037
私はすぐに橋を渡りきって、河川敷に降りていく。
そのまま自転車を歩道に止めて、カバンに入れてあった魔法の杖を手にした。
相手は空を飛ぶカクイドリ。衣装を破壊するコウモリだということは、知っていた。
幸い、このあたりには人はいない。
落書きされた橋ゲタに、私は身を潜めることにした。
「少し距離があったから、見つかっていないといいが」
「だね、見つかった時は流石にライブをするしかないぞ」
「うん」私は魔法の杖を持ってしゃがんでいた。
時間だけが、どんどん過ぎていく。
待っている間は緊張しかしない。
橋ゲタで私は、魔法少女の格好をしてしゃがんでいた。
「通り過ぎたかな?」
「もう少し待て」
「でも……動きがないね」
「それでも、待て」
「うん」私は待つのは得意ではない。
静かな時間が、橋の下では流れる。
上の車道の車の音と、川の流れる音しか聞こえない。
あれから待つことしばし。
「音がしない」
「そのようだな」
「行ったんじゃない?」
「だな、上がるとするか」
私はゆっくりと階段を上がっていく。
だけど、上がりきる前に、「伏せろっ!」カードのイースターが吠えた。
私はイースターの声に合わせて、頭を引っ込める。
私の頭の上を黒い風が、吹きつけた。
頭につけていたティアラが、一瞬にして黒い風に運ばれて破壊されていた。
「えっ、うそっ」頭を引っ込めて、通り過ぎた黒い風を見た。
そこには、真っ黒いコウモリが群れをなして飛んでいた。
「くそっ、待ち伏せか」
「すごい、あんなにカクイドリは頭がいいのですか?」
「いや、カクイドリはコウモリ程度の知能しかない。
待ち伏せなどできぬ、そんなことより逃げられないな。リアルライブを」
「うん」
私は迷うことなく、卵の魔法の杖を取り出した。
「シエルのライブへ、ようこそっ!」
そして、私が念じた瞬間に私とカクイドリの群れが河川敷から消えたのだ。




