エピック157【皇配候補との意思確認など】
儀式当日、雲上に浮かぶ儀式神殿は清められた空気に包まれ、厳粛な雰囲気に満ちていた。祭壇の周囲には、儀式の正当性を証明する見届け人たちが整列している。神官団の大司教を筆頭に、各国から招かれた司教、司祭、牧師、祈祷師たちが、それぞれの役割に応じて静かに待機していた。だがその中に、一人だけ周囲とは雰囲気の異なる人物が紛れ込んでいた。深いフードで顔を完全に隠し、体を少し屈めるようにして目立たない場所に立つその影は、周囲の緊張感とはまったく異なる、冷たい悪意を秘めていた。――心の中で計画を反芻するように、その人物は静かに誓いを立てる。
「(タイミングは最初の意思確認の宣言が終わった直後だ。その瞬間、この神殿の要所に密かに仕掛けた魔力爆弾を一斉に起動させる。混乱が広がった隙に、守りの薄い皇配候補たちから順に排除し、最後に主役であるジョンアイデルに止めを刺す――これでミクスタッドの未来は闇に葬られる)」一方、祭壇の正面にはジョンアイデルが儀式用霊衣に身を包み、静かに立っていた。そして彼の左右には、それぞれの正装をまとった皇配候補たち――クレティア、アスモディン、ビューネ、クラミツハ、ニュクス、彩女、ベスティアン、クロノ、アヌビス、ヨグソトース、カニャッツォ、ジュダが、凛とした表情で並んでいる。 大司祭が杖を掲げ、神殿全体に響くような荘厳な声を上げた。
「では、皇位継承儀式の最初の段階、皇配との意思確認を執り行う! 互いに共に歩み、国と民のために力を尽くす意志があるか、ここに明らかにせよ!」緊張感が高まる神殿の中、見届け人の列に紛れた影の指が、密かに魔力の起動の準備を整える。だがその瞬間、ジョンアイデルの虹色の瞳が、まるで闇の中の小さな光を見つけるかのように、フードの人物の方へとわずかに向けられた。ハキハキと、表の厳粛と裏の陰謀が交錯する!!神殿に荘厳な空気が満ちる中、皇配候補の一人であるカニャッツォが、ふと鼻をひくつかせた。鋭敏な感覚が、普通では気づけないわずかな違和感を捉え取ったのだ。彼女はすぐに体の向きを変え、隣に立つジョンアイデルに顔を近づけ、周囲に聞こえないようギャル口調で小声で告げる。
「なんかね、若干だけど儀式とは無関係の匂いが漂ってるんだわ。これ……魔力で作られたボム特有の匂いだわ、もしかすると、前に話に出てたマリス・ソムニアの仕業かも」ジョンアイデルは表情を変えず、まばたき一つでその報告を受け止めた。虹色の瞳が一瞬だけ神殿内を静かに見渡し、魔力の流れに異常がないか探る。
「そうか……ありがとう、カニャッツォ。まだ起動はされてないようだな」
彼は声のトーンを変えず、心の中で周囲の皇配たちにも簡単な念話で状況を伝える。
――「爆発物の可能性あり、警戒せよ。まずは儀式の流れを崩さず、相手の出方を待つ」一方、見届け人の列に紛れたフードの人物は、まだ自分たちの計画が露見していないと思い込み、指先に魔力を集中させる。
「(まだ気づいていないようだ。大司祭の宣言が終わった瞬間、一斉に起爆すれば――)」その時、ジョンアイデルは大司祭に向けて軽く手を挙げ、穏やかながらも神殿全体に響く声で告げた。
「少し待ってほしい。この場の安全を確認するため、儀式の開始を少しだけ遅らせてもらえないだろうか」
突然の申し出に周囲がざわめく中、ジョンアイデルの周りには柔らかな虹色の光がふわりと広がり始めた。これは防御結界であると同時に、魔力の異変を探知し、封じるための波動でもあった。フードの人物の顔がわずかにゆがむ。
「(クソ!まさか、このタイミングで……?)」ハキハキと、危機の予感を察知し先手を打つ!!ジョンアイデルの合図と同時に、待機していた警備兵たちが一斉に動き出した。事前に警戒態勢を敷いていた彼らは、専用の探知魔導具を手に神殿内を細かく点検していく。
「殿下、こちらで発見しました!」
「こちらにも魔力反応があります!」次々と報告の声が上がり、やがて詳細な状況が明らかになった。
儀式場の柱の陰、祭儀を行う講壇、神聖な品々を供える聖餐卓、重要な文書を置くクリーデンス・テーブル、経典を立てる聖書台、そして儀式で用いられる洗礼盤の下――いずれも儀式の流れの要所に、魔力を込めた小型爆弾が密かに仕掛けられていたのだ。警備責任者が駆け寄り、丁寧に報告する。
「すべて魔力探知に反応しました。まだ起動の段階には至っておらず、安全に無力化できる状態です。数は合計12個、いずれも周囲に大きな被害を与える威力のものです」
見届け人たちは驚きの声を上げ、神殿内に緊張が走る。一方、列の中に紛れていたフードの人物は、計画が露見したことに顔をゆがめ、身を翻して逃げ出そうとする。だがその前に、ジョンアイデルの虹色の魔力が柔らかくも確かな壁となって出口を塞いだ。
「逃げるつもりか。マリス・ソムニアの手先だな」カニャッツォも一歩前に出て、鋭い目つきでその人物を睨みつける。
「やっぱりボムの匂いは間違いなかったわ。神聖な場所にこんな悪さをするなんて、最低だわ」警備兵たちが取り囲み、フードを外すと、そこには見知らぬ男の顔が現れた。彼は抵抗しようと魔力を込めるも、周囲に張られた結界に阻まれ、力を失って膝をついた。ジョンアイデルは冷ややかながらも落ち着いた声で告げる。
「儀式を妨害し、民と国の象徴たちを傷つけようとした罪は重い。しかしこの場は神聖な儀式の場だ。まずは安全を確保し、その後で詳しく話を聞こう」爆弾は専門の魔術師たちによって次々と安全に回収・無力化され、神殿内の緊迫した空気は少しずつ緩和されていった。見届け人たちも、皇帝候補の冷静な対応に敬意を抱き始めていた。ハキハキと、陰謀は未然に防がれる!!爆弾が無力化され、神殿内の緊張が少し和らいだ――その直後、空気がざわりと震え、いびつで重苦しい魔力が辺りを包み込んだ。
「なんだ、この魔力は……!」「空間が歪んでいる!」見届け人たちが驚きの声を上げる中、祭壇の横の空間が黒く波打つように歪み、そこから一柱の存在が姿を現した。全身を覆うのは黒曜石のような深い光沢を放つ肌。背中には漆黒の蝶の羽が大きく広がり、右手には骨で柄が作られた禍々しい刀を携えている。そして左手はまるでジャガーの獣手へと変貌し、鋭い爪が冷たく光っていた。まさに女神と獣の特徴を併せ持つ、異形の威容を放つ存在であった。捕らえられたばかりの男は、絶体絶命の状況にもかかわらず、不敵な笑みを浮かべてハキハキと言い放つ。
「ふん、保険をかけておいて正解だったぜ! 魔力爆弾が失敗しても大丈夫なように、この場には別の儀式を施しておいたのだ! 見よ、これこそ邪神連合に属する神の一柱――イツパパロトル様だ!」禍々しい雰囲気をまとったイツパパロトルは、ゆっくりと宙に浮き、赤い瞳で一同を見下ろす。低く響く声が神殿内に重く染み渡った。
「……我を呼び出したのは、お前たちか? この地に新たな王が生まれると聞いた。ならばその未来、我が闇で閉ざしてやろう」警備兵たちが即座に武器を構えるが、イツパパロトルが軽く手を振るだけで、黒い魔力の波が走り、彼らは衝撃で後方へ吹き飛ばされてしまう。
「神格そのものの力……普通の結界では防げない!」フィリアが険しい表情で警戒を高める。 ジョンアイデルは一歩前に進み、虹色の霊衣の裾が風になびく。穏やかながらも確固たる意志の声で問いかける。
「邪神連合か……マリス・ソムニアの背後に、そんな存在がいたとはな。だがこの場は、民の平和と未来を誓うための神聖な儀式の場だ。闇の力など、ここには通さない」イツパパロトルは唇を歪め、獣のような笑い声を上げる。
「口だけは達者なようだ。ならば――その身で、我の力を受けてみるがいい!」黒い蝶の羽が一斉に羽ばたき、空気がさらに重く凍りつくような緊張感が神殿全体を包み込んだ。ハキハキと、儀式の場に闇の神が降臨する!!邪神イツパパロトルの禍々しい力が場を支配しようとする中、皇配候補たちは一斉に前に進み出た。最初にクラミツハが凛とした声でハキハキと言葉を紡ぐ。
「我ら皇配が思うことは、ただ一つ!」彼女の声に応えるように、並んだ全員が声を重ね、力強く続けて宣言する。
「我らは皇帝ジョンアイデルと共に支え合う! いかなる困難な時も、穏やかな日常の時も、国政を担う重責の時も! そのためにここに立ち、永遠の契りを交わす! この絆、朽ちることなかれ!」十二人の心と魔力が一つに重なり合った瞬間、神殿の天井から柔らかな虹色と黄金色が混ざり合った光の玉が次々と出現し、ゆっくりと彼らの周囲を舞い始めた。それぞれの光は個性を持ちながらも調和し、闇の重圧を押し返すように温かな波動を放つ。ジョンアイデルもまた、手を前に差し伸べ、自分の魔力をその光に重ね合わせる。
「この誓い、我も同じく受け入れる。共に歩み、共に守り、共に未来を築く――これこそ我らの絆だ!」
言葉と共に、彼の身にまとった虹色の霊衣が輝きを増し、光の玉たちは一つの大きな結界へと形を変えて神殿全体を包み込んだ。イツパパロトルが放とうとした黒い魔力の波は、その結界に触れた瞬間、音もなく打ち砕かれて霧散する。
「な、なんだこの光は……ただのヒトごときが、これほどの力を!?」
イツパパロトルは驚きに目を見開き、思わず後退る。
クレティアが落ち着いた声で告げる。
「力だけが神聖なわけではない。互いを信じ合い、支え合おうとする心の絆こそ、最も強い力となるのだ」
皇配たちの誓いによって生まれた光は、召喚された闇の存在に対抗するだけでなく、儀式の最初の段階である「意思確認」を、形だけでなく真の意味で成立させていた。見届け人たちも目を奪われ、この光景に言葉を失っている。 ジョンアイデルはイツパパロトルに向き直り、堂々と告げる。
「これが我らの答えだ。この絆を断ち切ることなど、闇の力ごときにできるはずもない」光の結界が神殿を包み、緊張が最高潮に達したそのとき――イツパパロトルは突然、腹の底から響くような豪快な笑い声を上げた。
「はっはっはっは! 上出来な口上だ、そして心からの誓いの形でもある! いや~、実に素晴らしいものを見せてもらったぞ!」黒い蝶の羽をゆっくりとはためかせ、禍々しかった雰囲気は嘘のように和らぎ、彼女は手にしていた骨の刀を軽く宙に浮かべて見せた。
「登場したときは『未来を閉ざす』などと言ったが、あれは全部嘘だ! 本当のところ、これから世界に名を轟かせるという未来の皇帝の姿を、この目で直接確かめてみたくてな」
彼女は赤い瞳を細め、愉快そうに続ける。
「だからマリス・ソムニアの計画に、都合のいい形で『乗ってみた』だけさ。本気でこの場を破壊したりすれば、それこそつまらない退屈な結果になるだけだからな」捕らえられていたマリス・ソムニアの男は、その予想外の言葉に愕然とし、声を上げる。
「な、何を言っているんだ!? 我らはあなたの力で――」
「黙れ、小僧」イツパパロトルはちらりと一瞥するだけで、男は言葉を詰まらせて黙り込んだ。
「お前たちの企みは小さく浅はかだったが、それが私をこの場に呼ぶきっかけになった。それだけで役目は果たしたというものだ」ジョンアイデルは結界を解き、虹色の瞳で彼女を真っ直ぐに見据える。
「つまり、あなたはこの儀式を妨害するためではなく、この目で俺たちを確認しに来た、ということか」
「まさにその通り!」イツパパロトルは獣のような笑みを浮かべる。
「邪神連合といっても、闇の中にも多様な在り方がある。ただ破壊することだけを望む者もいれば、これからどんな波乱が起きるか、どんな未来が生まれるかを見届けたいと思う者もいるのさ」彼女は宙に浮いたまま、空間の歪みを再び少し開き始める。
「心の絆、立ち向かう意志、そして何より恐れずにこちらを見据える目――確かにお前には、未来を背負う資格がありそうだ。儀式の邪魔はこれ以上しない。マリス・ソムニアの連中の後始末は、この国の者たちで好きにするがいい」最後に、彼女はひらりと手を振り、言葉を残す。
「またいつか、世界が大きく動くときに会おう、ジョンアイデルよ。そのときまで、お前の描く未来がどう育つか、楽しみに見守っているぞ!」
言い終わると、イツパパロトルの姿は黒い光の粒子となって空間に溶け込み、何事もなかったかのように消え去った。神殿には再び清浄な空気が戻り、残されたのは呆然とする見届け人たちと、捕らえられた暗殺者たちだけとなった。ジョンアイデルは皇配たちの方を向き、柔らかく頷く。
「まさか試されていただけとはな。だがこれで、最初の段階は真の意味で成立したと言えるだろう」クレティアも笑みを浮かべ、頷き返す。
「予期せぬ形ではあったけれど、絆を示すには十分な出来事だったわ。これで次の儀式へ進める」場面は変わり、ミクスタッド郊外の断崖の下、人目につかない洞窟の奥――マリス・ソムニアの潜伏拠点へと移る。
薄暗い松明の明かりが壁に揺れる中、黒い服の男・クロトが不機嫌そうに舌打ちし、ハキハキと言葉を吐き捨てた。
「ちっ、ノールのやつ……神殿に潜伏することこそはできたが、結局しくじったか。爆弾は発見され、召喚した邪神にも見限られるとは、まったく使えない」
傍らには先ほどの計画に関わったセキエイ、青芭、キビトの姿もあり、彼らも沈黙したまま不満げな表情を浮かべている。だがクロトはすぐに感情を抑え、冷徹な瞳で計画書を見つめ直し、続ける。
「だが、儀式はまだ始まったばかりだ。血統証明、神意判定、力の証明……次々と難しい段階が待っている。特に皇帝神域踏破は、歴代の記録にも未知の部分が多い試練だという。そこでなら、まだ干渉の余地は残されている」青芭が銃の部品を手入れしながら、冷静に問いかける。
「神域の中は外部の魔力が通じにくいと聞く。我らが直接入り込むことは不可能だろう?」クロトは口元にわずかな笑みを浮かべる。
「直接干渉できなくとも、種を撒くことはできる。長い年月をかけて神域に紛れ込ませた『欠片』がある。ジョンアイデルが精神世界に足を踏み入れた瞬間、それが彼の心の隙間を突くだろう」セキエイが指の骨を鳴らし、不敵に笑う。
「なるほどな。表からの攻撃が無理なら、心の内側から崩してやればいい。どんなに強い力を持っていても、迷いや疑いが生まれれば儀式は成立しない」
「ああ」クロトは立ち上がり、洞窟の出口の方を見やる。
「邪魔者は多いし、予定通りにはいかなかったが……まだ勝負はついていない。皇帝の座に就く前に、彼自身の心が折れるかどうか――その行方を見届けるとしよう」拠点には、失敗による焦りよりも、次の機会を狙う闇の冷たい意思が漂っていた。ハキハキと、闇は新たな狙いを定める!!マリス・ソムニアの潜伏拠点で計画を語っていたクロトの背後に、突然空気が震え、禍々しい雰囲気が立ち込めた。
鮮やかながらも毒々しいマゼンタ色の服をまとった存在が、闇の中からゆっくりと姿を現す。彼は冷ややかな目つきでクロトを見下ろし、低い声で告げた。
「クロト……お前、手駒を二つも失ったようだな」
クロトは慌てて姿勢を正し、頭を下げて応える。
「ディザステト様……はい。ジークは我らの元を離れて敵側につき、そして神殿に潜入させたノールは捕らえられました」
彼の言葉が終わらないうちに、また別の気配が現れる。重厚な赤黒い鎧に身を包み、体全体に戦いの気配を漂わせた男――ベロルムが大股で進み出て、苛立たしげに言い放つ。
「まどろっこしいことばかりだ。この俺であれば、正面から堂々と乗り込んで叩き潰してやるのだがな」
だがすぐ横から、冷静で鋭い声が彼を制した。白いローブに黒いヒビのような紋様が走る男――カースが、落ち着き払った様子でハキハキと意見する。
「バカか、お前。そんな無謀なことをすれば、周囲を巻き込んで事態をややこしくするだけだ。力任せは最も愚かな選択だ」
彼は少し間を置き、計算されたような笑みを浮かべて続ける。
「次の儀式は血統証明だろう? ジョンアイデルがジョースター家の正当な後継者であることを証明する場……ならば、そこにこそ弱点がある。世間ではジョースター家は四人兄弟だと思われているが、実はもう一人、存在が秘匿された者がいる」ディザステトは興味深そうに口元を緩める。
「ほう……カース、面白いことを企んでいるな」傍らにいたもう一人、禍々しい色の白衣の人物:ペストと呼ばれる男も頷き、続ける。
「利用価値のあるものは徹底的に利用する。血の絆、家の因縁……それこそ、相手の心と立場を根底から揺るがし、滅びへと導くには最適な道具だ」カースは指先に黒い魔力の糸を絡めながら、冷徹に計画を語る。
「血統が疑われれば、皇位継承そのものに傷が入る。儀式の正当性が崩れれば、民の信頼も揺らぎ、ミクスタッドは自ら崩壊への道を歩み始めるだろう。力で壊すよりも、遥かに確実で長く続く破滅だ」ディザステトは満足そうに頷き、闇に包まれた笑みを浮かべる。
「よし、その案で進めろ。ジョースター家の『もう一人』を呼び寄せ、血統証明の儀式の場に引きずり出すのだ。これで儀式は混乱し、我らの目的は大きく前進するだろう」闇の拠点に、新たな陰謀の糸が紡がれ始めた。力任せの攻撃ではなく、家の秘密と因縁を突く――より陰湿で致命的な計画が動き出そうとしていた。ハキハキと、血の因縁を狙う闇の企み!!マゼンタの衣が闇に映えるディザステトの前に、空間が歪むようにして一人の男が現れた。輪郭や体つきは確かにジョンアイデルと重なるものがある。だが、彼の髪は漆黒に染まり、瞳は深い紫を湛え、額の側から伸びる角もまた、闇そのもののような黒色をしていた。世間に知られるジョースター兄弟とはどこか異質な、冷たく荒々しい雰囲気が纏わりついている。
「フフフフ、ジョンプリミティブ、来たか」ディザステトが口元を歪めて笑うと、黒い角の男――ジョンプリミティブは紫の瞳を細め、低く応じた。
「呼びつけた用件は何だ、ディザステト。俺を表舞台に引っ張り出すなど、お前たちにもよほど切羽詰まった事情があるようだな」
赤黒い鎧のベロルムが鼻を鳴らす。
「お前こそ、長いこと地下に潜んでいたせいで随分と偉そうになったものだ。ジョースターの血を引きながら、日の下に立つことすら許されなかった『欠けた者』め」その言葉にジョンプリミティブの紫の瞳が一瞬、妖しく光る。
「欠けた者? フン、正当な後継者だけが光を浴び、余分な血は闇に葬られる――それがジョースターの掟だったな。だが……血の繋がりだけは、誰にも消せはしない」 白いローブのカースが一歩前に出て、冷静に計画を告げる。
「次に行われるのは血統証明の儀式だ。ジョンアイデルが家の正当な継承者であることを神々と民の前に示す場……そこに、同じ血を引くお前が現れればどうなる?」ペストが邪悪な笑みを添える。
「正当性は一気に揺らぐ。『四人』とされてきた兄弟の秘密が暴かれ、ジョースター家の権威は地に落ちる。お前の復讐心と我らの目的、まさに利害が一致しているというわけだ」ジョンプリミティブは自らの黒い角に指を這わせ、紫の瞳に闇の野心を滲ませる。
「復讐……か。だがいい、長き眠りも退屈していた。表舞台に現れ、俺という存在を世に知らしめる――それも悪くない」ディザステトが手を打ち、闇の魔力が男の周囲に渦巻く。
「決まりだ。儀式の当日、お前は我らの手で会場へ送り込む。ジョースターの血が争い、自ら滅びる様を見せてもらおう」秘められていたもう一人の兄弟が、ついに闇の手によって封印を解かれた。血統証明の儀式は、ただの正当性を示す場ではなく、ジョースター家の存亡を懸けた戦いの舞台へと変わろうとしていた――。




