ファクト
「あのね、聞こうと思ってたのは、
朝の電話のことだったんだけどね、
何か見たんでしょって」
うん、見たよバッチリ。
「でね、なんで、私がそれを知ったか、
そこが重要なの、
たぶん、お兄ちゃんにはね」
「話が全然わからないんだけど…」
「そりゃそうよ。
まだ、なんにも言ってないもん。
わかるわけないじゃん」
ぐっ、その通りなんだけど、
その言われ方が辛いんだよ。
「いい?これから話すから、
途中で邪魔しないで聞いてよ?」
邪魔って…
質問とかあったらどうするんだよ。
「わかった。邪魔しない」
「あのね、お参りし終わって、
みんなと、甘酒を買いに行ったの」
甘酒! なんだ?
なんの話が出てくるんだよ!?
僕のせいで、何かあったのか?
怖いんだけど…ゴクリ
「甘酒が、想像以上に売れちゃって、
用意してた今日の分が全部、
売り切れちゃったんだって。
で、急いで準備してるけど、
今は売れる甘酒がないんだって。
そう言われたのよ」
売り切れた?
今まで、そんなの聞いたことがない…
「でね、甘酒屋のお姉さんに聞いたの。
今年に限って、こんなことになったのは、
どうしてなのって」
それは僕も知りたい。
「お姉さんが言うには、
急にお客さんが増えだして、
なんだろうって思っていたら、
常連のお客さんがね、
百言主さまが、甘酒がおいしいって、
そう言ったって」
「で、よく聞いてみたら、
お賽銭箱の上に、
『ここの甘酒はいつもおいしいなぁ』
て、ツイートみたいな文字が浮いていて、
それをつぶやいたのが、『百言の僕』って
名前だったんだって」
間違いなく僕のせいだ…
「でね、その常連さんが言うには、
『百言の僕』っていうのは、
百言主さまに違いないって。
神様がわざわざ、そういうなら、
甘酒を買った方が、ご利益があるって、
みんな買いに来たんだって」
そんな…ご利益なんて…
百言主さまじゃなくて、僕なのに…
「みんな、嬉しそうに甘酒を買ってくれて、
しかも過去最高の売り上げだったんだって
お姉さん感謝してたよ」
感謝だって?
何に? 僕のあのつぶやきに?
「お兄ちゃんの考えそうなことだと、
百言主さまの言葉じゃないのにとか、
お店に迷惑かけただとか、
そんなとこだよね、きっと」
よくわかってるじゃないか。
その通りだよ。
でも、言葉ではそう言えない…
「わかってる?
お兄ちゃんが、甘酒屋さんの宣伝をして、
売り上げが上がったっていう事実を。
みんなが喜んで甘酒を買って行って、
それをお店の人が感謝してるってことを」
「そうなのか?
感謝されることをした? 僕が?」
「やっぱりね。そんなことだと思った。
お兄ちゃんはね、
他人に無頓着すぎなの。
他人が考えることがわかんないんでしょ?
そういうのよくないよ?」
「た、他人の考えることなんて、
わかるわけないじゃないか。
だって、他人だぞ。僕じゃないのに」
「はぁ、ばか兄。
まぁ、いいわ。それよりも、
アレ、どういう仕組みなのか教えてよ」
くそっ、いっつもこれだ。
人の事ばか兄呼ばわりして、
これ言った時は、そのあとは何聞いても、
答えないじゃないか!
読んでくださって、どうもありがとう!




