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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 万貴三三
第四章 生まれ廻りて集いし混沌
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十数年停滞してたヴァラド前線は次第に衰え、やがて消えるそうです 7


鋭い眼差しを向けながら、貴族然とした戦闘服に身を包んだセドは、拳を強く握りしめる


「そんなに怒んないでよ! ちょっと小突いただけじゃん!!」


そう嗤う無邪気な声に気持ちが一瞬跳ね上がるが、すぐさま渦巻く感情の波を足に込めると、構えを取った


幾許かの不安はある

だが、恐れはない


寧ろ、今の彼には心地の良い充足感があった


ーー俺、やります


嗤い声が響く中で指を弾くと、乾いた音が一度鳴る


今は亡き、母に告げる様に


『第一魔力制限解除』


そうして再び、指先に力を込めた


『第二魔力制限解除』


「ハハハハハ・・・ハハ・・・は?」


乾いた音が、もう一度響いた時、テッラの嗤いは乾いていく


吹き出した風

その鋭さに目を見開く


「これ・・・」


膨大な魔力の放出が、可視化され、形となって行き交う光景に灯夜達も目を剥く


頬を撫でる暖かなで、力強い風に、既に意識も無く横たわるソガラは小さく笑った


「何だよこれ・・・こんな・・・」


ーーこんなになんて、聞いてない!!


片鱗があった

魔力制限術式はまだ1つ封印が成されたまま


それなのに、自分では及ばない程の力があるのだと、テッラは感じ取ってしまう


全身の腕が震える

形そのままに圧となって吹き荒れる風を前に、テッラは恐怖を覚えた


「行くぞ、テッラ・・・覚悟は良いか?」


見せつける様に手を前に出す


合わせた指が小さく震え、勢いよく弾け合う


その瞬間、風がーー


「止んだ・・・?」


一瞬の出来事

街にいた人々はさし示したように顔を見合わせる


そよ風ひとつ存在しない、一切の無風


重い、壁の中にいる様な静寂が支配した

故に、異質なのだ


『最終制限解除ーー



ご武運を、セド卿』

 

そんな中で聞こえて来た機械音声に思わず、彼は笑う


アイン・ダーカーはわかっていたのだろう

いつか、全てを解き放つ日が来るのだと


「ありがとう、博士」


小さく漏れた呟きは、静寂の中へと溶けていく




ーーカツン、と靴音が響く


戦っていた筈の怪人が

携帯斧を振り下ろそうとしていたMRAが

皆が手を止め、その音を聞き入る


足を下ろす、ほんの一動作が酷く緩慢に思える程にゆっくりに見えた


五感の全てが、彼へと意識を向けてしまう


そうして、再び響く





ーーカツン


その音が聞こえて来た時、音は再び甦る

猛烈な風を伴って


一瞬の衝撃と炸裂音

後に周囲の物を吹き飛ばさんと、彼を中心に暴風が吹き荒れ、風切り音が続いていく


「グウゥゥッ・・・!?」


離れて見ていたはずの灯夜達も、暴風を前にして吹き飛ばされない様にと、必死に踏ん張る


そうして、風が収まった時、テッラは焦りを禁じ得なかった


「ぐへっ!?」


自身の腹に走る衝撃

受け止める間も無く、受けた一撃に思わず仰反る


忌々し気に視線を前へと向けてみれば、そこにはセドの姿があった


「何するっ・・・」


言葉は続かなかった


言おうとした途中で、今度は顔に衝撃が走った


ーー速い!


反応を示す間も無く打ち込まれる拳


どうにかしなければ、そう思いながらも対処が出来ない


腹、頭、足、胸

流れる様に打ち込まれる連撃に、反撃の隙が無かった


それどころか、身体がうまく動かせない


拳を避けようと身体を捻ろうとすると、まるで緩やかに動く壁にぶつかったかの様な、硬質な感触に阻まれる


反撃をしようと全身の腕を動かそうとすると、何かに掴まれている感覚に防がれた


頬を撫でる緩やかな風が、テッラの全ての動きを阻害する


ーー風拳


風を纏った拳が身体を削る


ーー風竜牙


足先に作られた鋭い刃が全身の毛の様な腕を切り裂く


「あぁぁぁっ!! がぁぁぁっ!! なんなんだよ! あぁぁぁもう! 何なんだよお前ぇ!! 」


儘ならぬ状況に、叫び散らし癇癪を起こす


僅かに動く身体を振り乱し、腕を無理やり動し、セドへ向けて振るった


しかし、緩慢な動きの拳は、風を意のままに操るセドの流麗な動きを前に軽く躱され、逆撃の拳を受ける事になる


「お前お前お前お前お前!! 絶対に・・・」


「許さないか? 奇遇だな、俺もだ」


その言葉と共に、指が弾かれた


『オーバーパワー!』


機械音声が鳴り響いた瞬間、テッラは息を呑む


頬を撫でる風が勢いを増した


呼吸すら苦しくなる程の暴風

擦れ合う流れは空間を急速に入れ替え乾燥させていき、舞い上がる粉塵に目が痛む


「い、今更風の勢いが増したところで・・・!?」


そこでふと気がついた


風が"熱"を帯びている事に


「リーゼ、トローネへの仕打ち・・・」


彼を中心に吹き荒れる風に、青白い光が弾けた


最初はひとつ

だが、時を増して行くごとに、青白い光は幾つも現れる


粉塵同士が擦れ合う事による放電現象


その中で、彼はテッラを睨みつけながら小さく呟く


「父上を傷付けた事への裁き、受けてもらうぞ」


セドの感情を表す様に風は赫く染め上がる


それは、粉塵に引火した事による発火現象であり、焔を纏うその風の有り様は正しく、火を吐き、風纏う龍の様であった


「何・・・だよ・・・これ・・・」


目の前の光景に茫然とする


あり得ない

警戒すべきは浅間灯夜であり、セド・ヴァラドでは無かった


結論付けていたが故に、予想していなかった事態にテッラの思考が止まる


そうした思考故に生じた隙を、セドは見逃さなかった


構えを取る

万感の思いを込め強く握られた拳


収束していく風により、大きく腕が震えるが、やがて治っていき、同時に風が止む


澄んだ柔らかな風の流れと、熱く燃える焔を纏った灼熱の拳

それを構えたまま、セドの姿が消えた


ーーあ、マズイ


明らかに必殺の一撃を準備しているのだとテッラは感じ取り、表情が強張っていく


同時に風による拘束が緩まるのを感じ取ると、テッラはすぐに視界の端へと腕を伸ばした


「テッラ様、何を・・・!?」


テッラの拳に絡み取られた怪人は、驚愕の声を上げるが、テッラは構わず怪人を引き寄せた


ーーこいつを盾にすれば・・・


助かる

だが、そんな考えは、眼前に迫った焔の前に消え去って行く


「何をしようと無駄だ」


胸の奥まで凍り付きそうなほどの、冷たさを覚える宣告


同時に振るわれた拳と間に滑り込ませた怪人とがぶつかる



浸透・破砕拳

それは風を極限まで圧縮し、拳を叩き込むと同時に対象へと細やかな風刃として放出する技


だが、それはあくまで風の拳としての技


「浸透・・・」


焔を纏った今は、違うものへと変異している


拳を叩き込んだ瞬間、圧縮された細やかな風が刃となり、細胞の隙間を駆け巡り切り裂く


同時に、纏われた焔が駆け巡る魔力すらも燃料にして、切り裂かれた細胞の悉くを焼き尽くし全身を駆け巡る


言うなればーー


「滅却拳」


小さく溢れた技名と共に、怪人の背中から突き抜けた炎を纏った風の刃がテッラへと襲い掛かる


「はぇ・・・?」


呆気に取られ、気の抜けた声が漏れ出るが、次の瞬間には切り裂かれ燃え上がる


「ああぁぁ! がぁぁぁっ!!?」


切り裂かれた傷口が燃える


空気に触れた生傷のジリジリとした痛みと、自身の皮膚を焦がす火の感覚が、テッラの痛覚を刺激した


「あ、あぁぁ・・・あぁぁ!!?」


目の前で、術式回路の暴発すらせずに灰となり崩れていく怪人の身体が、形となった死の象徴として、テッラへと"恐怖"を覚えさせる


その時抱いた思い


ーーい、いや・・・嫌だ! いやだぁ!!


それは拒絶だった


風の拘束が解け、自由に動く様になった両腕を使い

テッラは全身に生えた毛の様に細い腕をーー


切り裂いた


「・・・っ!?」


次の瞬間には切り裂いた腕から漏れ出た体液によって火は鎮火していくが、テッラの凶行にセドは声も無く愕然とした


ツンと、鼻につく金属と肉の焦げた臭いが充満する

そんな中でテッラはセドを睨みつけた


白煙が立ち上がり、最初と比べて腕の数が減り貧相になった。緑色の体液で濡れた身体を動かし、叫ぶ


「お前・・・お前・・・!」


何かを堪える様に声を絞り出していく


「おぼえておけよ」


無邪気さを消して、明確な殺意を乗せた低く唸る様な怨嗟の呟きを放つ


そして、次の瞬間にはしゃがみ込むと、ありったけの力を込めて飛び上がっていく


「・・・っ! 待て!!」


追いかけようとした時、テッラの姿は闇夜へと消えていた


セド(大貴族戦闘スタイルver)

風を完全に意のままに操れる状態

身体を動かすときに風に乗る事で、ホバーの様な浮遊状態となり戦闘する

移動や身体を動かすときに、対応した場所に圧縮した風を展開して瞬間移動を行う

攻撃をする際は、足元の風を高質化の魔力で固め土台にして、踏ん張りを効かせ拳や蹴りを放つ


同時に対象の動きも、風を操る事で阻害して反撃を許さない



ヴァラド家、引いては大貴族の本質とは崇高な騎士でも無ければ、格闘家でも無い

勇者無き時、魔人から国を護る守護者である

故に、その戦いに慈悲は無い

その考えが、過去のモノと成り果てる時まで、彼らは守護者であり続ける

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