カムアウト
「信じてもらえるかわからないけど、
百言主さまにもらったアプリなんだ」
言ってしまった。バカな事言ってるって、
そう思ってるんだろ。
「百言主さまがくれたアプリ?
なにそれ? ちょっとスマホ見せてよ」
「あ、いや、スマホじゃないんだ。
僕の頭の中にインストールされてるんだ」
「はっ!?
お兄ちゃん、いつ電脳化したのよ?」
「いや、そんなことはしてないぞ。
詳しいことはわからないけど、
あれは、僕の心のつぶやきが、
自動で出てくる。そういう機能なんだよ」
「人のボケをスルーしといて、
さらにボケるなんて…
じゃあなに、一種の超能力ってこと?」
「そう言えるのかな。
初詣のお参りをしてた時に、
人とちゃんと話せるようになりたいから、
力を貸して下さいって、お願いしたら、
百言主さまが、目の前に現れたんだよ」
「百言主さまが現れたんだ?
お兄ちゃんのお願いを叶えに…
それで?
百言主さまはなんて言ってたの?」
「アプリをもらった時に言われたのは、
SNSは、心のつぶやきが自動で出るのと、
心の繋がった相手に言葉を送れるので、
SMSは、名前が分かれば誰にでも、
言葉を送れるらしいってこと」
「なにそれっ!
すごいじゃん!いいなぁ、私も欲しいよ。
どうせ使いこなせないお兄ちゃんには、
勿体ないプレゼントじゃん!」
そうなんだよなぁ。
使いこなせるわけないんだよ。
「あれ、思った以上に凹んでる。
ごめん、言い過ぎだったね」
「いや、紡の言う通りなんだよ。
さっきも、百言主さまに、
散々、ダメ出しされたばっかりなんだ」
「・・・あのね、お兄ちゃん?
凹んでるとこ悪いんだけど、確認させてね
百言主さまと連絡取り合えるの?」
「連絡というか、僕の頭の中を読んで、
勝手にメッセージが来るというか、
叱られるというか…」
「もう一回、確認するよ?
百言主さまは、
お兄ちゃんの考えてることに、
メッセを送って来てくれる。
そのやり取りが繰り返されてる。
これで合ってるよね?」
「うん、合ってる」
ボフン!
なんだっ!?
紡が抱えてたぬいぐるみを投げつけてきた!
うわっ、キレてる顔だっ。
「ほんっっとに、バカだね、お兄ちゃんは!
世界に自分しかいないと思ってんの!?
感謝するって気持ちってないの?
あぁーっ! 腹たつわっ!
いい?お兄ちゃん、感情は抜きで考えて」
紡は本気で怒ってるな…
ぬいぐるみ返した方がいいかな。
「あのね、今までに、何かをくれて、
お兄ちゃんの悪い所、直した方がいい所を
教えてくれた友達っている?」
「いない…」
「だよね。
プレゼント貰ったんだよね?
誕生日でもクリスマスでもない日に、
家族以外から」
「うん。」
「それは嬉しくないの?」
「正直、パニックで、考えてなかった…
そうか、プレゼントを貰ったんだ…
プレゼントかぁ… 嬉しいかも!」
「だよね。嬉しいよね。
それって、ありがたいって思わない?」
「思う。ありがたい。
うん。ありがたいよっ!」
皆さまの、感想、ポイント評価が、励みになります。
ぜひよろしくお願いします。