第九話
コロッケが揚がったあと
吉竹が「ツケといて!」といいながら
全速力で逃げたことから、鬼になったおっちゃんから回避できた。
後ろから、おっちゃんの怒鳴り声が聞こえてきた気がしたが、それは気のせいということにしよう。
「なぁ、吉竹」
「ふぁ?」
コロッケを口に含みながら喋るものだから、ちゃんと喋れていない。
そして汚い。
まぁ、それはいつものことだから
放っておこう。
「最近、変な夢見るんだ」
吉竹の動きが一度止まり、僕の方をなにいってんのこいつ、という目でちらりと見たあと吉竹は口を開いた。
「あ、ごめん。聞いてなかった」
アホだ。答えがアホだ。
そんなアホアホ吉竹の為に僕はもう一度、言った。
「最近、変な夢を見るんだ」
さすがに、きいてなかった二度目はなく、僕は安心したが吉竹はさっきよりアホな顔で言った。
「へ~…。で?」
僕はすごく温厚なほうで、滅多に腹を立てないが吉竹には腹が立つ。
「で、じゃなくてさ。夢の内容なんやけどさ、なんか僕が浴衣きて誰かと戦っているっていう夢を最近よく見る」
「お前、その夢もう見たくないの?」
「出来れば」
「おしっ」
気合を入れる声を出し、少し飛び跳ねた。地面に着地すると、僕のほうを向き口角をにぃっーとあげ、笑った。
いや、何かアホなことを考えた顔だ。