第二話
雅サンと呼ばれる目の前の人物は、俺に会いたいと言ったわりには俺と仲良くする気がないようで、全く話掛けてこない。
「……あのう」
「………」
「……何で俺呼ばれたの」
「………」
悲しくなるほど雅サンは反応を示してくれなかった。
絹サンはとっくにこの場を後にしており、仲を取り持ってくれる人はいない。
くじけそうになる自分をなんとか元気づけ、いざ話掛けようとした時だった。
「帰るぞ」
「…は?」
拍し抜けした俺の声に雅サンは微笑し、そして多分秘書かなんかであろう、やはりスーツ姿の男を引き連れて帰ってしまった。
「なんだったんだ…」
拍子抜けしてしまった俺は、いつもなら自分を興奮させる場の雰囲気に嫌気を感じてしまい、今日は大人しく帰る事にした。
「あら、梁チャンもう帰っちゃうの」
「宿題があンの忘れてた」
「残念ネ」
「またね」
名残惜しげな絹サンに軽く手をふりながら、俺はこの場を後にした。
終電ギリギリの人気もまばらな電車に乗ると、俺は今日の出来事を思い返した。
それは俺の何時もの癖で、どうしてか、毎日欠かさずやっている唯一の習慣である。
そして、今日の事を思い返せば返すほど、今日という一日が夢か何かであるような気がしてならなかった。
雅サンの微笑を思い出しながらうとうととしていたらしく、気が付けば、目的の駅まで後二駅となっていた。
「…ねみぃかも」
「あ!梁チャンだ〜!」
目を擦りつつ、必死に寝たがる脳みそと戦っていた時だった。
不意に高い声が人気もまばらな車内に響いた。
誰だよ。と不機嫌な顔で声のした方へと顔を向けると、次の瞬間。
どんっ!
「いってぇ…」
誰かが抱きついてきたせいで、強かに頭を打ってしまった。
「きゃ〜!本物の梁チャンだぁ。サインしてぇ〜」
「加奈ッ!梁サン困ってるぢゃないか!」
「だぁってぇ〜加奈梁チャンと会いたかったンだもン」
「加奈だけずるいンだよ!僕だって…僕だって…!梁サン!!会いたかったよぉ〜」
人気もまばらな車内で出会ったのは、双子の酔っ払いだった。
「加奈、戒」
「「あいッ!」」
「……おみぃから退けてくれ」




