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ここは生徒会長室、生徒会長のための部屋だ。
といっても、私一人の場所ではない。
会議室も兼ねていて、真ん中に大きなテーブルがあった。
もちろん、私はテーブルのど真ん中だ。
私の家には机自体無く丸テーブルだけなので、立派なテーブルは単純にありがたい。
私の好きなアニメだと、生徒会長は頭が良くて、スポーツ万能で、美形。
三本柱が揃っているのが、当たり前だけど現実は違う。
そもそも采女第三高校の生徒会長はこの私だ。
私に当てはまるのは、せいぜいスポーツ万能なところぐらい。
当然弱点は勉学だ。
「会長、なにしているんですか?」
「いや、勉強です」
私は勉強をしていた。
隣にいるのは副会長の三年生。『奥津 麦』は、副会長。
先輩ということもあり、奥津副会長と私は呼んでいる。
奥津副会長は、借り上げた短髪に、切れ目。
なんといっても奥津副会長は、いつもカメラをぶら下げていた。
「会長、もしかして試験あったんですか?」
「ううっ、大したことはないです」
「まあ、会長の頭の良さは、期待にしていないから」
「それってすごくひどくないですか?」
私が言うと、奥津副会長は苦笑いをしていた。
「でも、なんでみんな生徒会長になりたがらないんだろう?
こんなにいい机が支給されているのに」
「プレッシャーすごいからね」
「プレッシャーって、そんなにすごいのですか?」
私は、首をひねっていた。
「この学校の生徒会は、ほとんど推薦で決まるから。
会長が立候補で決まるのは珍しいらしいよ。
まあ、日本の学校はだいたいこんな感じだ。
責任を取るのが、嫌なのが日本人ってもんだ」
「責任を取るってどういう意味ですか?」
「そのままの理由、生徒会長はいろんな責任がかかるからな」
奥津副会長は淡々と話す。
そんな時、奥津副会長は私の方をじっと見ていた。
「それでも、会長をやってくれる人材は貴重だと思う」
「それはシエルを褒めていますか?」
「うん、褒めているか、けなしているか、判断は任せるよ」
「奥津副会長は、ちょっと意地悪です」
私はすねていた。すねたので教科書を見ていた。
「会長はなんの教科をやっているのだ?」
「数学です、抜き打ちテストで点が悪かったので」
「抜き打ちか、あの加藤先生か?」
「そうです。急に抜き打ちされて、私は残念な結果でした」
「加藤先生、抜き打ち大好きだからな。で、点数は?」
「35……ですよ」
私の言葉に、奥津副会長は苦笑いだ。
それに目をくれないで、私は教科書の問題を解いていた。
「数学かぁ、俺も苦手なんだよな。文系はまあそれなりに得意だけど」
「奥津副会長も苦手なのかぁ。会計の子は、得意だろうか?
会計は数学のスペシャリストだと、一般的に言われているです」
「会計は一年だよ」
確かに会計は一年生だし、書記は二年生だけど頭が良さそうに見えない。
しかも、会計の生徒はここにいない。
「そう考えると、一番会長が頭いいかもなっ!」
「奥津副会長の方が、頭よくないですか?」
「俺はダメダメだぞ。三年でも、成績は下位だぞ。
そんなことより、会長。今日の放課後、定例会議あるからわかっているよな」
「え?」私は一瞬忘れていた。
勉強しようと思った私の心は、一瞬にして崩れ去った。




