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悪役姫は格好をつける。

 天気は晴天。


 なんとなく庭に散歩に出たミリアリアは庭の美しさに目を細めた。


 庭師がいい仕事をしているのだろう。噂通りいつもより一層綺麗にバラが咲き誇り、ミリアリアは思わず手を伸ばす。


「あの……ミリアリアお姉さま!」


 自分の名を呼ぶそんな声にミリアリアは顔を向ける。


 その瞬間、この空間の色が変化したのではないかと思うほどに、中庭に光が差した気がした。


「―――ライラ?」


 ミリアリアの口から反射的に出たのは初めて出会う妹の名前だった。


 陽光のような金髪に、宝石のように美しい金色の瞳の美少女がミリアリアを見ている。


 透けるほどに白い肌は上気していて、今のセリフがどれだけ勇気を振り絞った呼びかけであったのかは明らかだった。


 怯えの色はない。


 ただ純粋に大きな期待と、好奇心が向けられていると感じたミリアリアは内心首を傾げた。


 ふむ、違和感がある。


 それが何なのかと考えていると、少女を追いかけてきた侍女らしき女性がミリアリアを見て青ざめていてなんとなく得心がいった。


 そうそうこういう反応が正しいのだった。


 城の王女はライバルだ。


 そしてミリアリアという王女は傲慢な自尊心の塊である。


 少なくともミリアリアが昔のミリアリアでいた時間の方が圧倒的に長いのだ。


 ミリアリアはなんでも自分が一番だと思っていて、二番目など、路傍の石程度にしか考えていない。


 そんなミリアリアがライラを見つければ、蹴りの一つも入れていたことだろう。


 実際、原作ではそうだったかも。


 でも今のミリアリアからこぼれた感情は、少し違っていた。


 なにこれ、すごい好き。


 自然とミリアリアは微笑みを浮かべてライラを見ていた。


 純粋なファン的好意である。


 流石ヒロイン、マジでかわいい。


 野に咲く花のように親しみやすくも、太陽のように輝く少女からミリアリアはオーラさえ感じる。


 光ってる人間って存在するんだなーって感じである。


「あ、あのお姉様……ですよね?」


 重ねてかけられた声にミリアリアは穏やかに頷いた。


「ええ……そうよライラ。初めましてかしら。わたくしが姉のミリアリアですわ」


 ミリアリアは思わず手を伸ばす。


 つい先ほど見蕩れた花にそうしたように、そっとライラに触れて、その頭をなでた。


「ふえ」


「フフフッ。貴女に会えてよかったですわ。わたくしどうやら貴女を好きになれそうです」


「?」


 不意打ちの一言にライラの目が丸くなった。


 ハイ可愛い。


 だがいたずらが成功してレア顔が拝めたが、せっかく会えたのでミリアリアはお姉ちゃん風も吹かせたくなってきた。


「でもね?」


 ミリアリアは扇を広げて一振りすると、黒い風が庭園を吹き荒れた。


 そして花弁が舞い散り、蝶の形に乱れ飛ぶ闇がミリアリアの周囲を覆った。


「―――キレイ」


 何が起こったのかまるで分かっていないライラはぽかんと蝶を眺めている。


 横の侍女など今にも気絶しそうな顔で尻もちをついていた。


 ミリアリアは微笑み。


「もう少し強くなっておきなさいライラ。じゃないと―――わたくしにすら負けてしまいますわよ?」


 そう口にしたミリアリアは庭から忽然と姿を消した。


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