悪役姫は悪夢と出会う。
「ぐぉ……! マジヤバですわ」
ミリアリアは見た。
激しく火花が散ってはいたが、あの鎧は鉛(鉄)の玉を弾いていた。
ミリアリアはブワッと全身の毛穴が開くのを感じた。
「ぐぅ……わたくしとしたことがフラグを建ててしまうなんて!
ついに来てしまいましたか……思い付きのチート武器で超えられない壁が!」
敵のレベルが上がれば上がるほど、そんな日が来るとは思っていたが目の前にすると動揺せずにはいられない。
だがミリアリアの事情は関係なしに、否応なくナイトメアナイトは動き出す。
「ゴアアアア!」
「!」
一声吠え、体が霞んだかと思う速度で駆け出すそいつは脅威以外の何物でもない。
ミリアリアは追撃をかけるが、弾丸をかいくぐるナイトメアナイトの体技は本物だった。
「弾丸見切ってんじゃありませんわよ!」
迫る剣の一閃。
首がもぎ取られそうな一撃をミリアリアはかわす。
だが攻守が入れ替わったとたん、連撃は苛烈だった。
長い剣をよくもまぁここまで器用に操れるものだとミリアリアは思ったが、その動きはかろうじて見えていた。
ミリアリアの脳は相手の動きを予測する。
だがそれでも、接近戦は向こうに分があったらしい。
予想を裏切る意識の外、絶対に避けられない攻撃は繰り出された。
「……!」
剣をかわしたと思ったら、鎧の鉄拳がミリアリアのボディに突き刺さる。
「……!!!」
放たれた一撃はミリアリアの全身をバラバラにしそうだ。
爆発したようなガンと派手な衝突音が響き、ミリアリアの軽い体はボールのように軽く飛ぶ。
ミリアリアは踏みとどまって歯を食いしばってダメージを耐えた。
拳が当たった瞬間、その硬質な音をナイトメアナイトも聞いただろう。
手ごたえに困惑しているナイトメアナイトに対して、ミリアリアは口元から流れる血を親指でぬぐい取り、鉄扇を突き付ける。
「わ……悪いですわね。期待を持たせてしまいましたか?」
ミリアリアの服はボロボロだったが、その周囲にはうねうねと動く繊維状の黒い闇が纏わりついていた。
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