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商店街の一角にあるライブハウスの二階には、運営の事務所だ。
事務所といっても、決して大掛かりではない。
このライブハウス自体、商店街の一角にある小さなものだ。
昔はもっと大きかったらしいが、バンドブームが過ぎた現在はかなり規模が縮小されていた。
二階の事務所に、ボクはそのままの格好で入った。
「失礼します」入った事務所は、薄暗い。
半分の蛍光灯しかつかない事務所は、職員室のように机が並ぶ。
といっても規模は小さくて、奥にはついたてが見えた。
その奥から、ボクを招く手らしきものが見えた。
「こっちだよ」呼ばれて、ボクはついていった。
そしてついたての裏には、大きなソファーに一人の男性が座っていた。
ソファーの隣にはテレビがついていた。
テレビは、ライブ会場を映し出していた。あれ、客がだいぶ減ったような。
「やあ、初めまして。佐藤です、このライブハウスを運営しています」
「こちらこそ、初めまして。『ノットシステム』のボーカル『メグッポ』です」
「聞いているよ、そこに座って」
佐藤さんは、ボクにソファーを座るのを勧めた。遠慮なく座った。
「さて、さっきのライブをここで見させてもらったよ。
素晴らしいパフォーマンスだ、オーディエンスが君の声に共鳴していたぞ」
「はい、ありがとうございます」
「君は本当に素晴らしい、メグッポ」
「ありがとうございます」二度目だ。
なんだか絶賛ばかりされて、少しムズかゆい。
「なぜ、ボクだけなんですか?」
「君は、ソロデビューに興味はないか?」
「え?」ボクが戸惑っていると、座ったまま佐藤さんが名刺を渡してきた。
「ライブハウスを運営している傍ら、実は音楽プロデューサーも兼用しておりまして」
「はあ」渡された名刺にも、同じことが書かれていた。
「君はダイヤの原石だ。その声と、可愛いルックス。
君は、間違いなくメジャーデビューできるだろう。既に、声もルックスもプロ並みだ。
どうだい、私プロデュースでデビューをしてみないか?」
「ええっ!」ボクは最後までずっと驚いていた。




