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『6月19日』
二日後、デートの日を迎えた。
変身すれば、大好きな彼と話ができる。
それだけで私は嬉しかった。大好きな彼が一番近くまでいるのだから。
今の私は、タマドル『ナデシコ』で車の中にいた。
もちろんデートの待ち合わせ場所、四日市駅に向かっていた。
十時集合にも関わらず、一時間以上早くたどり着く早さだ。
朝、すぐに蔵に入って変身した。
それは、四つのプリンセスコーデの一つERのコーディネート。
それは、ピンク色のワンピースドレスにフリルがついたミニのスカート。
ワンピースの胸にはイチゴ、手にはピンクのドレスグローブ。
足は、長めの赤いロングブーツ。
少し動きやすさもあるが、全体的にとてもかわいらしい衣装だ。
ピンクの髪の私が来ていたのは、『イチゴプリンセス』コーデを身にまとっていた。
「イチゴプリンセスですか、お嬢様流石です」
車の中で、ハコベが私に拍手してくれた。
それを受けて、私は素直に喜んでいた。
「ありがとう、ハコベ」
「『ファストフローラル』の中でも、飛び切りかわいい衣装です。
あまりのかわいらしさに、男性は魅了されてしまうでしょうね」
「まあ、ハコベは上手ですね」
「自分はありませんが、お嬢様にはお似合いですよ」
いつも通りの黒いメイド服のハコベが、私を見ていた。
「あ、つきましたよ」ハコベが言うと、駅前のタクシー置き場に車を止めた。
ここのタクシー置き場は、宇野中家グループ傘下の会社だ。
すぐ先には、『ノットシステム』が路上ライブをしていた駅前広場がある。
さすがに、今朝の時間帯でバンドをしていることはないか。
「ですがお嬢様、今日は申し訳ありません。危険な日曜なので」
ハコベが、不安そうな顔を浮かべていた。
「お嬢様を見守りたいのですが、ここで抜けねばなりません」
「ハコベの用事はわかっています、大丈夫ですよ」
「そうですね、申し訳ないです」
「いいえ、それより今度は何かしっぽをつかめるといいですね。『緑魔女』について」
「はい、緑魔女は郊外の『ドンペンホーム』にいるかと思われます。
一応デートコースは、市の郊外は避けたほうがよろしいかと」
「わかっていますよ、大丈夫です」
「特に彼は普通の人間です。カクイドリに襲われたら、連れて行かれてしまいます」
念を押して、ハコベが言ってきた。
「わかりました」
「それから、しばらく車を借りますので終わったら自分に電話をお願いします」
「わかりました」
私はそう言いながら、ドレスの内ポケットにスマホを忍ばせていた。
「では、行ってきます」
「お嬢様、いってらっしゃいませ」
最後まで、ハコベは頭を下げていた。
そして私は車を降りたのだった。




