! かく言うわたくしも雷に打たれたら雷属性が芽生えましたし!」
「そ、そうなんだ」
そのルークとやらだって、ピンチにたまたま闇属性が目覚めていたとしてもまったくおかしくはない。
元々闇が得意だった可能性は消してゼロではないのだから。
しばらくミリアリアの勢いに押されて、しどろもどろだった精霊王様だったが、いやいやと仕切り直す。
「……」
そして感じたのは、怒りの気配だ。
ただ相手は精霊王様だ、そのプレッシャーは相当の物だった。
「大事なところなんだからふざけないでほしいかな? 実際恐ろしいことだと思うけど?」
だが別にミリアリアだってふざけていたわけじゃない。
ふんと鼻を鳴らして、ミリアリアは扇を広げると表情を隠して言った。
「別にふざけてはいませんわ。語ることがないだけです」
「知る必要はないと?」
「どうでしょう? それってわたくしが判断する事なのかしら? わたくしが知らなかったということはダークが語る必要がないと判断したからですわよ。それよりも精霊王様はよろしいのですか? わたくしなら過去の黒歴史を勝手に語られたら……例え親でも怒り狂うと思うのですが?」
知られたくない相手に知られたくない秘密を勝手に告げられるのは場合によっては戦争である。
そう指摘すると精霊王様の声がわずかながら動揺を見せた。
「う! ……いやまぁ僕がしゃべったことは内緒にしてもらえると嬉しいかなって」
「了解ですわ」
新発見、精霊にも黒歴史の概念は適応されるらしい。