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だって私は、真の悪役なのだから。(改訂)  作者: wawa


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リリー14歳〜

 

  うちにおやつパーティーをしに来てたので、そこそこのお金持ちだとは思っていたが、まさかの王族だったグーさん。


  そんなグーさんと距離を置いて一年が過ぎた。私の突然の王族無視に、初めはパピーやマミーが騒いだけれど、今はなんとなくうやむやになっている。


  子供の事だからね。そっとしておいてよ。多感なお年頃なの。


  そんな言い訳が出来ないのが王族とのお付き合いなのだということも、なんとなくわかっているけどね。それは向こうも事情があるみたいで、今もまだ、たまーにグーさんから手紙は来るよ。


  でも私は既読スルーしてる。


  読んだあとに、暖炉にポイってしてる。


  この失礼を積み重ね、やっぱりダメだね悪役令嬢はって、向こうから婚約破棄してもらおうと思っている。

 

  死亡フラグとは積極的に関わりたくないからね。


  そんな私のネガティブを家族たちはどう見ていたのか、なんとパピーが、外出に許可を出してくれたのだ。



 **



  私十五歳。 初めて街へのお出かけデビュー!


  ふっふっーふふーふー、

  ふっふっーふっふー!


  口笛を吹きつつ、あの丘を越えたんじゃない? と思える旅路。お家からいつも見ていた野山を馬車で進むこと三時間、ようやく街が見えてきた。


  うきうきが止まらない私は、独りぼっちで馬車の中、吹けない口笛でテンションアップ。


  ふっふっーふっふっー、

  ふっふっふっーふっー!


  ぴーとは鳴らない空ぶかし。でも構わない。ここには私しかいない。マミーよりもマナーに厳しいクールなお兄さまも、意外とマナーにうるさいヤングレタお兄さまも、ここにはいない。


  連れは馬車のお外にお馬に乗って付いてくる、目つきの悪い警備員たちだけ。


  ムフッ!

  心強い!


  ツッパリにからまれたって、うちの警備員は強いんだから、なんとかなるなるー!


  カツアゲだって、怖くないよ!


  悪役が恐怖で支配する荒廃した街に、果たしてスィーツショップはあるのだろうか? だが初めての異世界旅行、いつもと違う景色に気分は揚がるぅっ!


  そして到着。高まる気分で踏み込んだ街の中、西洋風の石畳。西洋風の果物屋さん野菜屋さんの出店通り。待ち合い広場には水しぶきが光る大きな噴水。



  なんか、いいじゃん…。



  想像では、枯れ葉が舞う悪役が仕切る悪溜り、そこには厳ついおじさんや不良たちがトゲトゲの棒切れを持ってうろうろしていたのだが、現実はそうではなかった。思ったよりも、普通の観光地みたい。


  スィーツショップ、あそこに発見…。


  ザワザワ、ザワザワ…。


  あれ? これは、もしかして?


  むしろ人相の悪い子供警備員と、人相が凶悪な大人警備員に連れられて、道を歩く私だけが悪?


  顔に傷、黒々とした制服を身に纏う彼らと、その中で、唯一お出かけ用の水色ワンピを身に纏う、違和感と狂気を丸出しにした私を見て、通行人たちはあの波のごとく割れていく。


  モーゼ感、高まる。


  私たちが進むたびに、恐れ戦き人垣は裂けていく。そんなこの道を、どうどうとふんぞり返って歩きたいって思う? いや思わないよね。むしろ逆に、普通に考えたら恥ずかしいよね。


  でも私は悪役だって自覚があるから、人の目もはばからずにどうどうと真ん中を歩いてみる。


  さすが過去世も現在世も悪役な私。中央を、恥ずかしげもなく闊歩する。慣れてくると内心では、自分がモーゼなのかと錯覚してしまうほど、おごり高ぶっていた。


  そんなモーゼ中、ある路地から、大きな音が耳に届いた。



  「うるせえっつってんだろ!! 誰が口開いていいっつったんだ!!! ぁあんっ!?」



  連続する鈍い音と甲高い苦鳴。


  「…………」


  聞きなれたその音に私は立ち止まり、薄暗い路地に注目する。


  初めての街ぶらで、異世界の下町観光を満喫せず、屋台のB級グルメを堪能する前に、薄暗い路地を突き進む。そしてほどなく目的のものを発見した。


  『…やっぱりね』


  そこには子供を連れた、裕福な服装の肥ったおじさん。見た目も何もかも、


  「気に入らないわね」


  「?」


  見ず知らずの私の気に入らないわね発言に、気に入らないおじさんは「はぁっ?」て顔したけど、お供の警備員たちの雰囲気に、彼は「はぁっ?」て声に出さなかった。


  でもおんなじことを思っていただろうね、背後の皆さんから、なんとも言えない困惑した空気が伝わってきている。


  私はなぜ気に入らないおじさんに大注目してるかって?


  だって気に入らなかったからだ。


  理不尽な因縁つけるって、これは悪役の常套句でしょ?


  この我がままでネガティブなロックオンに、自慢の悪役集団、お供の保護者たちはきっとドン引きしている。


  でも私、せっかくの悪事の行使のチャンスを逃さない。なのでお供に命じておじさんを路地から引きずり出して、ある実験を試みることにしたのだ。


  騒ぐおじさんを黙らせる、


  過去世で考えてみた犯罪計画の一つ。


  でも過去世で一般人だった私には、想像することだけで、実行出来なかったある構想。


  それはね?


  気に入らない奴をある場所に閉じ込めて、どうなるか様子を見てみる実験。


  怖いでしょ?


  なかなかのサイコパス。


  でもせっかく強権力を手に生まれてきたのだもの。権力と金、人相の悪いお供たちの最大フル活用は、今まさに。


  親の七光りという後光を放つ私は、現在世では間抜けな悪役ではなく、賢い加害者にならないといけないのだ。


  知ってる? 皆さま。悪役から加害者になるのなら、経験値レベルアップしないといけないのよ。


  だがしかし、サイコパス実験を始めて数ヶ月、その結果、街人が私にドン引いただけで、閉じ込めたおじさんには変化なんか無かった。これは長期戦を覚悟しなくてはならない。


  そしておじさんの身内からは、当たり前のようにサイコパスを非難する声が上がっていることは、風の噂で聞いている。


  まあでも、悪の中枢の我が家にはノーダメージだったらしいのだが、ノーダメージだったお陰で、パピーとマミーからは叱咤も激励もされなかった。


  だけどこのレベルアップのチャンスを利用した私に対して、お供の保護者たちは明らかに変な顔をして私を見るようになった。スーパークールお兄さまと、ヤングレタお兄さまを見る目とも違う。なんか変な目で、皆は私を見ている。


  そしてついに。


  「お嬢様、何故こんな面倒な事をなさるのですか?」


  警備員師匠からの、ダメ出しをくらった。


  昔、気になる木から降ろしてもらったという大恩がある警備員師匠。その恩人に、ダメ出しをくらった。


  これは悪の組織の中枢に与する彼らに、認められなかったということだろう。どうやら私の加害者レベルアップは失敗したらしい。


  でも諦めないよ。


  失敗は成功のもとってあるあるだよね!


  でもなんでそんなに加害者レベルアップしたいのかって?


  悪役はいつも、やっつけられることだけが決まりごとだから。


  それにあと一年で十六歳だから。少しでもレベルアップして、後々に現れる悪役の敵である主人公、ゲーム本編ストーリーをなんとか素通りして、十七歳のハッピバースディしてみたいじゃない?


  だって十六歳の過去世の私は加害者に成りきれずに、間抜けな悪役で終わってしまったのだから。



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