第四章 第二十四話 海王国編22
久しぶりの投稿です。お待たせしました・・・
海王国で暴れ回っていた海賊団壊滅作戦に参加した霜葉は、予想外の一手を仕掛けた海賊団に先手を取られたが、すぐさま対応し、船上での白兵戦へと移った。
その白兵戦で霜葉の仲間たちは大活躍し、海賊たちを圧倒していた。一方の霜葉とカルネ王女が乗った軍船は海賊団の一番大きな船と接触。その船には海賊団の頭が居た。
カルネ王女が頭と戦ったが、頭は海賊行為で捕まえた人々を奴隷にしてカルネ王女を襲われる。その戦いの最中にカルネ王女は暗殺者に不意打ちされ、痺れ薬で動きを封じられる。
そのピンチを救ったのは霜葉とルナだ。カルネ王女のケガを回復薬で回復し、霜葉とルナは海賊団のトップと今から戦うことになるだろう。
「冒険者だぁ? 魔物を連れてるが、まさか【魔物使い】か?」
霜葉を前にして海賊団の頭は冷静だった。いや、逆だ。冷静でいなければまずいと直感で判断し、世間一般の評価である【魔物使い】は使えないと言う考えもこの場では考えないようにしたのだ。
(少なくともあの飛んでる鳥の魔物はかなりやばい。小さい魔物だが、そんなもんがこっちのプラスになるとも思えない・・・)
霜葉個人よりもルナの方が厄介だと判断した。それは戦闘力だけであれば間違いではない。
「情報収集に力を入れていた割には最新情報への関心が薄いんですね。アーケロンを連れた魔物使いって海王国では有名なんですが」
「ああん?」
何気なく言った言葉に若干相手の神経を逆なでするような言い方を混ぜる霜葉。相手も少々眉が上がるが、それ以上に無視できない言葉があった。
「アーケロンを連れた魔物使いだと?」
さすがにこの情報は海賊団頭にしてもすぐに理解できなかった。無理もなし。目の前の魔物使いはこの世界の一つの常識と言う物を粉々に破壊したのだから。
「あのアーケロンはてめぇの差し金か!」
「聞く意味あります? 状況からしてたまたま海の中に居たよりも確実な話では? 何よりうちの子は海賊しか攻撃してませんし」
話し方が絶妙に相手を小馬鹿にしているため、さすがの海賊団頭も眉をぴくぴくとさせている。
「思っていた以上に賢い海賊と考えていたんですが、そうでもなかったですね」
「ずいぶんと言うなクソガキが・・・」
「クソガキ以下な犯罪者に言われても・・・はっ」
「てめぇ!?」
さすがの頭もクソガキと称した者に鼻で笑われては何もしないことはできず、霜葉に対して銛を突いた。
「銛の使い方が下手ですね」
その攻撃を霜葉は余裕で持っていたナイフで弾いた。
「意外と力がありやがる!?」
「あなたの筋力が落ちたのでは?」
「ぬかせ!!」
その会話を合図に霜葉と海賊団頭の戦闘が本格的に始まった。
霜葉と海賊団頭との戦いは、どちらも一歩も譲らぬ互角の戦いのように見える。しかし、戦闘に詳しいものが見れば異常だと気付くだろう。
海賊団頭は戦闘系のジョブ【海賊船長】 海賊行為を繰り返し一定数以上の部下がいて初めて就けるレアなジョブであり【魔物使い】よりも近接戦闘に秀でている。現在は銛を武器として使っているのでジョブやスキルの補正はないが、それでも本来なら【魔物使い】と互角などありえない。
この状況の理由は三つある。一つは海賊団頭が霜葉以外の存在にも警戒しているから。それはルナだ。ルナはカルネ王女の真上で海賊団頭を警戒している。
カルネ王女の護衛でもあるが、海賊団頭はルナに対して最大限に警戒している。そのせいで霜葉に対する攻撃も軽めにして、致命的な隙を晒さないようにしているのだ。ルナが攻撃してきたときに反撃や回避ができるように。
二つ目は単純に霜葉の身体能力が高いから。カルネ王女を助ける前に霜葉は【フルブースト】を自身に付与している。そのおかけで海賊団頭の軽めの攻撃に対して、十分すぎる対応が可能なのだ。
最後の三つ目は、霜葉の防御や回避の技量の高さだ。霜葉はガウェインから、防御や回避の技術を学んでいるのだ。【箱庭世界】で休む時にガウェインから教えを受け、時には模擬戦などでコツコツと今日まで積み重ねてきた。
なぜ、そのようなことをしていたかと言うと・・・・
『防御や回避の技術を学びたいと?』
「うん。そう言う技術を持っているのはガウェインくらいかなって」
『確かに、元騎士の人間でありますので持っておりますが、なぜそれを学びたいと?』
「僕たちの最大の弱点は僕自身だから」
『・・・』
「これから先に敵対する者たちの中に、それを理解して僕を狙う相手は絶対に現れる。その対策の一つだ
よ」
『防御や回避に限定した理由は?』
「今から僕が攻撃の技術を学んでも、状況を変えるほどにならないと思うんだ。だったら仲間の多さを考えて、仲間が助けてくれるまでの時間稼ぎの技術を学んだ方がいい」
『なるほど・・・いいでしょう。しかし、教える以上こちらも半端にするわけにはまいりませんぞ?』
「もちろんだよ。覚悟しているし、簡単に身につく物じゃないのもわかってる。でも、そう言う状況になってからじゃ遅いんだ」
『同意見です。ではまずは知識からですな』
そのようなことがあり、霜葉はガウェインから知識と技術をコツコツと学んできたと言うわけだ。それを商王国から今日まで続けている。
しかし、一見すると互角なこの戦いだが・・・霜葉にとってはかなり神経を使い精神的疲労がどんどん蓄積している。
霜葉自身が命のかかった戦いそのものが初めてであり、相手がかなりの実力者。戦いの場に居た経験は豊富ゆえに何とかなっているだけ。さらに言えば霜葉はある策を行っている真っ最中。その緊張もある。
やがて、お互いの武器が大きく弾かれた時に両者ともに離れる。その際に霜葉は大きく息を吐き呼吸が荒くなる。それを海賊団頭は見逃さなかった。
「はっ! 結構やるようだが、どうやらギリギリみたいだな!?」
「そうですね・・・だから【魔物使い】の冒険者らしく戦います・・・ルナ!」
「ホー!」
「くるか!?」
霜葉が言葉を発すると飛んでいる魔物が声を上げる。それを警戒していた海賊団頭はルナに意識を集中させるが・・・・
「ハァ!!」
実際に攻撃してきたのは動けないはずのカルネ王女だった。魔物が攻撃してくると警戒していた頭は突然の事態に全く動くことが出来ず、四肢を深く切られた。
「がぁ!?!?」
これにより海賊団頭はその場に倒れ、持っていた銛を落とす。すぐさま霜葉がその銛を拾いアイテムボックスにしまう。
「て、てめぇ!!! なぜ動ける!? あの痺れ薬の効果はまだ解けないはず!」
「ああ、ソウハ殿が回復薬を使用したと同時に【回復魔法術】で回復してくれてな」
「なぁ!? そんなレアなスキルを!?」
これが霜葉が実行していた策だ。カルネ王女をわざわざ回復薬で回復し、ルナを警戒させてその間に痺れは【回復魔法術】で回復。同時に小声で「隙を作るからその時に攻撃を」と伝えたのだ。
「ふぅ~いろいろ緊張しました・・・やっぱり僕は仲間を支援するのが向いてます」
「ホ~♪」
慣れないことをしてさすがに疲れた霜葉。そんな霜葉をねぎらうためルナは肩に乗り頬ずりする。
「カルネ王女! ソウハ殿! ご無事ですか!?」
その時、数人の騎士たちが駆けつけてきた。
「ソウハ殿のおかげで無事だ! さらに海賊団のボスも捕らえた! そちらは何か報告はないか?」
「はっ! 先ほど囮商船の冒険者たちが合流しまして、あと少しで海賊たちを駆逐できるでしょう!」
「それは朗報だ! 我々はボスを縛り上げこの船を連中を始末するぞ! ソウハ殿たちはこのボスの見張りとけが人の回復をお願いしたい!」
「わかりました」
この後、数分後に海賊たちは殺されるか捕まるかのどちらかとなりこの戦いは海王国側の勝利となった。
海賊団を壊滅させた海王国船団は、囮商船と軍船二隻でとらえた海賊たちの大半を海王国首島へと連行し、残りの軍船は海賊団のアジトの調査をするために乗り込んだ。
なお、その調査にはカルネ王女と霜葉たちも参加している。理由としては海賊団頭やその側近もアジトの調査に連れてきているからだ。
アジトになにがあるのかの尋問と海賊団頭の実力を考えて、海王国側の実力者であるカルネ王女と霜葉たちにはいてもらった方がいいと判断された。なお、明日には調査のために増員の手配を首島に帰った者たちに頼んでいる。
現在、霜葉は海賊団アジトの船着き場に降りて白夜たちを褒めながら、他の船で戦闘をしていた騎士たちを回復している。カルネ王女は騎士たちと海賊団頭の見張りと尋問を行っている。
「はい、回復しました。念の為この薬も飲んでください」
「ありがとうございます」
霜葉から手渡された造血薬を受け取る騎士たち。
「しかし、この船着き場・・・結構しっかりとした造りじゃないか?」
「たしかにな? 無法者がアジトにしているとは思えないほどだ」
「結界魔道具の件もあるし、これは確実にでかい協力者がいるな」
今しがたの騎士たちの会話を聞いて霜葉は、周りを見渡す。ここは海賊団アジトの船着き場なのだが、かなりしっかりとした木製の造りで職人のこだわりなども感じられる。
さらに船着き場の周辺には、見張り台や柵などの防衛をするための物。倉庫や大工の作業所まであり、あまりにいろいろと必要な物がそろいすぎている。犯罪者だけで用意できるものか疑問に思うほどに。
「そのために尋問も早々に行うことに決めたが・・・」
「頭の方はかたくなに何もじゃべらないそうだ」
「側近たちも頭が何者かわからない者たちと取引していたことは知ってはいたが、肝心の正体は知らないようだ」
どうも、海賊団頭個人の伝手らしく頭もそれを側近にも詳細に説明はしていない様子。
(海賊問題は解決したようだけど・・・まだまだ根が深そうだね?)
『そのようですな・・・国としては安心できないでしょうが、今すぐ問題が深刻化するとは思えませんし、今は問題の一つを解決したことを喜びましょう』
(そうだね・・・)
国の民にとっては、直近の危機が取り除かれたわけで知らせを受けているであろう首島では喜んでいるだろう。
などと霜葉が考えていると、アジトの奥を調査していた騎士たち一部が戻って来て・・・
「すみませんがソウハ殿。お力を貸していただけませんか?」
「僕ですか?」
霜葉はなぜ自分が呼ばれたのかわからない。白夜や十六夜でもなく霜葉自身に力を貸してとはどういうことか。
「実は・・・海賊どもは憂さ晴らしと称して魔物の群れを三種類ほど捕らえて、嬲っていたようで」
「なんですって?」
「捕らえた一般人などは頭が人身売買をするために、傷ものにするなと厳しく見張っていたようで。それを守らなかった部下は容赦なく斬り捨てたと」
なんとも胸糞の悪い話だ。その為、部下の憂さ晴らしは魔物相手の狩りや捕らえた魔物の嬲りだったようだ。
「そのうちの二種類の群れは長を筆頭に抵抗が激しく、もっぱら被害を受けていたのは最後の群れだったようですが」
「最後の群れは抵抗しなかったんですか?」
「と言うか・・・長が真っ先に逃げ回っていたようです。その様子が海賊どもの残虐心に火をつけてしまったようで」
なんとも情けない話である。とにかくそう言うことならと霜葉たちは騎士の案内でとりあえず抵抗の激しい群れに会いに行くことに。なお、同行者にいつものメンツ&ガーベラと鈴蘭が付いてきた。
ガーベラは霜葉に報告していたので話が気になった。鈴蘭は三日月とじゃれていたので一緒に行きたいと言って。ガーベラは白夜の背に乗せてもらい、鈴蘭は霜葉に抱っこされている。
そして一行が問題の場所に到着すると・・・
「ちゅちゅーん!!」
「ぺぺーん!!」
バレーボールくらいの大きさのスズメさんとフンボルトペンギンに酷似した生き物が羽を広げて威嚇していた。ここは絶対に通さないっとわかる構図だ。彼らの後方には同じように通せんぼしている同胞が複数。
さらに最後尾の行き止まりには、彼らを小さくしたおそらくは子供が震えて母親らしき者たちに庇われていた。
「彼らが?」
「ええ、抵抗していた群れだと思われます」
「我々が近づいても嘴で突いて攻撃します」
「幸い、ソウハ殿の付与のおかげでダメージはありません。しかしながら抵抗が激しく、調査が出来ません」
確かに。彼らの横にも通路があり、彼らの前を通らないと調査ができない。
「魔物なんですし倒すことはしないんですか?」
「いや~最初は考えたんですが・・・」
「子供を守るためにその身を顧みず、必死な姿を見ると・・・」
「「「あと、彼らの方が海賊どもなんかより好感が持てて」」」
「うん、すごく納得しました」
さきほどまで海賊どもと戦っていた騎士たち。騎士として見習いたい姿にも共感したかもしれない。
「そんなわけで、ソウハ殿なら彼らの警戒を解くことが出来るのではないかと・・・」
「う~ん・・・ちょっと難しそうですけどね・・・」
霜葉たちがこの場に来て、霜葉個人は気になるようで群れの魔物たちはそわそわしているが、白夜たちが怖いのか緊張しつつ警戒を解かない。霜葉がどうした物かと考えていると・・・
『主様。私が説得しましょうか?』
(ガーベラが?」
『はい。鳥の群れはともかくあちらの群れは見たことがあります。我々と同じく戦闘は回避して生きてきた者同士。話だけでも聞いてくれるかと』
(お願いしていいかな?)
『お任せを』
『スズランも手伝う~』
そう言ってガーベラと鈴蘭を下ろして二人はペンギンさんの群れへと向かい、挨拶を交わす。あちらもガーベラたちに見覚えがあったようで騎士たちよりは警戒を解いていた。
そして始まるアザラシとペンギン&スズメによる鳴き声説得会。可愛らしい見た目の三匹が話し合いをしている光景は、可愛いもの好きなら悶絶待ったなし。むしろ失神か気絶しちゃうかも?
とりあえずはこの場はガーベラと鈴蘭に任せることにして、念の為に監視役の騎士を二人ほど離れたところで待機。残りの騎士たちに案内されて霜葉たちは最後の群れのところに向かう。
「もっとも、もうその群れは無事なのは長一体しかいないようですが・・・」
「そうなんですか?」
「正確に言えば、他にも居ますが長以外怪我をしています。中にはいつ死んでもおかしくないよう怪我を負っている個体もいます」
その話を聞いて、霜葉は怒りの感情を意識的に抑えることに集中することになった。騎士たちも霜葉が怒りを抱いたことには気づいたが、指摘や言葉で確認はしなかった。
案内され着いた場所は広い食糧庫のようだ。しっかりと整理され大きな木製の棚が複数あった。かなり頑丈そうな造りで梯子もいくつか用意されていた。
そんな棚の一番下に件の群れの魔物がいたが、それを見て霜葉たちは驚いた。その群れはガーベラたちと同じスマイルシールだった。しかし、目に見える個体はすべてケガを負っていた。
大きな切り傷に打撲跡が主で、中にはもうすでに動いていないものも。それらを見渡していた霜葉は棚の一つに震える尻尾を見つけた。
(君がこの群れの長?)
『な、何者! この声は!?』
(人間だよ。ここに居た人間たちをやっつけに来たんだ)
『それは本当か!?』
(うん。もうすでに倒した後だよ。とりあえず群れの皆は回復するね)
とにかく話をするために霜葉は範囲回復魔法術を使う。するとまだ息があったスマイルシールたちが起き上がり、家族同士喜んだ。同時に家族を亡くした者たちは涙を流していた。
(みんな、ここに居た人間は僕たちが倒したからもう安全だよ。ここに居る他の人間たちはちょっかいや邪魔さえしなければ何もしないから)
『なんと!? それはありがたい!! ならばこんなところさっさと立ち去るぞ!』
長がそう言うが、群れの皆はそんな長に対して怒りの眼を向けている。一気に場が緊張に包まれる。
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