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第四章  第二十五話  海王国編23

 海王国の海賊団討伐作戦を見事に成し遂げた霜葉たち。現在彼らは海賊団アジトにて調査を行っている。


その際、海賊団によって憂さ晴らし目的で捕らえられた魔物たちの群れに出会った。その群れは三つの種類が居て大きなスズメさんとフンボルトペンギンに酷似した魔物たちは長を筆頭にかなり抵抗したようで、海賊たちは主に最後の群れで憂さ晴らししていたようだ。


その最後の群れは情けないことに群れの長がいの一番に逃げ出したと言う。そんな姿が海賊たちの残虐心に火をつけてしまったらしい。


騎士たちは抵抗していた群れの魔物に好感を抱き、霜葉に何とかできないか相談した。その際にガーベラと鈴蘭がその群れを説得することに。最後の群れは逃げていた長以外は重症で中にはすでに亡くなっていた者も。


とりあえず霜葉は回復を施し、海賊たちは全滅したと伝えると群れの長はすぐさまアジトから出ていこうと群れに言うが長に怒りの眼でにらみつけた。


『な、何だオマエ達!?』


群れの者たちの行動が分からない長。ちなみにこの群れはガーベラたちと同じスマイルシールだ。今は見た目の可愛さが吹き飛ぶくらいの眼で長を睨みつけている。


『もう私たちはあなたを長とは認めない! 我々はあなたの群れから出ていく!!』

『な、なんだと!?』


そう言ったスマイルシールを長は驚いているようだが、霜葉はそうなるよねっと思っている。


『どういうつもりだ!?』

『それはこちらのセリフだ!! 群れの長でありながら群れの危機に矢面に立つどころかいの一番に逃げ出すとは!!!』

『さらに言えば、逃げるときに女子供を囮にもしたな!!』

『そんな者が長をやっている群れに居ようとする者が居るものか!!』


なんとこの長は逃げるだけではなく、女子供を囮にもしたようだ。そんなことをして無傷でいる長が信じられない。この状況でなければ群れの者たちにボコボコにされていただろう。


『何を言っておる!? 群れで一番大事なのは長であろう!! なればこそ私が無事であればいいのだ!!!』


などと悪気もなく言い切る長に元群れの者たちはさらに不穏な空気となる。そんな時・・・


「ソウハ殿。彼らの説得がうまくいったようですよ?」


他の群れを説得していたガーベラと鈴蘭を騎士二人が抱きかかえ連れてきた。


『なぁ!? お前たちは!?』

『なんと・・・逃げていた群れの長はあなたでしたか』

『あ、元群れの長だ』


騎士たちに抱きかかえられているガーベラと鈴蘭を見て、この場のスマイルシールは全員が驚愕した。まさかとは思っていたが、この群れはガーベラたちが前に居た群れであったようだ。


「ソウハ殿? 何やら不穏な雰囲気がしますが・・・」

「群れの子達を回復したら、長に対して群れから出ていくと言っているようです」

「「あぁ~」」

『なるほど・・・』

『当然なの!』


騎士たちも場の空気を察して、霜葉に尋ねると答えに納得した。ガーベラも納得し、鈴蘭は怒りながら当たり前だと思った。


『おい! お前たちはここで何をしておる!?』

『私たちは娘を保護して、連れて来てくれたこの方の仲間になっております。彼はあなたの親が言っていた魔王なのですよ?』

『なんだと!?』


ガーベラと件の長はそのような会話をする。その際に霜葉が【軍勢の魔王】だと知った。彼らのもともとの群れを率いていた先代長は【軍勢の魔王】を知っていた。


『なれば! 私たちもその者の仲間にしてくれ!!』

『え? いやだけど。特に君は』


長はそのようなことを言ってきたが、霜葉が打てば響くタイミングで断った。


『な、なぜだ!?』

『むしろ、そこでそんなことを言う君にびっくりだよ。この子達との間にトラブルがあった子達なんて仲間にすると思う?』


この霜葉の言葉に霜葉の仲間たちは全員が頷く。そればかりか長に対して怒りを抱いている子達まで当たり前だろと言った顔だった。


『ましてや、君は長の責任や義務を放棄して自分だけ助かろうとしたんだよね? 女子供まで囮にしてそんなことをする子なんて、僕個人としても嫌いだよ』


霜葉のこの発言でガーベラと鈴蘭が驚愕の表情を浮かべる。長が逃げ出した話は聞いていたが、女子供を囮にした話は今聞いたのだ。


『やはり・・・あなたは群れよりも自分が大切なのですね・・・』

『そ、それのどこが悪い!? 群れの長は群れの頂点! その頂点が自分のことを第一に考えて何が悪い!?』

『そのセリフを先々代の長にも言えますか?』

『そ、それは・・・』

『先々代の長はあなたの本質を見抜けなかった。あなた自身が隠していたのも理由でしょうが、親のひいき目もあったのでしょう。ですが、私も群れを率いる長となったから断言できます。そんな考えでは群れはすぐに終わります。それはこの状況が示しているでしょう?』


そんなガーベラの言葉に何も言えなくなった長。その後、この長を置き去りにして残っていたスマイルシールたちはアジトの港に向かった。その代表者と言うか新たな群れの長がガーベラと鈴蘭に謝罪した。


自分たちが間違っていたとあの時はすまなかったと。これに対してガーベラは過ぎたことだし娘をすぐに切り捨てた元長に反発しただけのこと。娘のことを考えてどうしようかと相談してもあの状況では仕方がないと。


ガーベラたちの和解の横では、霜葉がペンギンさんとスズメさんの群れに対して回復を行っていた。港に移動する間もこの二種の群れは霜葉や騎士たちを警戒していたが、今は回復した同胞と喜んでいる。


そして、お約束として回復した者の子供たちが霜葉に懐いた。霜葉は両肩や頭の上に大きな球体のスズメさんに足下にペンギンさんたちが群がっている。


そんな子供たちを落ち着かせた後、二つの群れの長が霜葉に深々と頭を下げてお礼を述べた。


『群れの者たちを助けていただき、感謝いたします』

『あと子供たちが失礼をして悪かった。あいつらは説教しとくからよ』


丁寧であり、ダンディーなシブい声に聞こえるスズメさんと江戸っ子のような言葉に感じるペンギンさん。実に個性豊かである。なお、彼らのステータスは・・・・



  名:  なし


 種族: 【ボールスパロウ♂Lv03/Lv10】


スキル: くちばしLv3 : 飛行Lv5 : 風読みLv2

   : 視力強化Lv4


スズメさんは【ボールスパロウ】と言う種族。すごく納得できる。スキルも特に目新しいものはない。くちばしは攻撃に使用すると補正が乗る。飛行と視力強化は読んで字のごとく。風読みは風の強弱や向きなどが分かる。



  名:  なし


 種族: 【リトルペンギン♂Lv03/Lv10】


スキル: くちばしLv3 : 高速遊泳 : 水中適正Lv5

   : 蹴りLv3 


ペンギンさんの方はいくつか初見のスキルがあり、高速遊泳は小回りとスピードを有する最上位の水泳ユニークスキル。蹴りは読んで字のごとく蹴りに対して補正が発生する。陸上でも行動できるペンギンさんだから持っているのかもしれない。


ちなみに群れの中でもっとも傷付いていたのは長の二人であった。他の群れの子達が言うには、この長二人は誰よりも抵抗し、危ない者たちを助けて常に矢面に立ち続けたそうだ。そんな二人を少しでも助けようと群れの子達もできることで協力していた。


傷を癒した直後には、この二人の長に感謝を伝えた群れの者たちもいた。先ほどのスマイルシールの元長とは比べることすらおこがましいレベルの立派な群れの長である。だから、霜葉の口から自然とこの言葉が出た。


『早速なのですが、僕たちの仲間になりませんか?』

『『仲間??』』


霜葉の言葉に疑問符を受けべるペンギンさんとスズメさん。その為、霜葉が【軍勢の魔王】と言う特殊なジョブに就いていることにその能力のために仲間を増やしていること。仲間は今よりも強い種族に進化できる能力もあることを説明。


『仲間が増えれば僕自身や仲間の能力が上がるので、進化しなくても仲間を増えることにこそ意味があります。他にも飢えることなくお腹いっぱいに食べられることを約束します』

『ふむ・・・』

『それは・・・』


霜葉の説明で興味を持ち、最後のお腹いっぱいに食べられることに強く惹かれている様子。彼らも霜葉が仲間にしてきた者たちも戦闘力に関しては低い。例外はルナとガウェインくらいだ。


その為、お腹いっぱいに食べられることは稀だ。群れの皆と相談したいと言った彼らを霜葉は今日一日はここに居るのでゆっくり考えてほしいと伝えた。ついでにお腹を空かせた群れの子供たちや傷ついていた者たち用に食料を出してあげた。


ペンギンさんには魚介類だが、スズメさんたちは果物や豆類が好きだそうだ。相談の前にお腹を満たそうと子供たちが我先にと食料に群がる。


その間に霜葉は騎士の一人から、カルネ王女が呼んでいると伝えられ軍船の一つに向かうことに。一室に案内された霜葉はカルネ王女から意外なことを相談された。


「あの海賊団の首領をどうするのがいいかですか??」

「うむ。ソウハ殿の意見を聞きたい」


そう問われて霜葉は首を傾げざるしかなかった。そう言うのは国が決めるべきであり、冒険者である霜葉に意見を求めるのは違うのではないかと。


「疑問に思うのはわかるのだが、実を言えば海賊団の幹部や首領の断罪方法に関しては前々から国の上層部でも意見が割れている」

「そうなんですか?」


霜葉の言葉にカルネ王女と騎士団副長たちはそろって頷く。


「奴を公開処刑かあるいは外海に向けて島流しにする実質死刑と変わらない刑法も海王国にはあるが・・・一部の貴族がダンジョン奴隷にして商王国に売り渡すのはどうかと言っている」


霜葉はカルネ王女の言葉に納得した。公開処刑や外海への島流しはわかる。海賊団がしでかしたことはそれほどのことなのだから。それと同じくダンジョン奴隷にすると言うのも理解だけはできる。


特に海賊団の活動で不利益を被った貴族たちからしたら、少しでも利益を得たいと考えてそう言うことを言ったのは理解はできる。ただ、身内を殺された被害者がそれで納得するかは別だが。


「そこで海賊団の首領と実際に刃や言葉を交わした君の意見も聞きたいと思ったのだ。ちなみに王族である私や兄上は公開処刑か島流しをするべきだと考えている」

「公開処刑ですね。公開はしなくてもいいので確実にあの人は死をもって罪を償った方がいいです」


カルネ王女の言葉に霜葉は迷うことなくそう断言した。その冷酷と言うべき迷いのなさに騎士団副長たちは驚いているようだが、カルネ王女だけは納得顔だった。


「やはりそう判断するか・・・」

「意外ですか?」

「いや、むしろ納得しかないな。魔物とは言えあれだけの仲間がいる君が不安要素をそのままにするなどありえんだろう?」


何やら二人だけで理解しているが、副長たちはよくわからずに置いてけぼりだ。


「どういうことでしょうかソウハ殿?」

「あの海賊団の首領は、犯罪をしたくてやっている類の人間です。そして、自分が助かる可能性を諦めていないんですよ。だから、取引していた相手の情報も一切しゃべらない。そんなことをしたら助かった後に取引が出来なくなるから」

「「「!?」」」

「まぁ、よほど大きな相手らしいのでしゃべったら報復が怖いと考えているでしょうが・・・」


霜葉の説明に副長たちは思い当たることしかなくただ驚愕した。尋問のために短い時間言葉を交わしただけであるが、あの首領の様子を見るに自らがしでかしたことの反省や後悔など微塵もないことは明白だった。


むしろ、それらを覚悟し飲み込んだうえで犯罪をしているようであった。恨みなどで自分の命を狙ってくる相手でも返り討ちにする戦闘力もある。何より・・・霜葉の言う通り、海賊団首領は何とか自分が助かるように今この時も隙を伺い、生き残る方法を考えている。


「私もソウハ殿と同意見だ。国のために何人もの犯罪者を捕まえあるいは命を奪ってきたが、事情があり犯罪をするしか生きる術がない者や殺人犯の被害者が犯罪者だったなど、もろもろの事情でこちらとしても考えさせられるケースはあった」


副長たちも同じく経験したため、カルネ王女の言葉を頷きながら聞いている。


「だが、中には犯罪行為を好きでやっている者たちもいた。もしくは犯罪に魅力または自身の才能を感じてな。今回の海賊団首領は間違いなくそのたぐいの犯罪者だ。そんな者を奴隷にするとは言っても生かしたままにするなど危険だと断言する」


このカルネ王女の言葉にその場に居た副長たちは大いに納得し、国には処刑以外にないと報告することで決まった。その後、霜葉たちは騎士たちのご厚意で早めに休ませてもらった。

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