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変身少女のタマゴ系ライブ  作者: 葉月 優奈
二話:『詰草 恵』のタマゴアイドル:後編
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028

『6月20日』

二日後、朝早く学校に向かっていた。

早朝に乗った電車で、学校に向かっていた。

だけど、この日は朝から小雨が降っていた。


朝の七時。

始業時間より一時間も早い時間に教室についたボクは、カバンを置いて向かった場所があった。

パラパラと雨が降るそこは屋上だ。

ボクはここで、雨に濡れた地面をじっと見ていた。


「雨降っているな、あの時と同じ」

ボクはいつもタマドルカードを持っていた。

カードには、いつもどおりイースターが喋り相手だ。


「ここが、二人と出会った場所」

「雨が降っているな」

「雨降っていたんだ、今日と同じで小雨だったけど」

「なんでそれを話す?」

「聞かれたから」

ボクもカードにわざわざ話す理由はない、だけどなんとなく話したくなった。

それに、ここに来ればなにかボクの迷いが消えるような気がしたからだ。


「二人が演奏していたんだ、この屋上で。雨が降っていた朝に」

「二人ってあの二人か?」

「隆聖と虎太郎、ちゃんと覚えてよ。

二人は学校もバラバラで、というより隆聖はボクと同じ中学だから顔見知りだったけど。

元々二人は、去年同じクラスだったからいろいろ話したみたい。

夏になる頃、二人は音楽で意気投合して夏休みは二人でバンドを組んだ」

「それが『ノットシステム』?」

「うん、ボクが合流したのは秋かな。ここで二人が、練習しているところに会ったんだ」

ボクは遠い目でじっと見ていた。

その光景が、今でも目に浮かんでいた。


「はじめの目的は、文化祭のライブ成功だった。

そのために路上ライブを繰り返して……そういえば最初のライブって……どこだったっけ?

日にちは、クリスマスだったのは覚えているけど」

「学校の校庭だよな」

「そうそうって」

「隆聖!」

ボクは、背後にいた隆聖を見て驚いた。

いや、少し嬉しかったのは間違いない。顔の表情は少しだけ明るくなった。


原点のこの場所に来れば、ボクはなにかわかるかも知れないと思っていた。

そんなボクは、どんより曇るこの景色のごとく迷っていた。

ボクは慌てて『タマドルカード』をポケットにしまった。


「ん、どうした?」

「いやあ、こっちのこと。やっぱりここにくるんだ」

「ああ、去年の夏休みはずっと練習していたからな。

音楽でなにか変われるんじゃないかって、それに共鳴したのが虎太郎だ」

「音楽で思い知ったのは、何もないことだけだ」

さらに出てきたのは虎太郎だ。


「虎太郎も、やはり来たんだ」

「なんだよ、いいだろ」

ふてくされた顔で、じっとボクを見ていた。


「相変わらず、かわいくないなメグッポ」

「ううっ、かわいいもん。こっちのボクも」

「どうだか?」虎太郎は、腕を組んでボクを睨んでいた。


「こっちの恵も、なかなかかわいいよ。個性的っていうか」

「ひどいっ、隆聖はボクのこと馬鹿にしている?」

「してないって」ボクの追求に、隆聖は苦笑いした。


「でも、いいな。やっぱりみんなの考えは、同じだったよな」

「俺は違う、やっぱり音楽性がない。

メグッポの変化は、音楽性に合わない。

それに、思ったんだ。俺たちの音楽は通用しないって。

メグッポの見た目だけで、俺たちには人気ないから」

「それはどうかな?」

隆聖は虎太郎に言い放つ。


「僕らの音楽も、変われるんじゃないか?」

「変われる?無茶だろ」

「変われるさ、恵がそれを証明したじゃないか」

ボクを指差して、隆聖が虎太郎に言っていた。


「俺たちが、変われる?」

「ボクは、変わりたいと願って変われたんだ。

二人の音楽だって、きっと変われるよ」

「そう……だよな」

「試してみようぜ。変われたかどうか。

クリスマスの時と同じように」

そんな時、小雨降る屋上の手すりまで歩いていく隆聖。

グラウンドに背を向けて両手を広げた隆聖を、ボクと虎太郎はじっと見ていた。


「今日の放課後、ライブをしよう。今の僕たちの持てる力を、全て使って」

隆聖が高らかに宣言していた。



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