020
ライブ終了から、十五分後。
舞台袖の仕切られた楽屋に来ていた。
狭く小さなライブハウスに、熱狂の余韻がまだ残っていた。
楽屋といっても個室が与えられているわけではない。
ベンチと、保健室のような仕切り板で仕切られた簡易楽屋。
そこで、ボクら三人は戻ってきていた。
「おつかれっ!」
「いやあ、すごかったぜ。こんなに客の前で演奏できるとは」
隆聖がホッとして、虎太郎はかなり興奮していた。
狭い敷居の中で、二人の汗を感じていた。
ちょっと汗臭いけどね。それだけ緊張していたのが伝わってきた。
ボクは、思いのほか緊張はしていない。あ、アバターは汗をかかないんだ。
「うん、すごかったね」
「一番すごいのは、お前だ。メグッポ。
堂々と歌っていられるんだからな」
虎太郎がやや汗臭いながらに、ボクに肩を組んできた。
やっぱり男の人は、汗臭いなぁ。
「でも、本当に二人共お疲れ」
「ああ、最初は隆聖がミスったけどな」
「あれは……キーがちょっとズレただけだ。
それに、虎太郎だってサビのところがおかしかっただろ」
「うっ、そこを言うか?リーダー」
いつもどおりのたわいない会話、隆聖と虎太郎が話していた。
ボクはそんな二人を見ているだけで、とにかく楽しい。
「でも、いいライブだね。一番良かったんじゃない」
「ああ。あんだけ観客いたら、やる気もテンションも上がるってもんよ」
「文化祭の後、ライブがうまくいっている気がする。
これってやっぱり恵のおかげ、かな?」
「違うよ、みんなの演奏が上手いんだよ。
ボクは、その演奏を手助けするためのボーカルだと思っているし」
ボクは謙遜するも、隆聖は笑顔を見せてきた。
「いや、やっぱり恵のイメチェンが成功しているからね。本当に感謝している」
「感謝ってそんな……」
「おうおう、いつもその格好でやればいいんじゃないか?
まあ、初めは曲にあまり合わないと思ったけどよ」
「虎太郎はちょっと余計」
ボクに言われて、むすっとした虎太郎。
そんな時、廊下にある時計を見た。
「あっ、こんな時間だ。ちょっと呼ばれているから」
「呼ばれているって?誰に?」
「支配人の人に呼ばれているから」
「ああ、佐藤さんか。恵一人だけ?」
隆聖がどうやら知っている人みたいだ。
「みたい。そろそろ約束の時間だから……それじゃあね」
ボクはそう言いながら、隆聖と虎太郎から離れていった。




