ピンク頭も、案外いいかもしれない
最終話です。
「・・・学園のますますのご発展を心より祈念して、答辞といたします。
卒業生代表 アイザック・ルシルフル」
会場から割れんばかりの拍手が送られた。
王城の舞踏会会場で開かれる、卒業祝賀会。
卒業生、在校生、その親達。だけでなくOBの先輩も出席し、主要な貴族が揃う大々的な舞踏会が開催される。
舞踏会会場の扉が開いた。さあ入場だ。
入場する卒業生の中で、ひときわ目立っているのが、答辞を読んだアイザック・ルシルフルのパートナー。
ピンク頭にアイザックの目の色と同じ、スカイブルーのふんわりドレスを着こなしたナナ・クルーガ男爵令嬢。私である。
「あのピンク頭は、クルーガ男爵家か」「なぜ、アイザック様と一緒に並んでいる」「アイザック様もピンク頭の毒牙にかかったか」
会場中がざわめき、驚きと、疑心に満ちた眼差しが私に送られる。
私は、おもわずアイザック様がエスコートする腕をぎゅっと握った。
視線が刺さる。誰も味方のいない闘技場へ連れ出されている気分。
アイザック様は、力の入った私の手に右手を乗せ、ポンポンと叩いた。
そうだ、今日は、モロウ侯爵家を断罪する日。このために、理不尽な日々を乗り越えて来たんだ。
私はその場で立ち止り、深く深呼吸。
「すー、はー」
もう大丈夫。背筋を伸ばし、真っ直ぐアイザック様を見上げる。
「流石だね。それでこそ俺の婚約者殿だ」
私達は、二人で前を向き、堂々と舞踏会会場へ降り立った。
アイザック様とのファーストダンスも無事に終え、事前の計画通り、私は1人で立食コーナーを物色中。
予想通り、赤い縦巻髪に、アイザック様の目の色と同じスカイブルー色のマーメードドレスを着た、モロウ侯爵令嬢が私に近づいて来た。
パシャ。
私のピンク頭に、赤いワインがかかる。
「ごめんなさい。くすんだピンク頭が気になって、手が滑ってしまったわ。
もう少し赤い髪の方が良いんじゃないかと思ってね。手伝って差し上げましたの。
だってピンク頭って愚か者の象徴でしょ」
私は、顔に流れてくる赤ワインを手で払いながら、相手を見据えた。
「ごきげんよう、私はナナ・クルーガ男爵令嬢です。私に何か御用ですか」
「アイザック様に媚びを売って取り入るなんて、姉もあばずれだったけど、妹も妹ね」
「私は、媚など売っていません。正当な権利です」
「気取っても遅いわ。あなたの股のゆるさは有名よ。
学園でも、複数の男子生徒と如何わしい事をしてるそうじゃない。汚らわしい。
くすんだピンク頭は、股のゆるさまで遺伝するのかしら」
「私は、如何わしい事は、一切していません」
「しらを切っても、調べは付いてるのよ。アイザック様もこんなピンク頭のどこがいいのかしら、私の方が美貌も家の格も上なのに・・・くすんだピンク頭が好みなのかしら。」
「アイザック様は、赤い縦巻髪より、ピンク頭が好きですよ」
「フン。こんな娘がいるクルーガ男爵家の社会科見学は、中止にした方が良さそうね。
あなたの母親もくすんだピンク頭でしょ。股のゆるさが遺伝するなら母親からかしら、見学する学生の身が危険にさらされるわ」
ブチン!
母親を侮辱され、私の中で、何かが切れた。断罪計画なんてクソくらえ。
私は、近くにあった、ビーフシチューの鍋を頭からかぶった。
「ほら、これで私の髪は、茶色。あなたが執着するくすんだピンク色じゃない。アイザック様が、くすんだピンク頭をご所望なら、あなたが代わりになればいい」
私は、近くにあった、クリームシチューを、モロウ侯爵令嬢の頭の上にぶちまけた。
クリームシチューで赤い縦巻髪だったモロウ侯爵令嬢の頭は、くすんだピンク頭へ
「なにするのよ!」
鬼の形相のモロウ侯爵令嬢。近くにあった骨付き肉を掴み、私に殴りかかった来た。
「あんたが、始めに仕掛けて来たんだろ」
私は、近くにあったケーキをわしづかみ、モロウ侯爵令嬢の顔に塗りたくる。
私達二人は、立食コーナーのテーブルをぶちまけ、食べ物にまみれ二人ともグチャグチャになりながら、取っ組み合いの喧嘩をしている。
「親父、止めなくていいのか、計画はどうする」
アイザックは、ルシルフル辺境伯へ問いかける。
「ハハハハ。何故止める。最高じゃないか。
ナナは、小さいころからずっと我慢してきたんだ、自分のじゃない責任に。ピンク頭の呪縛に。
その元凶と、取っ組み合ってる。止める事ができるか?」
「・・・できないな」
「だろ、このまま気が済むまでやらせよう。
断罪計画は狂ったが、うまく行くだろう」
◇◇◇
後日。
私は、卒業祝賀会をぶち壊した事について事情聴取を受けた。
確かに、私は赤い縦巻令嬢にクリームシチューをぶちまけたが、先に私に赤ワインをかけたのは相手だった事により正当防衛。
しかも、赤い縦巻令嬢は、私に名乗っていないので知らない人。身分も知らないので不敬にはならず、しかも私は未成年。厳重注意で終わった。
一方、モロウ侯爵令嬢の主張は、私がアイザック様を誘惑している。あの騒動は、迷惑しているアイザック様を助けたい一心だったと話すが、私は正式な婚約者。
第三者が口出す事ではない為、理由は通らず、暴行と侮辱罪で、貴族専用牢屋に入れられた。
釈放されるには、多額のお金と、身の潔白が必要。
そこで、ルシルフル辺境伯は、今まで集めたモロウ侯爵家の悪事を全て提出。
悪事の中には、人身売買や、他国へ我が国の情報を漏らすスパイ行為などもあり、協力した貴族も巻きもみ大捕り物となった。
◇◇◇
悪事を働いた貴族が淘汰され、開いた席に入り、男爵からクルーガ子爵となった。
領地だった広大な農地は、我が家に返却され、今、ルシルフル辺境伯領と繋がる道を開拓中。
その指揮をとっているアイザック様は多忙だけど、私に会いに1週間に1回は子爵家を訪れる。
「アイザック様、いらっしゃい。
今日は、アイザック様の好きな、芋まんじゅうを作りました。
天気が良いし、中庭で食べましょ」
「ああ、ナナが作った芋まんじゅうは旨いからな、楽しみだ」
アイザック様は、私のピンク頭を愛おしそうになでた。
「うふふ。ピンク頭も案外、いいかもしれない。」
白河・DG・夜舟様より頂きました
キャットファイト!
おしまい。
お付き合い下さりありがとうございました。




