辺境伯次男からの婿入り申込み
連載始めました。今までの連載はコメディーでしたが、ファンタジーに挑戦。
よろしくお願いします。
「は~い。みんな集合。ここが有名な、クルーガ男爵家です。
今日は、愚か者の家族がどんな暮らしをしているのか見学に来ました。
みなさん、壁や床、家具が傷んでいますので触ってはいけません。気を付けて、家の中を見て回りますよ。はぐれないように、ついて来て下さい」
今日も、王都の学園の生徒達が、我が家を見学に来ている。
我が家は、愚か者と呼ばれる令嬢を輩出した、男爵家だ。
愚か者と呼ばれる令嬢は私の12歳上の姉。
人のうわさでは、ピンク頭の股のゆるい令嬢だったと聞いた。
姉は13歳で、王都の学園に入学した。入学してから、まったく帰って来なかった姉の記憶は、当時3歳の私には、ほとんどない。
18歳になった姉は、学園の卒業式にやらかした。
当時の皇太子第一王子と一緒に、モロウ侯爵令嬢に免罪をかけ、婚約破棄を突き付けたのだ。
もちろん論破された。
賠償金を払う為に第一王子は鉱山へ、恋人だった姉は遊郭へ送られた。
監督不届きで、男爵家は平民になる予定だったが、モロウ侯爵家から待ったがかかった。
平民にしてしまったら賠償金を回収できない。
このまま男爵を続け、賠償金を払いつ続ける事となったのだ。
だが、領地は没収。商売も信用を無くし倒産。恩情で家だけが残った。
金がない、だが男爵を国に返却出来ない。多額の返済が肩にのしかかる。
姉の婚約破棄騒動から5年。私は13歳になった。
13歳だが、もちろん学費がかかるので学園にはいけない。
今日も、男爵家の横の畑で野菜を作り続けている。
「見て見て、あのピンク頭。クルーガ男爵家の娘よね。畑を耕してる」
「本当だ、令嬢なのに泥だらけ、ああわなりたくないわ」
私と同じぐらいの年齢の生徒達が、我が家の窓から畑仕事中の私を見ている。
始めは、悔しかったがもう慣れた。
我が家を社会科見学場所として提供している賃金は、モロウ侯爵家から支払われている。
『人のふり見て我がふり直せ』『反面教師』として、同じ事が起きないようにする対策らしい。
このお金で、月々の賠償金を支払っている。これも仕事だ。
◇◇◇
そんなある日、貧困男爵家の我が家に一通の手紙が届いた。
ルシルフル辺境伯から、私に婚約の申し込みだった。
ルシルフル辺境伯の次男(17歳)がクルーガ男爵家へ婿入りする申し込み。
「これは、何かの嫌がらせか」
「いいえ、あなたこれは、差し出し先を間違えたのよ」
「あのルシルフル辺境伯だぞ。宛先を間違えるか?隣国との貿易の要、防衛の要。王家も太刀打ちできないほどの、財力と武力を持つ貴族だぞ。管理も専属の者がいるはずだ」
「そうね、ではこの手紙は何?」
「お父様、お母様、これは詐欺です。信じてはいけません。今までいろんな事があったではないですか、『甘い話には裏がある』この5年で十分に身に染みたはずです。目を覚ましましょう」
「そうだな」
「そうね」
「そうです」
「だが、10日後、我が家を訪問するとある。本当に来たらどうする」
「どうしましょう」
「お父様、お母様、どうもしません。どうもできませんし。そのままを見せて、現実を突きつけるだけです。我が家の現状を見て、婿入りしたい貴族がいますか?」
「いないな」
「いないわね」
「いないですよね」
それから10日後の昼過ぎ、家紋なしの普通の馬車でルシルフル辺境伯様と、次男が我が家を訪ねて来た。
「マジか」
「本当だったのね」
「・・・。」
農作業後の休憩中だった私達家族。
慌てて、ルシルフル辺境伯様達を迎えた。
一応、キッチンへ。
客間は椅子もテーブルもない。
小さなキッチン、きしむ椅子に、歴代の戦士かと思わせるほどの貫禄、睨みで人が殺せそうなルシルフル辺境伯様と、辺境伯様に似ていない、艶めく紺色の髪に、スカイブルーの目をした細マッチョしょうゆ顔の次男が座っている。
私達家族は恐縮しっぱなし。緊張と混乱でどうしていいかわからない。
ルシルフル辺境伯様が話を切り出した。
「これが、辺境伯次男アイザック。今、王都の学園に通っている来年卒業予定だ。
アイザックは卒業後の婿入り先を探している。
クルーガ男爵。我が次男をこちらへの婿入り、検討していただけただろか」
父はおそるおそる答えた。
「それは、冗談で?」
「本当だ」
「私達をからかってる?」
「からかっていない」
「失礼ですが、詐欺ですか、私達には何もありません」
「詐欺ではない、本気だ」
「「「・・・。」」」
私はたまらず、声を挙げた。
「なぜ、私なのです。辺境伯次男なら、引く手あまたのはず。失礼ですが何かあるのですか?
例えば好いている男性がいるとか、不能とか、加虐心が強いとか、逆にマゾヒストですか」
「いいえ、私はそのどれでもありません。女性が好きですし、性癖はノーマルです」
アイザック様は、切れ長の目を細め、口元に笑みを作り私を見つめる。
何を考えてるんだ、この人達・・・。
白河・DG・夜舟様から頂きました。
我が家を社会科見学。農作業中のナナ
サクッと展開していくように書いていきます。




