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私『シエル カーネーション』はオランダ人だ。
オランダ人であるがため、川を見て育った。
そして、祖国オランダによく似ているのは、この橋だ。
自転車で私が来たのは、大きな橋が架かる川。
川下からの風が吹き付ける橋の中央で、私は川を見ていた。
「なるほど、この川か」首にぶら下げた『タマドルカード』が揺れながら喋る。
「だねっ、ここですね。イースターを拾ったの」
「拾ったではない、朕がお主の変身したい願望に答えたのだ」
「シエル、魔法少女好きだから変身をいっぱいしたいです。
それに、ここはよく似ています。川の風が心地よい」
「お主はこの国の人間ではないが、川の多い国なのか?」
「うん、川というより運河だけど。
でも、この川はすごく似ているんだ。川の水は濁っているけど」
川の先、下流の方には工場らしきものが見える。
日本に詳しいママが言うには、この四日市は工業の街だと言っていた。
実際、かなり工場が多くて初めて来た時は空気が臭く感じたし。
「イースターは、日本産なの?」
「いや、朕はタマゴ王国だと言っておろう」
「でも、あのゲームを作ったのは日本のメーカーだよね」
「ああ、共同開発だからな。女王様と日本ゲームメーカーの」
「女王様?どんな人なの?」
「そりゃあ、とてもお美しいお方で、可愛い方でもある。
なにせ生まれながらの伝説のタマドルだからな」
「へえ、アイドルの女王様か……ゲームで出てくるの?」
その言葉に、イースターが言葉を詰まらせた。
「いや……出ることはない」
「なんで?」
「だいたいそういうゲームではないっ!
そんなにお主は、日本のアニメやゲームが好きなのか?」
「うん、大好き」私のツインテールが、川からの吹きつけた風で揺れた。
「日本は、アニメも漫画も、ゲームも好き。だから日本に来た。
母が日本人ということもあったけど、私はこの国が大好きだ」
「でもちっぽけな目標ではいかんぞ」
「イースターは、やっぱりツンデレ?」
「違う、朕は断じて違う!」
言葉を強く言って否定した。
「あっ、照れている」
「照れていない。てか、カードだから感情表現はできないぞ」
「ふふっ、やっぱ照れている。かわいい、イースター」
「照れて……いかん!」
「どうしたの?」
「川の上流の方を見てみろ」
「上流?」イースターの言うとおり、上流の方を見上げる。
すると、空に小さな黒い点が見えた。その点がだんだんと大きくなっていく。
川の奥の方には黒い、塊が見えていた。
そして、その塊がゆっくりと私の方に近づいて来るのがわかった。
「とりあえずここは目立つ。橋の下に入れっ!」
「うん」イースターの言葉で、私はすぐに行動した。
自転車をこいで、橋を渡りきっていた。




