ミッション 第3段階終了
食堂に着き、みんなでご飯を食べだした。食堂はあったかくて、指の先がかんじかんでいたのが、だんだんとあったまってきていた。
私と昴くんが並んでご飯を食べていると、そこにノエルさんが来た。
「ひかりさん…。昴くんが闇で覆われそうだったとき、光を出して包み込んでたわね?」
「え?私がですか?」
「それ、多分、高い波動のひかりです」
昴くんが答えた。
「私の体の中から、昴くん愛してるって聞こえてきて、私、昴くんのこと抱きしめてて…」
「そう?じゃあ、高い次元のひかりさんなのね」
私は、こくんってうなづいた。そう、私だ。私が心で昴くんにずっと、愛してるって言い続けた。それを感じて、こっちの次元の私は昴くんのことを抱きしめたんだ。
「お父さま。もう、次のミッション、遂行できるんじゃないかしら」
ノエルさんが、そう白河さんに言った。
「ノエル…。焦らなくてもいい。1番ベストなときに、そうなるようになっている」
白河さんはそう、穏やかに言った。
「次のミッション?俺らのですか?」
昴くんが、ノエルさんに聞いた。
「そのために、この次元に君たちはきたんだよ」
白河さんが、変わりに答えた。
「私も、ノエルもここにきたのには、わけがある。すべてが、シナリオどおりに進んでいる」
「はい。それ、昨日ひかりと宇宙船に行ったときに感じました。全部が、ミッションのうちだったって」
「宇宙船に一緒に行ったの?」
ノエルさんがそう聞いた。
「じゃ、もう高い波動のひかりさんが現れても」
「はい。でも、もう同化してきてますよ」
「ノエル…。もう一つクリアにしておくことがあるんじゃないかな?」
「え?お父様、どういうことです?」
「この次元のひかりさんは、昴くんに誘拐されてるんだ。今、行方不明になり、ひかりさんのことをお父さんが必死で探している」
「あ…。そうでしたね。それはまだ、解決してないんですね」
「もう、ひかりさんや、昴くんが闇のエネルギーを浄化したから、事態ががらりと変わるだろう。それも、こちらの次元のひかりさんは、昴くんのことを信頼しきって愛しているようだから、何もかもうまくいくとは思うが、だが、私たちも協力しないとならないことは、たくさんあるはずだよ」
「はい、お父様」
「昴くん、犯罪者になって、捕まったりしないですよね?」
私は、いきなり心配になって聞いた。
「警察に、父は知らせてないとは思います。でも、周りが変だってことに感づいたら、わからないです。昴くんが疑われてたりしてないですよね?」
「疑われてるのよ」
ノエルさんが、静かにそう言った。
「え?」
私は、動揺した。もし、昴くんが捕まったりしたらどうしよう…。
「安心しなさい。警察にはまだ、連絡は入ってないようだ。それにもし、連絡が入ったとしてもどうにかなるだろう」
白河さんがにっこりと、微笑んだ。
「白河さん!」
そこへ、漆原さんが走ってやってきた。
「今、署の人に確認しました。どうやら、星野建設の社長…、あ。ひかりさんのお父さん、警察に連絡をしたようです」
「え?」
私は仰天した。
「でも、そんな…。私がいなくなったこと、公に知られたりしたら、会社の名誉に…」
「いや、公表したりしないはずだ。なにしろ、誘拐された可能性も、考えるだろうしな。よし、私も仕事に戻ろう。連絡は、いつでも取り合えるようにしてくれ。あとノエル、探偵の中にいるものに様子を聞いてくれ。それから、漆原くん。警察の中の仲間にも連絡を」
「あの…、仲間って?」
私が聞くと、
「いろんなところにいるのよ、高い次元から来てる仲間が…」
と、ノエルさんがそう言った。
「だから、安心して。それにお父様は、警視総監だから」
「ええ?!」
私は、思い切り驚いてしまった。
「星野さん、知らなかったの?」
誰かに、そう聞かれたが、
「こっちの次元のひかりは、まだ、そういうこと知らないんだ」
と昴くんがそう答えた。昴くんを見ると、なにも慌ててる様子もなく、ひょうひょうとしていた。
「あの…、昴くん?」
「え?何?」
「心配じゃないの?」
「何が?」
「だって、警察にうちの父、知らせたって」
「?それが?俺、警察に知らせたら、殺すなんて脅しもしてないし。あはは…。ひかり、心配しなくても、俺、ひかりのこと殺したりしないから」
「そ、そうじゃなくって!昴くんが、警察に捕まったり」
「え?俺が?なんで?」
「だって…」
「大丈夫だよ、心配しなくても。こんだけ仲間もいるし、悪いことは起きないよ。ま、それがミッションの一つなら別だけど」
昴くんは、のんきにそんなことを言ってから、
「あれ?まさか、ノエルさん、それが次のミッションだったりしないっすよね?」
と聞いていた。
「ええ。捕まったりしたら、ミッション遂行できないわ。だから、捕まるようなことは絶対にないから、安心して」
「はい!」
昴くんは、にっこりと微笑んだ。この、絶対大丈夫という、確信はいったいどこから来ているんだろう。
「心配してもしょうがない。それより、部屋に戻ってさ…」
「え?」
『いちゃついてる方がよっぽど、地球のためになるよ』
と、心で続きを言ってきた。
『い、いちゃついてる方が?』
私も、心で返事をした。
『そう。さ、戻ろう、あとのことは、白河さんに任せよう』
『でも…』
『いいから』
昴くんは私の手を取り、さっさと歩き出した。
「昴くん。いいの?」
「何が?」
「だって、ノエルさんや白河さんに任せたままで」
「俺らが出来ることは何もないよ。今はね。そうだな、心配をしないってことが1番、俺らが出来ることかな」
「……」
こっちの次元の私には、いまいちピンとこなかった。何もしなくてもいいの?どうして、みんなは私と昴くんのために、動いているの?
部屋に入りドアを閉めると、昴くんは、
「それは、みんなのミッションだからだよ」
と、私の心の声に答えた。
「え?」
「みんなで地球がアセンションするミッションを遂行してるんだ。もう、俺らは、自分がしたいことでなく、すべての存在がすべてのために動くことを、実行してるんだ」
「だったら、私たちも」
「今はないんだよ、俺らのすることは…。だけど、ちゃんと俺らがしなくちゃならないことは、起きてくるから」
「起きてくる?」
「そう。今は、まず心配しないこと。心配は負のエネルギーなんだ。黒い霧が出る」
「え?そっか」
「うん。白河さんやノエルさん、漆原さんを信じること。信頼のエネルギーは光だよ」
「うん、わかった」
昴くんは、ベッドに腰掛けると、
「ひかりはここ」
って、昴くんのすぐ横に私を座らせた。
「いつものひかりと同じように、接していいって言ったよね?」
「え…?うん」
「じゃ、遠慮なく、そうさせてもらいます」
「え?」
「あはは…。なんか、びびってる?」
「だ、だって…」
いちゃつくってこともわからないし、男の人と付き合ったこともないし…。
「ああ、そっか。付き合ったこともないのか」
あ…、私が考えてること、わかっちゃうのか。
私は慌てた。思ってることが全部通じちゃったら、かなり恥ずかしい。
「恥ずかしくないって」
「ま、また聞こえてるの?」
「うん。全部聞こえちゃう」
え~~~~!!!!どうしよう。もう、何も考えないようにした方がいいのかな。
「くす…」
え?笑われた?!
「あはは…。ひかり、可愛い。なんていうか、そういうところ、全部に共通してるよね」
「共通?」
「どの次元のひかりも、そういうところあるからさ」
「え?そうなの?高い次元の私も?」
「うん」
昴くんは、にっこりと優しく微笑んだ。
これ…。この笑顔にずっと、まいってる私がいる。どうしてこうも、無邪気に笑えるんだろう。
「……」
昴くんが、少し照れた顔をした。
「え?俺が?」
「え?」
「俺、照れてないよ」
「……」
でも今…。
「照れてないって…」
そうなの?
「ひかり、今日って何日だっけ?まだ、年明けてないよね?」
「え?うん…」
「ひかりを誘拐したのが、29日だろ?」
「うん。仕事納めの日だから。だから今日、30日」
「いや、ひかり丸1日以上、気を失ってたから、今日、31日。あ、大晦日だ」
「え?1日気を失ってたの?」
私は驚いていた。
「うん。その間、高い波動のひかりが表面に出てて、こっちの次元の俺の闇、浄化しててくれたから」
「……」
そうだったんだ。
「まったく、その時の記憶は残ってない?」
「うん」
「思い出せない?」
「え…?うん…」
「そっかあ…」
「今、昴くんって高い次元の方なんだよね?」
「俺?うん、そうだよ」
「じゃ、こっちの次元の昴くんのときの記憶、ないんでしょう?」
「あるよ」
「え?」
「心の奥から見えてたし、感じてた」
「そうなの?じゃ、私はなんで?」
「心閉じて、奥深くに眠ってた…、からかな?」
「私が?」
「うん」
「……」
私はまた思い返そうとしたが、やっぱり記憶はなかった。
『じゃ、高い次元のひかりが、こっちの次元の俺と、愛し合ったのも覚えてないんだ』
「え?」
昴くんの心の声がして、聞き返した。
「あ。聞こえちゃった?」
「ど、どういうこと?」
「う~~ん。安心して。こっちの次元の俺に、犯されたとかじゃないから…」
「???」
ど、どういうこと?愛し合ったって?え?でも、体は私なんだよね…?
こっちの次元の私は、頭が真っ白になっていた。
「うん。体はひかりで、心は高い次元のひかりで。魂は一緒なんだけど、その…」
「え?え?!」
私は思い切り、動揺した。じゃ、私…、私もう…。
『あ…そっか。ひかりって男性経験なかったんだ』
知ってたの?あ…。ばれちゃったの?
「え?だって、自分で誰とも付き合ったことないって言ったじゃん?」
「あ…」
…だから、昴くんのぬくもりとか、髪とか、頬とか、覚えがあるような感じがしたの?
「そうかも。でも、高い次元のひかりの感覚と混ざってたのかもしれないし…」
「高い次元では、私と昴くん…」
「うん。だから、思い切りいつも、いちゃついてたって言ったじゃん」
「……」
い、いちゃつくって…。
「あ。そっか。いちゃつくってのが、わからないのか…」
昴くんは、ちょっと首をかしげて考えてから、
「ま、いっか。そのうちにわかるよ」
と言って笑った。それから、そっと私を抱きしめた。
ドキ!私の胸が高鳴った。
どうしよう…。ドキドキして、どうしていいかわからなかった。
『うそ…』
昴くんの声が聞こえた。
『え?』
『いや、ひかりの反応が、すごい新鮮だなって思って』
え…?
『わ。なんだか、こっちまで緊張する』
昴くんはそう言うと、私の髪を優しくなでた。それから、私に優しくキスをしてきた。胸がまた、きゅんってする。昴くんは優しくそのまま、ベッドに私を寝かせ、首筋にキスをする。
怖い…。いきなり私は、怖くなった。
『怖い?俺が…?』
昴くんは、心で聞いてきて顔を上げた。
『ううん…。昴くんがじゃなくて…』
きっと、男の人を知らないからかもしれない。どうしていいかがわからなくって怖い…。緊張する。体がこわばる。
『ひかり、愛してるよ』
昴くんが、光で包み込んでくれた。ホワ…。体があったまっていく。それから、優しくキスをしてくれた。
フワ…。体が、空中に浮いてるかのように軽く、そして気持ちがいい。光にどんどん包まれる。心が愛で満たされていくのがわかる。
昴くんの目を見た。優しかった。
「昴くん…、なんでそんなに優しい目をしてるの?」
思わず私が聞くと、
「ひかりも、優しい目をしてるよ」
と昴くんに、言われた。
「私も?」
「うん…。俺のこと、優しく見つめてるよ…」
私が…?
昴くんのことを見つめた。ああ…。そういえば、心の奥からあったかいものが溢れ出てくる。そうして、私から光が飛び出す。愛しい…。昴くんが、すごく愛しい…。
胸がドキドキしてるのに、心が満たされる。昴くんに触れられたところが、脈を打つ。そして、昴くんの全部が愛しくなる。目も、髪も、鼻も、唇も、ほくろも、指も、耳も、腕も…。
私も、そっと昴くんに触れてみる。そのたび、私から光が溢れ昴くんを包み出す。
人を愛するって、こういうことなんだ…。愛されるって、こういうことなんだ…。
心が、ものすごく広がって、宇宙空間のように無限に広がって、開放されていく。体も、心も、昴くんと一体になっていく感覚がする。
「ひかり…。愛してるよ」
昴くんが優しく、耳元でささやく。その声も、愛している。私と昴くんの光が、混ざり合いながら、どんどん広がる。部屋から外へ、どんどん光が放たれていく。
「見える?」
「え?」
「光が見える?」
昴くんが、私に聞いた。
「うん…。ものすごく奇麗できらきらしてて、あったかい…」
「ね?だから言ったでしょ?」
「…?」
「俺ら、いちゃついてるのが、地球のためになるって。こんなすんごい光が、地球を覆うんだ。影も、闇も、光で包み込んじゃうよ」
「そうだね…」
私は光を見ていた。どんどん部屋から宇宙空間へと、広がっていく光…。すごい…。愛し合うとこんなにも奇麗で、あったかい光が放たれていくんだ。
「愛はね。宇宙本来のエネルギーだから」
「…愛が?」
「幽体離脱したときに、感じたでしょ?」
「うん。ものすごい光になった」
「そう。あの光、あれが俺らの本当の姿。愛のエネルギーだよ」
「私たちの姿…。それも、存在すべての…だよね?」
「うん。みんな愛なんだ」
「……」
私は感動して、泣いていた。父も昴くんのお父さんも、この光なんだ。そう思うと嬉しかった。
「ひかり…。お父さんのこと、許せる?」
昴くんが、私に優しく聞いた。
「うん。お父さんのこと、愛してるもの…」
「うん…。きっと、それがひかりのミッションだね」
「え?」
「まだ、こっちの次元のひかりが表面に出てるのは、それが、ひかりのすることだからだと思うよ」
「私のミッション?」
「愛で、お父さんの中にある闇のエネルギー、包み込もう」
「…うん」
私は、涙を流しながらうなづいた。昴くんもきっと、一緒に光で包んでくれる。そう確信していた。
『うん。ひかりと一緒に、光を出すよ』
『ありがとう…』
『え?』
『だって私の父は、昴くんのお父さんのことを…』
『こっちの俺はもう、それも全部許してるから。それも、ひかりが愛と光で俺と、親父を包みこんでくれたから親父も俺も、許せることが出来たんだ。だから、今度は俺の番。俺が手伝う番だよ』
『うん…』
昴くんと、しばらく布団に潜り込み、抱き合っていた。昴くんは私のおでこや、鼻や頬やあごにキスをしてきた。そして、後ろから抱きしめ、髪や首にキスをしてくる。
『わあ…、昴くんのキス攻めだ…』
私は、キスをされるたびに、ドキドキと胸を高まらせていた。
『だって、ひかりの全部が愛しいんだもん』
昴くんが、心でそう言った。その言葉に、また恥ずかしいような嬉しいような、照れくさいような気持ちになった。
『ああ…。大変、とけちゃうかもしれない。私…』
『え?とけちゃう?』
『ああ。これも聞こえちゃってるんだ…』
私はきっと、真っ赤になった。
『うん。耳まで赤いよ』
『わあ…』
すんごく恥ずかしくなった。
トントン…。
「昴…」
「悟さん?!」
「話あるんだけどいい?」
「あ…。ちょい待って!もうちょい待って!」
昴くんは、慌てて布団から出て、服を猛ダッシュで着ながら、
『ひかりは待っててね。俺、廊下に出て話してくるから』
と心で私に言い、ドアをそっと開け部屋を出て行った。
私は、そっと脱いだ服を布団の中に引き寄せ、布団の中で着るとベッドを抜け出た。
『なんの話かな…』
話し声はしなかった。ベッドに座ったまま、私は昴くんが戻ってくるのを待っていた。
ガチャ…。昴くんがドアを開けた。
「ひかり…。あ、服着た?」
「うん」
「漆原さんから連絡入ったって」
「うん…」
私は少し不安になった。すると、黒い霧が出てしまった。
「あ…。どうしよう…」
昴くんは、その霧を光で消して、
「大丈夫、心配しないで。漆原さんがもう少ししたら、戻ってくる。そうしたら、車に乗って警察行こうって」
「警察?ど、どうして?」
「警察にお父さんが、ひかりが行方不明だと届出をした。それで、すぐにひかりの居場所がわかり、警察で保護した。そこに、お父さんが迎えに来る…っていうシナリオなんだってさ」
それなら、昴くんが誘拐したことにはならない!
「うん。家出ってことになってる」
「家出?」
「ひかり…、結婚が嫌だったり、お父さんの人形でいるのは嫌だって言ったろ?それをきちんとお父さんに言うチャンスだよ」
「……」
言えるだろうか?
「言える。それも、お父さんのことをちゃんと、愛してるって気持ちをもったまま、言える」
「え…?」
「もしそこで、憎しみや、恨みを持ったまま言ったら、お父さんには伝わりにくいかもしれない。でも、もうひかりの闇のエネルギーは浄化されてるし、大丈夫。ひかりのお父さんだって、本当は愛の存在なんだから」
「うん」
「愛じゃない存在なんて、この世界にいないからさ」
「うん…」
昴くんはにこって微笑んで、それから、私の上着を持ってきてくれた。
「はい…。俺は一緒に行けないけど」
「え?昴くん、来れないの?だって、光を送ってくれるって…」
「う~~ん。白河さんがね、さすがに俺が一緒にいたら、まずいだろうってさ。ひかりのお父さんのせいで、自殺した天宮の息子が一緒にいるのはおかしいって。俺、たたでさえ疑われてるから」
「そ、そうだよね…」
そりゃ、そうだよ。一緒にいたりしたら、昴くんが連れ去ったって思われちゃうかもしれないじゃない。
「わかった。私、行ってくる」
「うん。遠くにいても光を送る。それに、もし何かあったら、俺、すぐに魂で飛んで行くから。ね?」
「うん…」
私は、昴くんのあったかいエネルギーを感じて、安心した。
私は上着を着ると、昴くんと一階に行った。玄関には、悟さんって人やノエルさんがいた。
「ひかりさん。大丈夫よ。あなたなら、お父さんの闇のエネルギーも消せるわ。あなたの中にいる高い次元のひかりさんも、心の奥から光を出してくれる。それに、昴くんは遠くからでも、あなたのことを感じて、光を送れる。私たちも光を、ずっと送っているからね」
ノエルさんが、私にそう言ってくれた。私は、黙ってうなづいた。
「あ。漆原さんの車が来たわ」
ノエルさんがそう言うと、玄関を出て行った。私と昴くんもあとに続いた。
「ひかり…。大丈夫だからね。漆原さんもそばにいるし、白河さんもいてくれるそうだから」
「うん…」
私もにこって微笑んで、昴くんにハグをした。
「行ってくるね。そして、必ず昴くんに会いに戻ってくる」
「うん。待ってるよ」
昴くんは、優しく私の髪にキスをした。
私は、漆原さんの車に乗り込んだ。運転席には知らない警察官がいて、助手席にも誰かが乗っていたが、
「みんな、高い次元の人だから大丈夫だ。安心して」
と漆原さんが、言ってくれた。
「じゃ、漆原さん、ひかりのこと頼みます」
昴くんはそう言うと、私の乗った車のドアを閉めた。バタン…。昴くんの顔を見ると、すごく澄んだ優しい目で、私のことを見つめながら、
『ひかり、愛してるよ』
と心で言って、光を送ってくれた。
『昴くん、私も…』
私からも光が飛び出した。
車は発進した。私は昴くんの姿が見えなくなるまで、昴くんのことを見ていた。昴くんは、ずっと手を振っていた。
…見えなくなると、いきなり不安が襲ってきた。まるで、親を見失った子どものように。でも次の瞬間、声がした。
『大丈夫。俺ならいつも、ひかりといる。ね?俺のこと、感じられるでしょ?』
『昴くん!』
私はほっとした。本当だ…。昴くんのエネルギーを、じかに感じることが出来る。
『行っておいで。お父さんのこと、まるごと愛で包みこんでおいでね』
昴くんの優しい、あったかい派動を感じた。
『うん、昴くん』
私はそう心で言うと、安心して背もたれによっかかり、ほっとため息をついた。
「昴と心で、会話が出来るの?」
漆原さんが聞いてきた。
「はい、できます」
「そうか、じゃ安心だ。昴、きっといつでもひかりさんと、いてくれるよ」
「はい」
漆原さんも、優しく微笑んでくれた。本当にみんな、優しいあったかい人ばかりだ。一緒にいて、安心できる。やっぱり、波動が高いからなのかな…。
車はどんどんと山道を下り、そして、高速に乗っかりスピードをあげた。車は警察の車で、時々無線から声がした。
「星野ひかりさんを、無事、保護しました」
助手席の人が、そう無線で連絡をした。その返事が返ってきて、しばらく応対が続いた。
「さて、わかってるよね?白河さんから言われたことを、守って対処してくれ」
漆原さんがそう言うと、運転していた人と助手席の人が、同時に、
「はい」
と答えた。
車は警視庁に到着した。私は漆原さんに、背中を押されながら警視庁に入っていった。そのあとを、助手席の警察官が続いた。
そのままエレベターに乗り込むと、最上階へとエレベーターは昇った。
「白河さんがいるから。ひかりさん、初めて会ったようにちょっと演技してくれる?そこに、お父さんもいるはずなんだ」
「え?お父さんも?」
「警視総監に、じかに会いに来て、多分、今回のことを内密にして欲しいと頼んでるんじゃないかな」
「父は、そんな力があるんですか?」
「まあね。だけど、内密にも何も、無事保護されたんだし何もないと思うけどね」
「お父さん、私が家出したって信じてるんですか?」
「信じてると思うよ、前にもあったって言ってたとか」
「はい。その時には本当にすぐ、見つかってしまって連れ戻されたんです」
「じゃ、今回も家出だって、信じてるんじゃないかな」
「……」
私は、不安でドキドキしていた。
『昴くん』
『うん?』
『聞こえてるの?』
『聞こえてるよ。大丈夫。安心して』
『でも、私、演技なんてできるかどうか』
『白河さんに任せるんだよ。大丈夫』
『うん』
父の顔がまともに見れるだろうか…。父は嘘を見破らないだろうか。いろんな不安が私の頭の中をよぎるが、そのたびに、いや大丈夫って自分に言い聞かせた。私の心には、高い次元の私だっているんだから…。
エレベーターが着いた。漆原さんが、先に歩いて誘導してくれた。
「ひかりさん、大丈夫だから」
漆原さんは、小声でそう言った。
漆原さんはあるドアの前で立ち止まり、ノックをしてドアを開けると、
「星野ひかりさんをお連れしました」
と言いながら、お辞儀をした。
「入りたまえ」
白河さんの声がした。私は、漆原さんに背中を押され部屋に入った。
大きな窓ガラスの前に、テーブルとソファがあり、そこに腰掛けていた父が立ち上がった。父の隣には、兄もいた。それに、父の秘書も…。
「ひかり…」
父は、少し声を震わせ私を呼んだ。
「ひかり!お前なんでまた、家出なんか!」
兄が私の方に、早歩きで向かってきながらそう言った。
「まあまあ、お兄さん。落ち着いて」
白河さんが、そう言って席を立った。
「星野さん、無事で何よりですよ。無事で見つかったことが、1番じゃないですか?」
白河さんはそう言うと、私を父の前の席に座らせた。
父は立ち上がり、白河さんに、
「いや…。内密に動いて探してくれて、本当に感謝しています」
と頭を下げて言った。
「今回は、家出かどうかもわからなかったわけですから、あまり騒ぎ立てるのは良くないと、われわれも判断しました。昨今、あまりいいニュースは聞きませんでしたからね」
「はい…。でも、もし誘拐なら、犯人からの何か連絡が入ると思ったんですが、1日以上待っても来なかったものですから、白河さんの方に連絡を入れたわけです」
「いや、良かったですな。誘拐でなくて…」
「はい。私も逆恨みをされることも多いですから。本当に今回は心配しました」
「心配してたの?お父さん」
「当たり前だろう?それも、一ヶ月後に結婚を控えてるんだぞ、大事な…」
兄が私にそう言った。私は、父に向かって、
「私のことが、心配だったの?それとも会社?」
と聞いた。
「ひかり、そんな子どものようなことを言うもんじゃないぞ」
兄がまた口をはさんだ。
「私はお父さんに聞いてるの」
「ひかり…。私も同意見だ。お前の軽はずみな行動は、子どもじみてる」
「……」
私は黙り込んだ。黒い霧が飛び出てるのに気がつき慌ててしまうと、隣から漆原さんも、白河さんも光を出し消してくれた。
「まあ、みなさん、座りましょうや…。そうだ。お茶でも入れてくれるよう、頼んでくれないか?漆原くん」
「はい」
漆原さんはそう言うと、すっと静かにドアを開け、部屋の外に出て行った。
「星野さん。私にも娘がいます。ひかりさんよりも少し年上の…。やはり、大事な娘ですよ」
「そうですか。白河さんにもいらっしゃるんですか」
「もし、うちの娘が家出をしたら、やはり探して連れ戻すでしょう。そして1番にすることは、家出の原因を聞くことだと思いますよ」
「…原因ですか?」
「原因がなくて、家出をしますか?」
「……」
「ひかりさんをお見受けしたところ、良識のある大人の女性と思えます。その方が家出となると、よほどのことではないですか?」
「白河さん、これは私たちの問題です。あまり、口をはさんでいただきたくないな」
「ですが、こうやって内密に探すのも、われわれも苦労したわけです。見つかって、はい、引き渡しましたでは、なかなかすまされないことですよ。小さな迷子を見つけたわけではないですからね」
「お礼はきちんとします」
「いや、それは受け取れません。ただ、こんなことが2度とないように、話し合われたらどうですか?こんなことを言うのは、なんですが、家出をするという年齢でもないでしょう。もう、大人です。何を行動するかもひかりさんが判断し、決定をしていい年齢ですよ?家を出て一人で暮らす、仕事を変える。結婚相手を自分で選ぶ…。すべて、ひかりさん本人が選択できる年齢でしょう」
「白河さん、私の家は、普通の家ではない」
「と言いますと?」
「会社を大きくするためには、娘の協力も得なくちゃならない」
「ほお…。娘さんは、会社の犠牲になってもいいと?」
「犠牲?何をおっしゃいますか?娘の幸せにもなるんです。私は、娘にあった、娘が幸せになる相手を見つけてあげたんですよ」
「あなたが?娘さんが選んだのではなく?娘さんの意思はどうなるんですか?」
「私の言うことをきいていたら、幸せになるんです」
「ロボットですか?」
「白河さん、言っていいことと、悪いことがありますよ。だいたいそんなこと警察が、あれこれ言うことではないのではないですか?」
兄が、父と白河さんの会話に入ってきた。
「そうですね。私が言うことではありませんでした。きちんとひかりさん、あなたから言うことですよ」
白河さんはそう言うと、私を優しく見て光を出してくれた。
『ひかり。ちゃんと、お父さんのこと愛してるって、光を出しながら言うんだ』
昴くんの声がした。
『自分の思いを、きちんと言うんだ』
『うん』
『俺も、光を送ってるから』
『うん…』
私は、昴くんからのあったかいエネルギーを思い切りそのとき感じて、胸が熱くなった。
「お父さん、私、結婚しない」
「ひかり?何を言ってるんだ。そんなことになったら、会社はどうなるんだ」
「今まで、ずっと我慢してた。したいこともしないで、恋愛だってしないで、会社のため、ううん、お父さんのために尽くしてきた。でもそれはずっと、お父さんに愛されたくてしてきたことだったの」
「…え?」
「私は子どもの頃、お父さんとお兄さんとお母さんと、動物園に行ったり遊んだりしたことが、1番幸せだった。あの頃に戻りたかった。あの頃のお父さん、大好きだった」
「……」
父も兄も、何も言えずにいた。
「お父さんのことが、大好きだった。だから嫌われたくなかったし、愛されたかった。だから、ずっといい子でいた。そりゃ、途中で家出もしたし反発もした。だけどまた戻ってきたのも、お父さんや家族を愛してたから。犠牲になってたのも愛してたから…」
「…ひかり?」
父は、驚きの表情を隠せないでいた。兄も同じだった。
「私、でもお父さんに愛されてないってそう思った。いつまでたっても、お父さんにとって私は人形なんだ。駒でしかないんだって。結婚も会社のためにするなんて、耐えられなかった。もう、何もかも嫌になって飛び出したの」
「……」
父は、黙って私を見ていた。私は涙を流しながら、話を続けた。
「わ、私が、もし死んでたらどうする?」
「死ぬ?」
「結婚も何もかも嫌になって、自殺してたら?」
「…まさか、そんなに愚かな娘だと思ってないよ」
「愚かって何?お父さんは、私のこと愛してるの?」
「…もちろんだ。だから今まで、ずっと…」
「何をしてくれたの?愛してくれてた?本当に大事に思ってくれてた?」
「もちろんだ…」
「自分のものって扱ってなかった?人形か、ロボットみたいに」
「ひかり!私はいつでも、お前や広輝のためを思って、頑張ってきたんだ。会社も広げ、大きな家に住み、いろんな勉強をさせ、留学までさせてあげた」
「そんなの私、望んでない。私はお父さんやお母さんと、一緒にいられることが幸せだった」
「そんなことで、幸せは得られない」
「ううん。十分、幸せだった。小さな家だって関係ない。そこで家族で笑いあって、一緒にいられて、それが1番の…」
「ひかり!父さんが頑張ったから、お前は贅沢が出来たんだぞ。父さんは、一代であんなに会社を大きくして」
そう兄にまで言われて私は、
「人のことを、死に追いやってまで?」
と、思わず、昴くんのお父さんのことを言ってしまった。言ってから、すごい黒い霧が出ていることに気がついた。でも、またすぐに白河さんが、光を出してくれた。
「失礼します」
漆原さんと婦人警官が入ってきて、お茶をテーブルに置いていった。それから、婦人警官が出て行き、漆原さんは何かを、白河さんに耳打ちしていた。
「うむ…」
白河さんは、小さくうなづいた。
「あ、失礼。気にしなでください。まあ、このご時世、いろんな事件がありましてな」
と、まるで他の事件の事でも話しているかのような、そぶりを見せた。でも、多分違うだろう。
「何が幸せかは、その人それぞれかもしれませんな」
白河さんは、落ち着いてそう言って、
「ですが、何が1番自分にとって大事だったかは、なくならないとなかなかわからないものです。それを失う前に気づけるかどうか…。そこだと思いますけどね」
と続けた。
「……」
父は、黙って白河さんを見ていた。
「先ほど、ひかりさんが言ってましたね。もし死んでいたらどうしたか…。これがもし、誘拐だとして、ひかりさんの命がなかったら、あなたはどうしていますか?」
「……」
父は、しばらく黙って、
「許せないでしょうな。相手のことが…」
と憎憎しく言った。
「まあ、相手のことはおいておきましょうよ。それよりも、ひかりさんに対してはどう思いますか?」
「……」
「ひかりさんに、会いたくても会えなくなるわけです。もう、この世にいないわけですから。どうしますか?」
「どうも何も…」
父はそう言うと、ぐったりと肩を落とした。それから、少し宙を見つめた。
「…白河さん。あなた、娘さんの命が危ないとか、消息を絶たれたことがありますか?」
「いえ。ないですね」
「じゃあ、わからないでしょうな。その時の気持ちは」
「私は体験していませんから…。でも、そういった家族には会ってきましたよ。いろんな事件がありますからね」
「みなさん、子どもが死んで、正気でいられないんじゃないですか?」
「まあ、そうですね」
「ひかり。さっき、死に追いやったっていう話をしたね」
「うん…」
「自殺をしたのは、彼が弱かったからだ。私のせいでもなんでもないと、私は思っていたよ。いや、今もそれは変わらない」
「でも、実際にお父さんが…」
「確かに、彼は会社を手放した。でも、彼には家族もいた。それも捨てて、命を絶った」
「……」
「だが、彼の家族はどれだけ傷ついて、どれだけ私を恨んだか…。ひかり、お前がいきなりいなくなって、絶対にこれは彼の家族の仕業だと思った。探偵を雇ったら、昴って息子も消息を絶ったと連絡をしてきたから、彼がお前を誘拐したんじゃないかってね」
「……」
やっぱり、昴くん疑われてた。
「父親が自殺して、お前をさらうなんて逆恨みだ。だがもし、それでお前が殺されてたら、私はその息子を許さないだろう。同じように殺すかもしれない。正気ではいられないだろう。精神をおかしくしてるかもしれない」
「……」
「白河さん、わかりますか?たったの3日です。でも、生きた心地なんてしなかった。この私の気持ちが」
「…星野さん、失礼した。本当に失言でした」
白河さんは、頭を下げた。
「ひかり、父さんは、ずっと眠ることもできなかったんだぞ。お前が殺されてやしないか。電話があるたび、脅迫電話じゃないかって、僕だって恐れおののいていた。警察に知らせるのも、もし知らせたことが犯人にわかったら、それで殺しやしないか…。そりゃもう気が気じゃなくて、こうやって、白河さんに頼みに来たのも、決死の覚悟だったんだ」
兄は、真剣な表情でそう言った。
「ひかり…。お前は私に愛されてないと思ってたと言ったが、愛さないわけはない。お前は大事な私の娘だ」
「……」
初めてそんなことを聞いた。
「……」
父はうつむいて、両手で顔を覆った。そして、
「ふう……」
と、長いため息をつくと、
「お前にとっての幸せは、家族が一緒にいることか…」
と小さく、つぶやいた。
「1番大事なものは、なくなってわかると言いましたね?白河さん」
「はい、言いましたよ」
「失う前に気づくかどうかだとも言いましたね」
「はい…」
白河さんは、深くうなづいた。
「私は、失いそうになって気がつきましたよ。そう…。家族です。娘の命です。今回、身にしみてわかりました。ただ、無事に帰って来てくれたら、もう1度娘に会えたら、そんなことばかりを思いました。冷たい体で帰ってきたりしないでくれ。あったかい、血の通った娘に会わせてくれ、そう神にまで祈りましたよ」
「お父さん…」
私は父の言うことを聞き、泣いてしまった。
「ひかり…」
父も目を真っ赤にさせていた。
「生きていてくれるだけで、本当はもうそれだけでいいんじゃないですか?」
漆原さんがそう言った。
「僕はいろんな事件を担当し、お子さんに亡くなられた親御さんも見てきました。みなさん、決まって言うのは、生きていてくれるだけで、それだけで良かったのに、そんな言葉です。特に自殺をしたお子さんの親御さんは、たくさんのことを求めすぎた、もっと、わかってやればよかった、もっと認めて、愛せば良かったって言ってます」
「そうだな…」
父は、下を向きながらそう答えた。
「父さん…」
兄は、何かを言いたそうにしたが、あとの言葉が続かないようだった。
「ひかり、結婚は嫌か?」
父が小さく聞いてきた。
「私、自分で結婚相手は選ぶし、人生も自分で選択していきたいの」
「そうか…」
父はそう言うと、しばらく黙り、
「じゃあ、ひかり、お前は何をしていきたいんだ?」
と聞いてきた。そんなことを父が聞いたのは、きっと私が生まれて初めてだろう。
「私は…、私は苦しんでたり、悩んでる人の何か、役に立てる仕事がしたい」
「…え?」
「それが何か、わかってないけど…。でも、この世界から、苦しみをなくしていきたいの」
「そんなことを考えていたのか?」
「ううん。つい最近思ったこと。自分がいろんなことを体験して、そう思ったの。優しさや、あったかさ、光や愛に触れたら人は変わる、そんなことを体験したから…」
「優しさや、あったかさ?」
「そう」
「お前、家出をして、どこに行ってたんだ?」
「ある人に会って…。その人から、たくさんのことを学んで…」
「誰だ?」
「それは言えない。でもその人たちと、何か人のためになることをしていきたい」
「ボランティアか?」
「わからない…」
「そうか」
父は、腕組みをすると、
「お前はお前で、人生をどう生きるか、ちゃんと考えたんだな」
と、そう言った。
「お父さん、家を出ることと会社を辞めること、許してくれる?」
私は思い切って、そう言ってみた。
父はしばらく黙って、私を見ていた。それから静かに口を開け、
「ちゃんと、生きて幸せになってくれるなら、それだけで満足だよ」
と、少し微笑みながら言った。
「父さん?本当にいいのか?じゃ、長田建設との合併は…」
兄が驚いて、父に聞いた。
「長田建設の社長にも、徹郎くんにもひかりの意思を伝えよう。もし、それで合併の話がなくなっても、それは仕方のないことだ。」
「父さん!?」
「こんなやり方をしないでも、会社を存続させることは出来るはずだよ、広輝。お前にそろそろ託そう」
「え?」
兄が驚いていた。
「ひかり…。時々は家に戻りなさい。そして、元気な顔を見せなさい。もし、疲れた顔をしていたり、病気にでもなっていたら、すぐに連れ戻す。いいね?」
「はい」
父は、ものすごく穏やかな顔をしていた。
「お父さん、ありがとう…。それから、お父さんのこと私大好きだから。遠く離れていたとしても、大好きでいるから」
私はそう言うと、父に向かって光を出した。その光はものすごく輝き、部屋中を包み込んだ。
「私も、ひかりのことを愛しているよ」
父の言う言葉から光が発せられ、私の光と混ざり合っていた。
父はそっと、私を抱きしめると、
「さあ、広輝、そろそろ行くとするか」
と言って、白河さんに深くお辞儀をした。それから、部屋のドアを開け、
「そうだ。お母さんは、お母さんの実家にいる。そこで、お前のことを心配して寝込んでるよ」
「え?!」
「行って、顔を見せて安心させてあげなさい」
と言い、部屋を出て行った。
「ひかりさん、よくお父さんに光を出し、包みこんであげられたね」
白河さんが、私の肩に優しく手を置き、そう言ってくれた。
「はい。ですが、先に父の方が、自分の思いを言ってくれたから…」
「昴くんと、ひかりさんの闇のエネルギーを浄化し、派動をあげたから、起きてくることも高い次元でのことになったんだよ」
「高い次元?」
「愛だ。ひかりさんのお父さんは、愛を感じ、それをひかりさんに伝えたんだ」
「はい…」
私は、思わず涙を流した。
『ひかり、良かったね』
昴くんの声がした。
『うん。昴くん、私、お母さんに会ってから、本山に戻るね』
『うん。待ってるよ』
昴くんはそう言うと、また、あったかいエネルギーを送ってくれた。
私は漆原さんの車で、母の実家に行った。母に会うと、母は泣いて、私を抱きしめた。
「ひかり、もう、こんな心配はかけないでちょうだい」
母にそう言われ、私は泣きながら謝った。そして、父に言ったことと同じように、会社も結婚することもやめ、人のために役立つことを、これからしていきたいと告げた。
母は、それに対して反対もせず、よくそれをお父さんに言えたわね、良かったわねと、そう言ってくれた。
「時々、お母さんにも会いに来るからね。私のことは心配しないでね」
そう言って、母の実家をあとにした。漆原さんは、本山に車を走らせてくれた。
「ひかりさん、本当に良かったね」
「うん…」
私はすがすがしい気持ちになっていた。そして、もうすぐまた、昴くんに会える喜びでいっぱいだった。
車が到着した。その音で、昴くんが屋敷をとび出してきた。
「ひかり!おかえり!!」
私は急いで車から降り、走ってくる昴くんのもとへと駆けて行った。そして、昴くんに思い切り抱きついた。
「昴くん、ただいま」
今朝、別れたばかりなのに、しばらく会えていなかったような、そんな感じもして、昴くんに会えてものすごく嬉しかった。
昴くんは、私をギュって抱きしめたまま、
「良かったね、ひかり。わかってもらえて、本当によかったね」
って優しく言ってくれた。それから昴くんに肩を抱かれて、屋敷の中に入っていった。
大広間に行くと、そこにはノエルさんたちがいて、
「おかえりなさい。父から連絡が来てました。よかったですね」
と優しく出迎えてくれた。
「はい、ありがとうございます」
「雨降って、地固まる…かな?」
悟くんがそう言った。
「さあ、これで、次のミッションに移れますね」
ノエルさんが、私と昴くんにそう言った。
「次の?」
「そう。多分、あなたたちが1番の適任です」
「え?」
私と、昴くんは同時に聞き返した。
「闇を光で包む…。闇すら愛せるあなたたちでなければ、できない使命です。逆に言えば、闇を光で包むことがあなたたちの使命だったんです」
「闇を光で包む…?」
「闇と戦っては、闇は消えません。逆に拡大してしまうでしょう。火に油を注ぐようなものです。闇を消すには、光で包むことです。それは、あなたたちなら、理解できると思いますよ」
「はい…。そういう経験は、十分しました」
昴くんが、真剣なまなざしでそう言った。
「そう。今までの体験も、これからのミッションのために起きていたこと…」
「はい。それもわかります」
「父が言ってました。1番のタイミングで来る。焦ることはない。これから起きてくることを、そのまま受け止め、ミッションを遂行してください。それまでは、くつろいでいてください」
「はい…」
私と昴くんは、立ち上がり部屋に戻った。
「ひかり…」
「え?」
「何が起きても、すぐ近くに俺はいるよ。そして、いつでも、どんなひかりも愛してるよ」
「うん。私も、昴くんのこと全部大好きだよ」
私はそう言って、昴くんにキスをした。
「あれ?ひかり?高い次元のひかり?」
「うん。なんか、混ざり合ったみたい。いつの間にか…」
「そう…。そっか。ミッションをクリア出来たんだね。それで、混ざり合ったのかな?」
「…昴くん」
私は昴くんに抱きつくと、
「ん?何?」
と昴くんは、優しく聞いた。
「大好き、大好き、大好き!」
私はそう言って、ギュって抱きしめた。
「え?」
昴くんは、ちょっと驚いてから、
「う。うん。俺も…」
って言った。
「あ、昴くん、照れてる?」
「俺?照れてないよ」
「うそうそ~~。照れてる。耳、真っ赤だよ?」
「これは寒かったからだよ」
「なんで~~?なんで、自分が照れてることを、認めないかな。素直じゃない~~」
「うっせえや。ひかりも素直じゃない~~。こっちの次元のひかりの方がずっと可愛いや」
「ふ~~んだ。こっちの次元の昴くんだって、もっとクールでした」
「あ、そう?クールな方がいいなら、こっちの次元の俺になってやろうか?」
「じゃ、私も、こっちの次元の私になるよ」
「んじゃ、せいのでなる?」
「いいよ!」
「せいの!!」
私は少し、心の奥にひっこんだ。こっちの次元の私は表面に現れた。昴くんは、ちょっと表情が変わった。
『変わったの?』
『変わったよ。ひかりは?』
『私は、ひっこみました~~』
そう心で言うと、表面に出た昴くんは、
「あ~あ。しょうがねえな。高い次元の俺らって、まるでガキだね」
とクールに言い、
「こっちの次元の昴くんなの?」
と、こっちの次元の私はちょっとびびっていた。
「ひかり、大丈夫だよ。取って食いやしないから」
昴くんはそう言うと、そっとキスをして、
「ね?優しくするからさ」
と、もう一回優しくキスをしてきた。こっちの次元の私はそのキスに、ドキドキしていた。
『ほら、こっちの次元のひかりの方が可愛い』
『わ~~るかったわね』
「喧嘩はいいから…。ちょっと、黙っててくれる?うっさいよ」
この次元の昴くんに、言われてしまった。
私も昴くんも、静かに黙った。それから、表面に出ていた彼らと混ざり合い、
「やっぱり、どんな昴くんも大好き」
と私が言うと、
「俺もだよ。ひかり。どんなひかりも可愛いや」
とまたキスをして、昴くんはそう言った。
さあ、次のミッションは、どんなことが起きてくるのか…。でも、私たちは二人一緒なら、何が起きても怖くない、そんなことを思っていた。
そして、いきなりその日の夜、事件は起きた。私の次元では、こんなこと映画かドラマか、マンガの世界での出来事だ。闇からの宣戦布告とでも言おうか…。
2012年に向けて、本格的にこの次元では、変動が起き始めていた。白河さんは、警察に泊まり込むことになり、漆原さんも呼び戻された。
ノエルさんは、私たち全員を呼び、瞑想をみんなでして心を鎮めた。
「今から、起きてくることも、やはりシナリオにあったことでしょう。これすら、アセンションのために起きていることだと思っています。なので、みなさん、動揺しないでください」
「はい…」
「この次元での出来事は、他の次元に影響されます。この次元の闇のエネルギーが浄化されるならば、他の次元の闇も、浄化されていくでしょう」
「……」
ノエルさんは、とても穏やかな表情だった。
「戦うのではなく、包み込む…。私たちは、愛と光の存在ですから」
「はい…」
すべての人の、心の中にある闇…。それが開放され、光に包まれる時がやってきたのだ。恐怖のようにも見えて、それも、浄化されるためのもの…。
さあ、昴くんと、光と愛で包みに行こう。私たちのミッションを遂行しに行こう。愛と光の地球へ、導くために…。