~浦山太郎、イトウと出会う~
私も金持ちならではの悩みとか抱えてみたい。
3年目、太郎は一事業主として、自他共に認める程度に成功者と名乗れる程度には稼いでいました。
支払う税金も増えましたが、全然痛くありません。
太郎もよく知らないけど稼いでる人程、税金というものは沢山とられることは知ってました。
見たことある金持ち投稿者の動画では、お金持ちほど税金払ってて辛い、稼いだ半分は持ってかれるなどといわれますが、太郎には全然そんなことありませんでした。太郎は、それが、自分がまだ金持ちとしてはレベルが低いからなのかと思ってましたが、
落姫「これまで継続してきた竜宮城流の節約術が効いてきてる証拠ですよ。そして、太郎さんが自分にかけた自己投資分が利益になってるから、負担が少ないのです。」
と、わかったようなわからないような、理屈を教えてもらいました。
でも、今さら亀や落姫を疑う理由は太郎にはありませんでした。
太郎は、更によりよい物で身の回りを揃える為に、釣り道具をたくさん運べる大きなアウトドア車や、防水、衝撃にも強い高級な腕時計も購入しました。
それらは太郎の活動範囲を拡げ、より質の高い釣りに挑戦するきっかけにもなり、うまくいってました。
そんなとき、太郎たちの家に電話が入ります。
?「こんにちは、私は税務署のイトウと申します。」
浦山太郎「はぁ。」
イトウ「太郎さんの事業について、今度税務調査に伺いたいんです。1週間後にそちらにお邪魔したいんですが、ご都合いかがですか?」
浦山太郎「調査ですか?わ、私は何もやましいこともしてませんが…」
イトウ「太郎さんは調査は初めてですか?これは、不定期にランダムで色々な企業や個人事業主の方の所へお邪魔するもので、まぁ、軽い抜き打ちテストみたいなものですよ。何かの間違いが放置されたままなら、早めに気づいて修正する方がお互いのためってものです。」
浦山太郎「はぁ…」
イトウ「なので、変に不安がらないでください。それでは、1週間後に。」
そういってイトウは電話を切りました。太郎はこの話を落姫にしました。
落姫「太郎さんのお仕事もかなり軌道にのりましたからね。税務署が目を付けるのも不思議ではありません。ですが、太郎様。そういうことでしたら、私は調査の日はお暇をいただきます。」
浦山太郎「え、なぜだい!?」
税務のことなんて、全くわからないから、その調査でも落姫の力を頼りにしてた太郎としては動揺を隠せませんでした。
落姫「私は…人間ではありません。万が一にも、彼らの目に止まり、私の正体を探られる訳にはいかないのです…そうなると…私はもう太郎様と一緒にいられません。」
悲しそうな苦しそうな表情で落姫はそう告げました。
浦山太郎「そうか…すまない。大丈夫だ。調査なんて私だけで対応できるよ。お前は安心して竜宮城で羽を伸ばしておいで。」
落姫「ふふ、ありがとうございます。でも、今の太郎様では資料の場所もわからないので、きちんとお教えしておきますね。」
そこから、太郎は落姫に、調査で求められるであろう資料の保管場所や、聞かれるであろう質問の答え方も、きちんと教えてもらいました。
そして、『竜宮城に関する、または繋がるような質問には、『わからない』と答える』それを約束して、落姫は調査の前日、竜宮城へ帰っていきました。
調査がやってきました。
提出を求められた資料、尋ねられる質問、どれも落姫と事前に勉強しておいたものでした。
太郎はすらすらとイトウの質問や要求に応えます。
イトウ「ありがとうございます。協力いただき、スムーズに進んで助かります。では、太郎さんの生活について質問させてください。」
浦山太郎「生活?」
そのアプローチは想定外でした。
イトウ「はい、太郎さん。ここ最近で随分と様々な物を購入してますね。釣り道具や配信機材、なかなか高級なものだ。」
浦山太郎「はい、仕事に必要なものなので。」
イトウ「そうですね。ですが、この時計は?仕事に密接な関係があるんですか?」
浦山太郎「え、だってその時計は衝撃にも強いし、防水もしっかりしてるし、仕事には時計が必要でしょ?潮の満ち干きもそれがないとわからない。」
イトウ「なるほど、ではこれはプライベートでは使わないんですか?」
浦山太郎「?何を聞きたいのかわかりません。時計なんだから、出かける時は使います。」
イトウ「…太郎さん。この質問は、つまり会社や事業主としてのお金で太郎さんが自分のための買い物をしてるか聞いてます。」
太郎「?私は、別に社員を持ってないし、会社も立ち上げてないです。私が稼いだお金で、私の買い物をしてるだけです。」
イトウ「…太郎さん。社員は雇ってないんですよね?なら、経理も太郎さんがやってるんですよね?」
太郎「はい、そうです。」
イトウ「ふむ…そうですか。それにしては…いや、だが提出される資料はよくまとまって完璧だし…」
何か引っ掛かるのか、イトウはぶつぶつ言います。そんな態度をとられては太郎は気が気じゃありませんが、イトウは気を取り直したのか
イトウ「…わかりました。時計についても、まぁ確かに仕事に必要な機能を備えていますし、深く気にしすぎましたね。」
太郎「は、はぁ。」
イトウ「ところで、太郎さん、こんな魚を見たことはありますか。」
そういってイトウは写真を見せてきました。
太郎「!」
太郎は危うく声を出しそうになりました。
太郎「…いえ、わかりません。」
その写真に写っていたのは、あの、竜宮城からやってくる、不思議な魚だったからです。
内心ドキドキしながら、太郎は取り繕いました。
太郎「あの、その魚がなんなんですか?」
イトウ「おや、何かご存じなんですか?」
太郎「いえ、あの、あまり見たことない珍しい魚だったので、つい。それに税務調査で魚について聞いてくるのも気になって…」
イトウ「あはは、それもそうですね。そう、珍しい魚ですよね。私もなんの魚か調べてるんですがわからなくてね。釣り人の太郎さんなら心当たりあるかもと思ったんです。」
太郎「そうですか。それは、お力になれず…」
イトウ「いえ。実はこの魚。我々が調査に入る先でやたらと見かけるんですよ。今度お会いするときは、実物をお見せできるかもしれませんね。」
そういって、イトウは帰っていきました。
太郎は、これまで亀や落姫の言う通りにやってきました。この調査も落姫のアドバイス通りにやって、無事乗り越えました。
しかし、初めて、太郎は自分のこれまでの活動に、何か、言語化できない不安を感じました。
もし金持ちになれたら、私は家を建てたいですね。
趣味のミニ四駆コースをがっつり拡げられるスペースと、かたかた小説作成の為の書斎スペースのある家を作りたい。




