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だって私は、真の悪役なのだから。(改訂)  作者: wawa


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リリー16歳⑦〜

 


  「もうお身体は大丈夫ですか?」


  グーさんだ。


  「……」


  「何処を見ているんですか?」

 

  やばい。主人公を探していたら、挨拶をスルーしていた。彼女の居場所確認は、もはや癖になっている。


  「ごきげんよう」


  「…………」


  あ、忘れてた。


  「王太子殿下に、黒の安息を」


  「…………」


  あれ? どうしたの? 無視するの?


  久しぶりに会ったグーさんは、何処となく王太子風を吹かせてる。私が少し挨拶間違えただけで、真顔になって無視しなくたっていいんじゃない?


  学院に来てからは前より社交性が増したと思ってたのに、沈黙のグーさんが復活してしまった。


  その後はこっちが気を遣って話しかけても、やっぱり会話が続かない。しかも子供の時とは違い、ほんのり微笑もなくなった。


  (微妙……)


  グーさん、そういえば王太子就任パーティー、見送られたって今日初めて知ったんだよね。主人公もあの日から姿を見てないって、黒色メンバーズに聞いたよ。


  てっきりアフターエピソードしてると思っていたけれど、でもほら、そこは攻略対象とヒロインとの太い繋がりにより、何かしら話は進んでいるかもしれない。


  「……」


  でもグーさんて、自発的に自分の話はしないから、上手く誘導して聞き出さないといけないんだけど、今日は何だか、いつもより絡みづらいな…。


  まさか四番目から王太子にクラスチェンジしたからって、数年ポイした既読スルー、今さら追及するつもりじゃないよね……?


  「グランディア殿下、王宮から使いが来ていますよ」


  グーさんと気まずく見合っていると、救いの神が現れた……と、思ったら違った。


  かわいくない左側(アトワ)の白ウサギだった。


  奴の登場に、挨拶もそこそこに行ってしまったグーさん。ほっと一息つけるかと思っていたら、ウサギは一緒に去らずにこっちを見てる。


  「……フッ」


  「??」


  今のって、私と目が合って、フンッて鼻息で笑ったの?


  これって、あれだよね?


  絶対、喧嘩売ってるよね?


  って顔でつっ立っているから、もちろん買ってあげる事にした。



  「ごきげんよう。お名前は、なんだったかしら?」



  真正面でメンチ斬る。わたくし、背丈では負けるけど、その他は全て勝っているので問題なし。


  ここには今、頼もしい黒色メンバーズはいない。グーさんがやって来ると、気を遣って皆は少し離れてしまうから。


  だけど私、左側(てき)なんて恐くない。一般人の過去世ではあり得ないほどの、大きな権力を持つファミリーの、笠をしっかり着ているのであります。


  「名乗るほどの者ではない。覚えられぬ者に、与える物は何もない」


  ……おや、こいつ、また私を馬鹿にしやがった。


  「確かに。印象の残らない者ほど、聞いても覚えられないものよね」


  見た目に個性的で印象に残りすぎるウサギキャラ。でもこの話は見た目の印象ではない。貴方とのストーリーが、全く思い出せないのです。


  きっと思い出せないありきたストーリー。


  他のゲームと混同して、全然きゅんしなくてスキップし過ぎたありきたり…。


  私、きゅんするキャラとは、出来るだけスキップしないで話を聞いてあげる派だった。


  ウサギは、絶対に、私の推しではない。


  ていうかさ、そういえば、ゲーム世界だってことは分かったけど、私の推し、居るのかな?


  いいなと思ったからプレイするのが乙女ゲームなわけだけど、今のところ胸きゅんキャラに出会ってない。


  カッコいいって常に思っているのは、身内びいきの兄たち………………。


  ハッ! まさか!


  私、兄貴推しだった?


  生まれた時から観察してるから、今さらきゅんなんてしないけど、実はグレイお兄様が小さな動物が大好きだとか、メルお兄様がちょっと潔癖なんじゃない? てくらいキレイ好きだってことに、フフッて影から観察していた事はあったけど、きゅんて何だったっけ? ってくらい彼らにキュン死にの経験もしてないけど……。



  兄貴と、ハッピーエンドしてる可能性が大。


  ヤバいな……。禁断じゃん……。



  どっちだろう。どっもあり得るイケメンお兄様ズ。でも待って待って、そうだった、主人公(ヒロイン)悪役(わたし)じゃなかった。


  そしたらお兄様たち、あのフェアリーエルちゃんと、あれやこれやあーなって……?



  (…………やだーーーー…………)



  あの主人公に、うちの兄貴たち、取られるの、やだーーーー。


  私、ブラコンだったのね。気づいていなかった。


  兄弟と恋の禁断するつもりは無いんだけど、でも、なんか兄貴たちがフェアリーとなんて、やだーーーーっ!


  「……」


  はっ、ちょっと放置していた敵の事。それから少しバチバチしてみたけど、なんかこの人ってさー、思ったよりも、よく喋るよね。


  ウサギって喋らなくてフンフンするのが可愛いのに、なんかスッゴい見た目に反してよく喋る。そういえば確か、グーさんの親戚のはずだよね?


  これじゃあんまり喋らない、グーさんの方がウサギキャラが似合うかも。


  その後もあれこれ突っかかって来たけれど、もちろん全て、言い負かしてやりました。


  強気でしょ?

 

  だって私は、もう悪役は卒業したので、攻略対象なんて怖くないのよ。


  ……主人公(ヒロイン)だけはトラウマなので、卒業後も出来るだけ関わり合わない様にするけどね。



✳✳

 


  そういえば、セオさんの姿を見かけていない。


  私が休学して直ぐに、彼も長期休暇に入ったそうだ。そしてまだ、冬季になっても出勤出来ずにいる。


  心配。


  彼は今、教会に住んでいるそうなのだが、お見舞いに行くのは強く止められている。


  (あれ……?)


  昼食後に仲間たちとぼんやりしていたら、中庭にピアンちゃんの姿を発見した。


  全然顔を見ていないし、護衛の皆様に尋ねても知らないって言われるだけだったピアンちゃん。


  怪我で療養中に会えなかったのは寂しかったけど、お家の事で忙しいだけかと思っていたけれど…。


  少し遠くてよく見えないが、彼女は深緑色の別の友人とお喋りしている。


  そうだよね、友達は私だけじゃないよね。


  ピアンちゃんの当たり前の交遊関係に、学院での友達が彼女しかいない私はちょっと落ち込んだ。



 **



  あれから数日経ったけど、主人公の姿は全く見ていない。


  彼女とグーさんの噂話も聞かないし、どうなっているのだろう。


  (ヒロインと婚約したとか進展あれば、もう少し騒がれたっていいはずなのに)


  前と変わった事といえば、左側(アトワ)の白ウサギと出逢うたびにメンチ斬り合っている事と、お昼になると中庭で、ピアンちゃんがお友達と二人でいる姿をよく見かける様になった事。


  ピアンちゃんは相変わらず私に会いに来てくれないし、こっちから深緑色の教室に乗り込む事は、仲間たちに駄目だと言われて行っていない。


  なんか黒制服の私が深緑制服の教室に乗り込むと、ピアンちゃんの方が困るから、止めときなさいってセセンテァ先輩に説明された。


  別に規則とかではないけれど、ピアンちゃんに迷惑になるよって言われたら、お友達親密度が安定していない今、何だかんだ余計に行きづらい。



  「こんな所で昼食を?」


  また出た。お喋りな白ウサギ。



  「はぁ!?」って雰囲気の仲間達をまぁまぁと落ち着かせて、奴が現れたら私が全面にしゃしゃり出る。


  だってこいつ、左側(アトワ)の跡取りだって、エレクトくんが教えてくれてたの、後で思い出したんだよね。


  てことは、うちの上の兄貴と同じ立場。


  ならここは、同等権力を持つ、私が仲間たちを護らなければならないのよ。


  「よければご一緒されます?」


  うらやましければどうぞって、ご招待して差し上げた。


  左側(やつら)がお貴族様専用の個室でしか食事をしない事はわかっているの。大衆食堂というざわついたフードコートには簡単に馴染めない。注文の仕方もわからない、超初心者だってお見通しなんだからね。


  「…………」


  ウサギ、くるりと背を向け立ち去った。


  勝利に内心でガッツポーズした私。


  そうだよね、白ウサギが現れてからは、仲間たちもピリピリしているし、私も会う度にメンチ対決しているし、あいつにピアンちゃんが目をつけられない様に、やっぱり少し距離を置かないとね…。


  再び中庭を見下ろすと、もうピアンちゃんとお友達の姿はなかった。


  カタン。


  「?」


  「それで? 私を招待したからには、どんな持て成しをしてくれるんだ?」


  マジかよ。セルフオーダー突破して、自分でドリンク注文出来たのかよ…。


  まさかの白ウサギのカウンターに少しだけよろめいたけれど、持ち直した私は、なんとか引き分けでこのステージは終わらせたの。


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