第十四話
「足が動かない私はすでにちょっと普通の人とは違う。それが動くようになれば、私にとってはもっともっと素敵な特別。同じ特別なら少し違っていてもいいから、もっともっとの特別な方を選ぶわ」
それじゃあ、突然ついでに特別だからと、ボクはお願いをした。
「おまじないが効きやすいようにベッドに横になって。そして、この目隠しをしてほしい。ちょっと教えられない秘密のおまじないなんだ。服とソックスは脱いでもらわないといけないんで、ソレはお願いしたいんだけれど」
ボクはユリスを抱えてベッドに寝かせる。
目隠をしてからベッドに横になっても順番はどちらでも構わないよと、付け加えた。
さらに突飛な申し出に戸惑いもあっただろう。
だが、受けると決めたのだから、後戻りはしない、と肝を据えたのか、ユリスは目隠しをした。
「服はスミタマが脱がしてくれると助かるわ。それにソックスも。どっちにしても、自分では脱げないの」
ボクはベッドに寝転んだユリスの靴下を脱がす。そして順番に服を脱がせて、椅子へとポンと放り投げる。そして神経が通っていて、感覚がある箇所をユリスに聞きながら額から鼻筋、そして口唇から顎、首筋から胸元へと各所をチェックしていく。
やや上気した薄い桜色の首筋。肌はキメが細かく、まるで熱を帯びた大理石のようだ。服の上からでも分かっていたが、胸はまだまだ成長しきってはいないものの、これからどんどんと成長していくだろう、と予想される。
やや緊張しているのだろうか、身体全体が固まっているようにユリスは横になっている。
「大丈夫。力を抜いて時間もそれほどかからないと思うし、痛くもないから」
ボクはユリスにそう、声を掛けて服を全て脱がし、程よくくびれた腰へと手を回していく。
「おそらくこのあたりから感覚が曖昧になって、動かなくなっているはずなんだけど」
お臍からその下、腰の神経が集中しているあたりから、下半身が恐らく麻痺している。
ユリスも、腰から下の部分は感覚が全くないと言っている。実際に触っていても何も感じていないようだ。その部分の神経を治してしまえば、ユリスの足は動くようになるはずだ。
ボクはユリスの全身を眺めると、切なさが強く込み上がってきた。将来、この娘の夫となる者は、世界一の果報者になるに違いないと。
ボクは手の硬化皮膜を解除して液化させる。指を極限まで細く、ナノ単位まで細く尖らせていく。おまじないといって、目隠しをしてもらったのは、ボクのこの姿を見られたくないための嘘だ。
ユリスには悪いけれど、いずれ本性を明かす日もあるはずだ、と勝手な言い訳をしながら、お臍のやや下から、十本の指を突き入れて行く。
「痛くはないはずだけれども、大丈夫?」
ボクが聞くと、コクリとユリスは頷く。
病巣はおそらく脊椎、しかし、神経節ならどこに原因があってもおかしくない。ボクは身体の表側から腰椎部分に狙いを定めて指を潜り込ませ、まず上半身の神経をすべてチェックする。すると、脳の数カ所に神経の断絶の可能性を発見した。
ボクは注意深くその部分を切除し、ボクの体の一部を使って再接続を施す。そのついでに、脳のすべてを掃き清める感覚で再度チェックする。
人間は脳の機能の一%程度しか使ってないと言われているが、こうやって、神経の通りを良くすればほぼ完全に活性化が期待できるはずだ。
ボクは一旦指を引き抜くと、今度はユリスをうつ伏せに寝かせ、首筋から背中、背中から腰へと手を動かし、再度、腰椎に指を突き刺していく。
先程も感じたが、腰椎の一節が丸ごと壊疽を起こし、腰から下への感覚を遮断しているようだ。医学的な専門知識には乏しいが、かなりレアなケースなのではないかと直感したボクは、その腰椎の一節と、そこからつながる下半身への神経をすべてボクの体内に飲み込み、ボクが造形した新しい腰椎を据え、そこから神経を末端まで行き渡らせてみた。
大会までの期間があれば神経が定着するし、筋力が回復してくれば下半身は動くはずだ。
これでおまじないは終了したが、代々重ねられてきた美しさの遺伝が、こうやって結実している。かえすがえすも血は争えないものだ。ボクは少し憎らしくなって、ユリスのお尻を叩いてしまった。
「ありがとう。おまじないは終わったよ。うまくすれば大会までには動くようになる。でも、もし、動いても内緒にしていた方がいいだろうね」
ボクはユリスに服を着せ、目隠しをはずした。
脳の内側にも手を入れたのだ、その反動もあってか、ユリスの意識はやや朦朧としており、目もとろんとしていて、いかにも眠たそうだ。
異状が出ると問題なので、ユリスを再びベッドに寝かせ、ボクは紅茶を飲みながら様子を窺っていた。
【拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございます。ちょっと堅めだけど、こういう小説嫌いじゃない、先がちょっとだけでも気になっちゃったという方、評価などを頂戴できればありがたいです。感想もお待ちしています。作品の参考にさせていただきます】




