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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
六話:『宇野中 撫子』のタマゴアイドル:後編
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放課後になって、私は少し早く待つ。

じっとしているのが、辛い。

時間を待つのも、辛い。

恋とはこれほど、胸が熱くなるのだろうか。

タマドルになった時に感じなかった、胸のドキドキを私ははっきりと感じていた。


放課後に入ると、すぐに私はテニスコートの裏で待っていた。

ここは、人があまり来ない場所だ。テニスコートでは、テニス部が部活動をしていた。


「まだかな……」

ベンチに座り、私はもじもじしていた。

胸がずっと鳴りっぱなし。何度、無理に深呼吸をしたのかわからない。

約束の時間が、十分ぐらい過ぎても彼はまだ来ない。


(私が早く来すぎたのかな。それとも)

最悪のことがよぎる。前も待たされて、カクイドリが襲ってきた。

今の私は、変身(トランス)していないセーラー服の一女子高生だ。

危険な日曜(ベーツァサンデー)ではない今日は、多分カクイドリが襲ってこないと思うが。

そんな思考を巡らせると、足音が聞こえてきた。


「ごめん、待った?」急いでこっちに走ってきた、奥津先輩。

「いえ、待っていませよ」

「本当にごめん、ちょっとやることがあったから」

私の前に来て、息を切らしていた奥津先輩。


「いえいえ、大丈夫です」

「いろいろ迷惑をかけたようだね、ごめん」

「私は待つのは、大好きですから」

私は笑顔を見せていた。彼に会えて、単に嬉しかったからだ。

しかし、それは私の関係がどうなるかわからない裁定の時が迫る。


「それじゃあ、俺の答えを言うね」

「はい」息を飲んだ私の胸は熱い。

奥津先輩もまた、緊張した顔を見せていた。

異性とこれほど顔が近かったことは今までない。

胸が熱くて、飛び出しそうだ。


「俺はすごく嬉しかった。宇野中さんの言葉。

正直、今まで生きてきた中で一番嬉しかった。

こんな俺のことをここまで好きでいてくれて、ありがとう」

「はい、私は今でも奥津先輩が大好きです」

「だけど、俺は君を幸せにできないと思うんだ」

「なぜですか?」

「宇野中さんは、すごいお嬢様だよね」

その言葉を聞いて、私は落胆の顔を見せた。

自分はお嬢様、宇野中家の令嬢。本当なら許嫁と結婚を義務付けられた存在。

それを私は、拒んでまで彼を好きになった。


「はい、お嬢様です」

「俺はまだそんなに頭が良くないし、なにより宇野中さんのことをよく知らない。

だから……いきなり恋人はハードルが高いんだ」

「はい、そうですね」そう言いながらも、私は表情が曇った。

「だから、俺と友達になってよ」

「え?」私は驚いていた。


「冷静に考えたんだ、俺はまだ宇野中さんのことをよく知らない。

あの可愛い女の子だっけ?写真で一緒に話したけど、宇野中さんのことが少しわかった程度だ」

「うん」

「だから、もう少しお互いの事を知ってからにしたほうがいいと思うんだ。

俺も、宇野中さんに知ってほしいし」

「はい」私は顔を上げて、奥津先輩を見ていた。

そんな奥津先輩が、手を差し出してきた。


「これからもよろしくね」

「はい、よろしくお願いします。先輩」

私はそう言いながら、先輩の手を握った。

それはやっぱり暖かい手、先輩の温もりと僅かな汗を感じられた。


「それじゃあ……」

「お兄ちゃん、ありがとう」

すると、後ろの方から一人の少女が現れた。


長袖のセーラー服に、スカート。足はさらにジャージをきていた少女。

長い髪は乱れていて、眼鏡をかけていた少女。

メガネから見える目は、どこか魂が抜けたような目だ。


「霞、そうだったな……すまない」

「どういうことですか?」

「あたしも会いたかったのよ、宇野中 撫子さん」

霞と言われた少女は、私の目の前に来るなり不敵な笑みを浮かべた。

その少女には、殺意のようなものがあった。

だけど、こんなに彼女は殺気を放っていただろうか。


「あなた、あたしの家来にならない?」

そう言いながら、彼女はカッターナイフを取り出して私の首元に近づけてきた。



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