047
昼に許可を出して、私はずっと考え事をしていた。
虎太郎の持ってきた提案のせいで、全く手につかない。
それもそうだ、私は初めて見たのだ。
『タマゴアイドル』をやっている女の子を。
そして、イースターと一緒に契約をしている女の子を。
生徒会室に残り、私はずっとパソコンを見ていた。
「何を見ている?」
「イースターっ、聞いていたのか?」
ポケットに忍ばせたタマドルカードのイースターが、聞いてきた。
タマドルカードをポケットから取り出して、イースターに見せてみた。
「あれは間違いない。『タマゴアイドル』をやっている女の子、変身ができる。
コーデの種類は『ファストフローラル』の『ナースエンジェル』コーデだな」
「そうですね、取り立てて珍しい衣装ではない。
レア度もC、普通の衣装です」
「『ノットシステム』に存在している、というわけか」
「はい、彼女は知っています」
「なら、話すのは簡単じゃないのか」
「でも……あの一件以来私たちは距離を置くようになったのです」
私は、バンドで歌っている少女を見ていた。
「『詰草 恵』、彼女で間違いないです。でも私は彼女に話すことができない」
「どうしてじゃ?」
「彼女だって、私と会うのを望んでいない」
「なぜそう言い切れる?」
「あの日の出来事が、そうさせた。臨海学校の苦い思い出」
「ふむ、じゃが初めて彼女がタマドルとして現れた」
いきなりイースターが、おかしな事を言ってきた。
「何を言いたいのですか?」
「彼女は、初めて見るタマドル……ということじゃ。
朕を川で拾って一ヶ月、お主の前に『タマドル』の女は現れたのか?」
「彼女が初めて……」
私は、ライブが終わったパソコン画面をじっと見ていた。
「お主もいい加減、限界を感じ始めたのではないか?
『タマドル』の進め方に、いやそれ以外にも勉強のこととかも。
明らかに、今のお主は行き詰っているように見えるぞ」
「……確かにそうです」私はタマドルカードをじっと見ていた。
キラキラ光るタマドルの自分『シエル』が、笑顔でポーズを取っていた。
「『タマドル』はな、『あたしはタマドル、トモダチもタマドル』じゃ」
「それはどういうことですか?」
「ゲームの筐体にちゃんと書いてあるぞ、このゲームのキャッチコピーじゃよ」
「そんなのあるのですか」
「うむ、お主にはトモダチが足りぬようじゃ。
今のお主は、誰か同じ仲間が必要ではないのか?」
イースターに言われて、私は胸に手を当てた。
あの時も、仲良くなりたかっただけ。
外国で、異国の地で、私は少女に声をかけられて一緒になれた気がした。
だけど、彼女はもういない。
いなくなって、私は孤立した。
結局、私の接点は彼女だけだ。
彼女がいなくなって、彼女が繋いだみんなバラバラになってしまった。
そんな私は、彼女たちに歩み寄ろうとはしなかった。
無意識に避けていた、逃げていた。
「イースター、私は少しだけわかった気がします」
「それはよかった。やはり友情、努力、お金じゃろ」
「それは違うですよ」
私は自然と笑顔になれた。




