悪役姫は実験する。
「て、手に入れてしまいましたわ……」
褒章を手にしたミリアリアはまぁ手に入れられたら儲けものと思っていた重要アイテムを本当に手に入れてしまっていた。
「さすがはお母様! 太っ腹ですわね!」
女王様から届いた特大のブラックダイヤモンドは全く不純物もなく完璧な仕上がりでペンダントにされていた。
ミリアリアはワクワクと高鳴る鼓動を押さえて、そのペンダントを身に着ける。
闇を中に閉じ込めたような漆黒は、確かにミリアリアに力を与えているような気がした。
「悪くない……悪くないですわ!」
中々上品で、ミリアリアの黒い髪にも合っている。
試しに精霊力を流してみると、自分の力になじみ増幅さえしているように感じるのは気のせいではない。
これでより一層闇属性をうまく使えるというものだった。
「なんでこの国の人間は気が付かないのでしょうね? こんなにも力が漲るのに」
やれやれとミリアリアは肩をすくめるが、そもそも宝石をつけて戦いに行く発想がないというただそれだけの話なのかもしれないと思いいたった。
「結婚指輪の文化でもあればわかりやすかったんでしょうけど、残念ですわね」
それでパワーアップしても奇跡の一言で片づけられてしまいそうだけれども、それはそれである。
せっかくのレア宝石なので、その効果も、少しずつ試してみたいものだった。
闇属性というやつは本当に奥が深い。 そして最近で最も気になる術はアレだろうとミリアリアは自分の服に手を当てた。
「今回の収穫はでもあれですわよね」
ミリアリアはドレスをイメージ、すぐに着ているものを漆黒のドレスにモデルチェンジして、鏡の前でくるりと回ってみた。
そしてリボンをつけたりフリルをつけたり、ドレスの形を次々に変更していった。
「おおーデザインまで自由自在ですわね。為せば成るものですわ!」
これは楽しい、闇属性いけるやん。
ミリアリアは闇属性に新たな可能性を見た。
「やっぱりレベルが上がると違いますわね……ゲームにはなかった仕様とはいえ、かなり楽しみになってきましたわ」
手の平からうねうねと黒い触手を出しながら、ミリアリアはふと考えた。
「……これ、液体とかに出来ないかしら?」
思いついたのは結構危険な発想である。
ポーションのようなものだってあるんだから出来なくはないはず。確かにそうなのだがそれを自分で飲むというのは、またハードルが高い。
しかし思いついたんだからやってみるとしよう。
ミリアリアは適当なカップを見つけて、手のひらをかざし念じてみた。
ぼんやり煙のように渦を巻いた闇が、どろりと液体に変化してカップの中に注がれる。
ぽたりと闇が落ち、波紋を広げるそれを見てミリアリアはごくりと喉を鳴らした。
「で、出来ましたわね……闇属性の液体? 一見するとコーヒーの様ですが……」
実に興味深い。
液体はミリアリアが念じると、一瞬で蒸発するように消えてしまった。
「なるほど……こっちもイメージに寄りますか。ではまさか味まで再現できるのでは?」
いや、よくよく考えれば闇属性は回復もできるらしいと自分の体で証明した。
ひょっとすると効能までイメージ通りのモノを再現出来たりはしないだろうか?
「……そう、それこそポーションみたいなものを生成できれば丸儲けですわ」
ちょっとやってみよう。
ひとまず薬は怖いのでまずはコーヒーから。
再びミリアリアはカップに手をかざすと、今度はよりコーヒーっぽい液体がどろりと出てきて、香ばしい香りが立ち上る。
「こ、これは……いけたんではなくって?」
カップを満たしたコーヒーっぽいものを凝視しながら、恐る恐るミリアリアはカップを持ち上げる。
見た目と匂いは完ぺきである。
「なら、後は……味ですわよね」
恐る恐るミリアリアは暗黒の液体に口をつけ―――その瞬間ウエッと下唇に滝を作った。
「なんという苦さ……苦いとはイメージしましたけど、味は練習がいりますわ」
舌がしびれるほどの苦みはのたうち回りそうだが、でもこいつは、無限の可能性を感じる。
炭酸飲料や……ひょっとするとエナジードリンクのようなものまでいけるかもしれない。
若さと上がったレベル頼りのスタミナ頼りで、睡眠時間を削るのにも少々しんどさを感じていたのだ。
まぁドーピングが健康にいいのかはともかく、ミリアリアはモチベーションを上げた。
その日から謎の液体を配り歩くミリアリアの姿がたびたび目撃される。
そのたびに毒を飲まされてるんじゃないかと寿命を縮まされ、使用人たちの評価がまたちょっと下がることになった。
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