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77「複数あるのだが…」求は最高峰の上、必要なモノは…

やっと目的を果たす…前に、目的を話す事ができたイツキだったが…

 自己紹介、訪ねる手段が判明し、次は…


「よしっ、じゃあ色々と分かったところで、ここにきた目的ってのは、何なんだぁ?」


 一体、どの様な用事で来たのか、目的を話す番である。

 鍜治屋を訪れる理由としては、武具の調達やメンテナンスだろう。

 弟子になりたいという者や、見学だけさせてもらいたいなども、可能性としてはある。

 つまり、目的など絞り込めるわけもない。


 ましてや、武具に困るとは思えない強者イツキである。

 たとえ冒険者としては低ランクでも、小さな頃から数多の命を屠って来た人物であり、今更新しい武具を必要とするのかとも思う。

 というわけで、イツキの目的を読み切れていないシュエンに、イツキは本来の目的を伝える。


「複数あるのだが…」

「おうっ」


 目的が複数ある事に、少し意外に思ったシュエンだったが、思い返せば、複数の用事で訪れる者は多かった。

 イツキの目的を思いつくだけ考えて、その中から本来の目的を絞り込もうとした為に、一つだけと思い込んでしまったのだろう。

 まあ、複数でも問題はないので納得すると、どんと来いとでも言わんばかりに構えるシュエンに、一つ目を切り出す。


「まず、これ以上の、斬る事に特化した武器ものを造れるか?」

「っ!…どっから出したぁ?…いやっ、そうじゃない」


 イツキは用事を伝えると同時に取り出した…いや、出現させた、例の謎の刀を見せつけた。

 魔力の動きもなく唐突に現れた得物に、一瞬驚きと少しの警戒をあらわすが、イツキに殺意も敵意もなく、今さら襲う意味もないと警戒を解いたシュエン。

 そして、それなりに知識と経験はあると自負している、自分シュエンですら全く感知できなかった武具の出現に、意識を持って行かれる。


 ミエリアが言っていた、『指先からちょろっと何かが流れ出て、それが瞬間には刀の形に模られる』というのは、かなり短い時間で行われる。

 ミエリアの人から外れた身体能力や、イツキの仲間、シュエンなどなら、イツキにさえ目を向けていれば、何とか見て取ることはできる。

 しかしそれでも、全く別の方へ意識を向けていたなら、まず気づくことはできない。

 それだけ、一瞬の出来事なのだ。


 そして、シュエンなら見えたはずの出現シーンも、何を言われるのかと意識を持って行かれていた為に、見逃してしまった。

 ただ、その理由がシュエンにわかる筈もなく、どう言った原理なのかと考え込もうとし…


「なんだそれは……」


 すぐに目の前にあるその武器の異質さに気づき、中断した。

 口癖も飛んでいくほど目を奪われたソレ。


 何が異質なのかと問われれば、うまく言葉にできないだろうが、それでも武器を作り出す人間として、違和感を感じて止まない。

 あまり見ない種類の武器に、ガン見していたシュエンは、答えを導き出した。


「…カタナ、だなぁ。東の陸で発祥した武器モンだが、よく持ってるなっ。あまり出回ってないし、かなり高価な筈…だが、そこじゃない」


 ルビルスも一目で当てただけあり、物珍しさはあるのだろうが、全く見かけない…というほどでもないのだろう。

 しかし、シュエンの目には物珍しさなど欠片もなく、イツキのカタナを見極めようとする、職人の目と呼ぶべき真剣さが宿っていた。


 …しかし、やはりというか。

 刀発祥の地は東の陸らしく、異世界の和の文化といえば東というのは、この世界でも当てはまるらしい。

 名前の作りも、ソフィア曰くであるが、多少の違いはあれど似ているらしい。

 と、それはともかく。


「見ただけで分かる、恐ろしいほどの斬れ味、頑丈さ、耐久性。間違いなく、最高峰のモノだと言える」


 シュエンの言う、見ただけでも分かるというのは、試し切りをすることも、手で持って確認することも、素材を知らなくとも分かる…という意味ではない。

 そもそも、シュエンどころか、その一クラス下の技量の鍛治師達でも、見ただけで性能がわかるのは当たり前なのだ。

 その程度もできない鍛治師など、一流になどなれない、とまで言われる、必須スキルなのだ。

 といっても、経験と才能がモノを言うスキルであるし、そのスキルが必要になる鍛治師など、王家御用達レベルであり、早々居たりはしないのだが。

 なので、今更見ただけでわかるなどと口に出したりはしない。


 この、見ただけでわかるというのは、見極める目を持っていない鍛治師でも、一目でどれだけ完成された武器なのか分かる、それだけ高すぎる性能を誇っているのだ。

 ただし、シュエンの様に頑丈さや耐久性まで、完璧に見抜けるかといえば、首を傾げざる終えないが。


「一体、何を素材に使い、どう造ればこうなる──


 世界の五指ではなく、一大陸で五指に入る腕前とはいえ、最高峰の鍛治師の1人と言っても過言ではないシュエンが、最高峰の武器だと断言したイツキの刀。

 しかし、それだけ完成された武器を前にしても、その顔には喜びも感動も…嫉妬も何もなく、ただ顔をしかめ刀を睨んでいた。


 何故なら、シュエンをしても素材が全く分からず、製造方法も検討がつかなかったから。

 しかし、それだけが理由ではなく、一番の理由が別にあった。

 それは…


──全く魔力を、感じない」


 強力な武器なら籠められていて、感じ取れて当たり前の魔力が、一切感じられないことだった。

 完全に口癖は消え、あり得ないものを見た様に、目に驚愕を宿しイツキに目を向けたシュエン。


(そうは言われてもな…)


 目を向けられたイツキは無関心を装いつつも、魔力など存在しない世界で造ったのだから当たり前だろうと、考えていた。


 何故こうも、魔力が感じられないだけで、シュエンが驚愕を貼り付けているのかは、この世界の武具の素材と製造方法に理由があった。


 まず、武具の主な使用する状況は、戦争というより魔物との戦いが前提で、魔物を想定するとなると、かなり強力なものが要求される。

 低ランクならともかく、Aランクほどになると、生半可な装備では傷はつけられず、攻撃は防げない。

 しかし、ただの金属ではどれだけ腕がよくとも限界があり、求められる水準のものなど作れない。

 そこで、使用される素材が、魔力の篭った特殊な金属や魔物の素材である。

 それらを使用することで、通常よりも遥かに強力な武具が造れ、場合によっては特殊な能力が付与されることがある。


 また、製造過程でも、魔力を限界値まで込めながら造っていくことで、斬れ味や耐久性などを上昇させる技術がある。

 この際に込める魔力の質や量により、性能は大きく左右され、高い質の魔力を完璧な配分で注ぐことで、家が建つほどの値が付くほどの性能にもなる。

 配分を間違えたり、素材に合わない属性であったりするとなまくらになり、最悪原型を止めることができず崩れる。

 この技術を習得している者は少なくはないが、完璧な配分で行うことができる者は極々僅かで、その大抵は五指に数えられたりする。

 それだけ難易度が高い。

 ちなみに、シュエンはもちろん完璧に近い形で習得しており、少なくとも配分を間違えることなどない。


 とまあこの様に、優れた武具を生み出すには、優れた素材や魔力注入技術が必要となる。

 そして、優れた素材には例外なく魔力が宿っており、魔力注入した武具にも例外なく魔力は宿る。

 つまり、この世界の優れた武具は、魔力が宿っていないとおかしいというほど、絶対的に宿っているものなのだ。


 ここまで来れば、もう分かるだろう…イツキの刀にはソレ(魔力)が宿っていない事が、この世界の住人にとってどれだけ異常なことか。

 最高峰の鍛治師が最高峰の武器だと断言するほどの武器に、魔力が一切宿っていない事が、どれだけ驚愕をもたらすものなのかを。


 イツキも、この世界の武具の素材などの前提を考慮し、魔力が感じられないだけで驚かれた理由が、完全にではなくとも推測できた。


「なんなんだ、これは…っ」

(さて、どうしたものか)


 答えを強く望んでいるシュエンに対し、イツキは答えないという選択肢も、誤魔化すか嘘をつくことも、色々な道からどれを選ぶか、と一瞬悩み、出した道は…


「悪いが、今は話せない」

「………そうかぁ」


 素直に回答を拒否する道だった。

 これから世話になる予定なので、嘘をつくことや誤魔化すことは得策ではなく、なら素直に言えないと伝えるべきだと考えた。

 断られたシュエンは、何とも言えぬ表情をあらわにすると、残念気に肩を落とすが、どこか納得した雰囲気を出していた。


「つまり、何時か話せる時が来るってことで、いいんだよなっ?」

「ああ」

「なら、いいさ」


 イツキの言い方から、時期が来れば話すと分かり、その気があるなら別に構わないと考えたから。

 実際、イツキはそのうち話すと肯定した。

 この様なことで嘘をつくとは思っていないシュエンは、少しだけ満足気に頷くと、早くその時が来ることを願った。


「それで、そのカタナを超える、切ることに特化した武器モンだったか?」

「そうだ」

「正直に言うがなぁ、俺はそれを上回るものが造れた例はないっ。まあ、見たことならあるが…」


 刀については、もう何もない…事も無いが、考えても仕方がないので片隅に追いやると、やっとイツキの質問に答えた。

 一つ目の目的、今現在イツキが使っている刀より、優れたものを求めていたが、その答えは、無いとも取れるが何か含みのある言い方だった。

 造れた事がないだけで、造れないわけではない…という風に解釈したイツキは、腕ではい別のものに問題があるのだろうと察した。

 それは…


「素材か?」

「…ああ、そうだなぁ。それを超えるとなると、相当な素材が必要になるなっ。逆に言えば、それさえあれば、な」


 イツキの予想通り、素材であった。

 もちろん、五指に入るほどなのだから、かなり珍しく、扱いの難しい素材も、かなり強力な魔物の素材も、使用したことはあるのだろう。

 しかし、未だに使用したことのない素材だっていくらでもあるだろうし、SSSランクの魔物の素材ともなれば、早々入って来るものではない。

 ましてや、Xランク相当の素材など、シュエンレベルでもまず見れるものではない。


 そして、シュエンの必要とする素材は…


「Xランクや、SSSランクがパーティを組んでが受ける様な魔物…最上級の素材が必要となるっ……例えば、龍とかなぁ」


 人里に現れれば、間違いなく周辺の壊滅が起こる、人外の中の人外が出撃する様な化け物であった。

また説明が長くなってしまいました。どうしても、ながくなってしまいます…

まとめるのが下手だからでしょうかorz

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