悪役姫はお届け物を受け取る。
ミリアリアはついに待ち望んでいた日を迎えていた。
ドキドキと高鳴る胸を押さえてミリアリアはメアリーに尋ねる。
「さて……今日はアレが届いているんですわよね?」
「はい、届いております……ミリアリア様」
急げと口を酸っぱくして催促した甲斐があった。
確認すると、木箱に詰められて送って来たそれは相当に重く、持って来た従者が一体何が入っているんだと首をかしげていたのが面白い。
そして部屋に運び込まれたでかでかとした木箱の蓋を、ミリアリアはむしり取る様に引っぺがした。
「おお! 素晴らしい鉄球ですわ!」
ボウリングの玉の様に磨き上げられ、美しく装飾されたマイ鉄球の輝きに、ミリアリアは思わず抱き着いて頬ずりする。
すべすべに磨き上げられた上、装飾は繊細である。
金をあしらいアクセントに大粒のトパーズをあしらった鉄球達は相変わらずずっしりと重かった。
よだれが垂れそうになるのをグシグシとふき取り、ミリアリアは締まりのない顔を引き締めた。
「おっと先生をお待たせするわけにはいきませんわね。メアリー! では準備を始めますわよ!」
「はいお嬢様。それとこちら例の鍛冶師からです」
更にもう一つ本命のお届け物まで届いていると聞いてしまったら、ミリアリアは小動物のように俊敏にメアリーに詰め寄ってしまった。
「来たんですの! そっちも!? 鉄球をせかしたからもう少し時間がかかると思いましたわ!」
やだ! あのアーノルド、わたくしのお抱え職人に格上げして差し上げようかしら!
送られてきた荷物の中身を確認すると、ミリアリアは目が釘付けになった。
「はい。とてもいい仕事ができたとそう言っておりました」
「ええ……そのようですわ」
メアリーも絶賛するほど、ミリアリアのニューウエポンは素晴らしい出来だ。
手に取るまでもなくミリアリアにはその武器の力が分かった。
これはぜひとも試さねばならない。
すでにミリアリアはお披露目の機会も用意していた。
「お待たせしましたわね。先生―――」
演習場にやって来たミリアリアは赤いドレス姿にキャリーバッグを転がしてザッと大地を踏みしめる。
そして気力をいつも以上に漲らせるミリアリアにホイピン先生は、気圧された様に後ずさった。
「はい、ミリアリア様……。えっと、これは何事なのですか?」
そう思うのも無理はない。
ミリアリアから迸る気合を見れば、今日は一味違うと誰もが察したに違いない。
さて本日は完全武装、パーフェクトミリアリア(仮)のお披露目と行くとしよう。
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