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~~レストラン『フリッタータ』~~
ここは、タマゴ王国。
『タマゴアイドル』の世界になっている場所だ。
なにより、タマゴ王国はハコベが来た国だと言われている。
実際来ても、イマイチ実感がない。なにせここはレストランだ。
立派な造りのレストランは、高級そうなイメージがある。
白い枠の窓に、大きな銀い色のテーブル。
だけど客の姿はなく、ここが背景にしか見えない。
「撫子お嬢様、ありがとうございます」
そう言いながら、私の前には『ハコベ』がいた。
だけど、いつもどおりの黒いメイド服。
メイド服に、白いストッキング、頭にはヘッドレス。
強いて言えば目の色が両方とも赤くなって、髪の長さが少し伸びるぐらいだ。
「いえ、私もすっかり『タマドル』に魅了されていますから」
私は桃色髪のポニーテールに変わっていた。
桃色のポニーテールには、大きな王冠が乗せられていた。
緑色のドレスは、フリルが付いていた。
フリルが付いたスカートには、メロンの飾りがあしらわれている。
緑色と白の縞のハイソックスは、優雅さを表していた。
「さすがは『ナデシコ』ですね、ナデシコお嬢様」
「はい、私はこちらでもナデシコです」
ここの世界だと、私は『ナデシコ』という名前のアイドルになる。
というより本名と全く同じだ。
元々自分の名前を気にっているので、変える必要がなかった。
「『メロンプリンセスコーデ』、昨日取れたのですね」
「はい、ドンペンホームでガチャを回して取れました」
「さすがはお嬢様です。これで、念願の四種のプリンセスコーデが全て揃ったのですね」
ハコベが素直に私を褒めてくれた。
「はい。ERは全て揃いました。
昨日、ハコベはドンペンホームでコーデ取らなかったのですか?」
「はい、自分はガチャを回しませんでした」
ハコベは、私のコーデをじっと見ていた。
「というより、今の自分にはこの衣装があります」
「そうですか」
ハコベは、あまり自分のことを語りたがらない。
彼女の衣装はいつもメイド服だし。
「やはり、お嬢様はエレガント系の衣装がお似合いですね」
「よく着ているせいか、着慣れているのはあると思います。
ですが、いろんなお洋服が着られて私は楽しいですよ」
「それが『タマゴアイドル』というゲームですから」
「でも、ゲームの中には入れないのですよね」
「そのために朕と契約をしたのだろう」
すると、私の前には緑色のタマゴが出てきた。
「ああっ、タマちゃん」
「タマちゃんではない。ハコベ様……」
「まあ、タマちゃんでもいいと思いますよ。イースター」
「うむ、ハコベ様がそうおっしゃるのなら。
それで、今日はどのモードをやるのじゃ?」
「それだけど、今日は日曜だから自分はこれから見回りに行かないといけない」
「危険な日曜ですか?」
「そうです。既に、この街で被害も出ている。
先週も一件でている、今日も奴がどこかで動くやも知れぬ」
難しい顔でハコベが腕を組んでいた。
「でも、折角ですから記念に一回だけライブをしませんか?」
「ライブですか?いいでしょう」
「では、いきましょうか」
私はそう言いながら、中腰でタマちゃんにお願いをした。
「ライブをお願いします」と。




