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悪役姫の感想アーサー編。

「あの姫は……ものが違う。強すぎる」


 ミリアリアという少女がとてつもなく強いと騎士団長である父が褒めた時、アーサーが感じたのは強い嫉妬だった。


 アーサーは騎士の家系に生まれ、物心ついた時から訓練を続けていた。


 そんな日々の中で、父が自分を褒めたことなど一度もなかったからだ。


 もちろん相手は姫である。本来なら感情をぶつけてよい相手ではない。


 しかし、たまたま見かけたその姫はアーサーには自分と同い年の非力な女の子にしか見えなかった。


 そして一度そう感じてしまうと、頭にカッと血が上って感情に任せてアーサーは言ってしまった。


「……俺と勝負しろ!」


 短慮なセリフだったとアーサーは一瞬で後悔することになった。



 そして後悔は続いている。


「あ……ああ……」


 見たこともないような魔剣を手にしたまま、それでもアーサーは一歩も動けないでいた。


 目の前には天を突くようなムカデのモンスターが暴れていて、それを一人でしのいでいるのはつい先ほど自分が勝負を仕掛けた女の子だった。


「す……すげぇ」


 そうとしかアーサーは言えない。


 ミリアリアは大ムカデの攻撃を紙一重で避けて、手に持った扇を恐ろしい勢いで叩きつけダメージを与えていた。


 それをもう何回も、何十回も繰り返して戦い続けている。


 今まで見て来た騎士達の戦いとはどれも違う、まるでダンスでも踊っているかのような身のこなしをアーサーは美しいとさえ感じてしまった。


 あんなこと大人だって出来やしない。


 精神力はもちろん、あんな小さな扇で巨大モンスターと渡り合う実力は、子供が見たってすさまじいものがあった。


 まさしくものが違う。


 いつしか戦いを見るアーサーの心からは小さな嫉妬なんてものは消えうせていた。


 年齢も関係なく、間違いなくミリアリアという少女は今まで見てきた誰よりも強い者だった。


 しかし延々と繰り返される攻防は、何かの拍子にミリアリアの小さな体がバラバラになりそうで、恐怖で目をそむけたくもなってくる。


 ただすべては自分の軽率な言葉から始まったから、アーサーは後悔に打ちのめされながらも顔を背ける事さえ出来なかった。


「このままじゃ……」


 アーサーの手のひらには汗がじっとりと染み出していた。


 助けようにも、何もできない。


 からからに喉が渇き。


 ミリアリアの後ろでただ無力な自分に涙さえこみあげてきた。


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