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異世界に行ったらヒーローになったSO!  作者: 万貴三三(元門鍵モンキー)
第四章 生まれ廻りて集いし混沌
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生誕祭 3

Q.思うんですけど、18歳のフィリアと20歳の浅間灯夜くんの恋愛って果たして合法で良いのだろうか、一応2歳差だけど

熱い

目の前から飛んできた炎に焼かれ身体が燃える

身体の表面がジクジクと爛れていき、満遍なく幾度も針の束を突き刺される様な痛みが全身余す事なく襲いかかって来る



痛い

巨大な牙が腹へと突き刺さった

一瞬の静寂、次の瞬間には刺さった箇所から頭のてっぺんにまで電流が走る様に痛みが実感として行き渡る



苦しい

下級怪人の触腕が首を締め付けた

嗚咽を感じた時の様に喉が狭まり、身体は酸素を求め、しかし、諦観したかの様に冷たくなっていく感覚がじんわりと広がっていく




ありとあらゆる苦痛が、感情の動きが、無数に、そして、同時に唸り襲いかかってくる


徐々に引き伸ばされ、早送りの様に流れていく光景はやがて剥がれ落ちていく鱗の様にポロポロと消えて行き、トウヤの意識は現実へと帰ってきた


「トウヤさん・・・大丈夫ですか?」


ショットグラスを片手に静止したトウヤの異変にいの一番に気が付いたリーゼが恐る恐るそう尋ねると、喉元まで登ってきた吐き気に堪らずトウヤは膝をつき吐瀉する


「トウヤ!?」


「おい、どうしたトウヤ!」


果たして今が夢か現実か、わからないほどの浮遊感がトウヤの思考を蕩けさせ、フィリアとセドの声が遠くに聞こえる


早く、早く立たなければ、心配させてしまう。大丈夫だと安心させねば


そう使命感に駆り立てられ一際大きな異物を吐瀉した後、トウヤは膝に手を置きふらつきながらなんとか立ち上がる


「トウ・・・ヤ・・・これはなんだ・・・?」


何を見て唖然としているのだろうか

回らない頭はセド達の異変に気付きながらも深く考えられない


とりあえず安心させようとトウヤは震える唇を曲げて微笑む


「すみ・・・ません・・・心配かけました。もう大丈夫です・・・」


涙で目が霞み何度も瞬きを繰り返し、頭の中は酸欠状態となり何度も三半規管がシェイクされている様な感覚に陥る


そんな中でも徐々にはっきりとした意識が、耳がフィリアの震える声をしっかりと聞き取った


「トウヤ・・・何、何て言ったの・・・?」


いつもは無表情なのに珍しく表情を変えて驚いているフィリアの声に、そんなに聞き取り辛かったのかと考えると思わず笑みが込み上げて来る


もう一度ちゃんと言わないと、そう思い今一度口を開く




「괜찮아」


今、自分は何と言った?


漸く彼女の言うことを理解した瞬間、思わず表情が強張り血の気が引く


「ฮะ? Quid est hoc?」


言おうとしている事はわかっているのに、自分が何を言っているのかが理解出来ない


「嗯? ¿Eh? あれ? ما هذا؟」


得体の知れない感覚が思考を支配する

自分の身体のはずなのに、まるで他人の身体のような虚無感とも違う感覚が恐怖の感情を引きづり出して来る


「なんだよこれ、Terrifying! terrible! 怖い!」


呼吸が荒くなり、膝を突きながらも自分の存在を確かめるように腕を肩に回す


視線を動かしフィリア達を見ると、皆一様に驚きから恐怖へと顔色が変わっている

その表情から逃げるように肩に回した手に視線を向ければ細くきめ細やかな肌の美しい手が見えた


「え・・・え、え、これ誰、De quem é esta mão? 誰の手だよ・・・나? 僕の手・・・?」


異変に気が付き両手を見てみればそこにあったのは左右で異なる歪な手

右手は先程見えたきめ細やかな肌の手、左手はそれとは対照的な全体的に茶色く荒れたゴツゴツとした手


いつも見てきた筈の自分の手、些細な変化などではなく明らかな異変にトウヤの頭がパンクする


「啊、Aaaaahhhh!?」


絶叫

意味のわからない状況に頭を手で抑え声色も発音も、その全てが壊れたラジオの様に変質しながら狂った様に叫ぶ


そんな彼の狂叫に合わせ身体が服の下で蠢き出す


「んん・・・わかる範囲だと、タイ語、韓国語、中国語に英語・・・あとはカタルーニャ語とブラジル語ですかね?」


「・・・っ! 貴様ぁ!!」


嬉しそうにトウヤを見つめるマインの胸ぐらをセドは怒りに任せ掴み上げると壁に叩きつけた


「トウヤに何をした! 答えろ!!」


「何って、返しただけですよ、本来アレはトウヤさん・・・いえ、フェイルのためにあったんですから」


飄々とした様子で笑いながら答える


意味がわからない、彼の発言に思考が追いつかない


そんな彼らの様子にマインはため息を吐く


「良いですか? 順を追って説明しますね?」


まるで子供に言い聞かせる様な言い方で語りかけてくると、マインはそのまま言葉を続ける


「まず、フェイルは私が作りました」


「なっ・・・つくっ・・・た・・・?」


「はい、原初の魔王を討伐する為に、何回も何回も世界の滅びを見ながら作り上げた失敗作です」


何を言っている

突然の内容に困惑する

初代勇者フェイルとは女神デアテラの加護を受けた人では無いのか

失敗作とは、作ったとはどの様な意味なのかと


「あれは失敗でした。まさか原初の魔王を討伐出来ないなんて・・・だから、新しく作ろうかと思いまして、それで出来たのが浅間灯夜です」


まるで工作が失敗したから作り直したかの様な軽さで打ち明けていく


あまりの意味のわからなさから茫然としたセドは手が緩みマインを離す


自由となった彼は礼拝堂へと向かいながら話し続けた


「人を・・・作るなど、そんなことが・・・」


「何を今更、もうやっているでしょう。あの下水道で、娘を蘇らせる為でしたっけ・・・よくもまぁあんな未完成な術式でやろうと決意したものですよ」


憔悴しきり連行されていく事件の当事者である母親の姿を思い出し、思わず失笑が溢れる


「私がやったのはアレの完成版、何せ次元因子収束論を用いた人体製造についての本を書いたのは私なんですから、もう1000年も前の話ですかね・・・いや、前の世界? 前の前の世界だったかな? まぁ良いでしょう」


それは即ち、別次元の同一存在、同一存在になり得た可能性のあるものから因子を取り上げ、それを人の形として復元したという事である


それも、神に等しい力を持つ原初の魔王を倒せる程の力を持つ存在をだ


あまりに現実離れしすぎているし、そもそも先程から言っている前の世界とは一体何の話なのか

巡る疑問が、今も聞こえるトウヤの叫びが、セド達の精神をガリガリと削っていく


「ただ残念な事に・・・彼、まだ未完成なんですよ、最後の1ピースが足りて無いんです」


「それは・・・」


「これですよ、こ、れ」


掛かっていた布をゆっくりと持ち上げ聖遺物と呼んでいた物の姿を露わにする


そこにあったのはコルクで蓋のしてある平底フラスコとその中に満たされた赤い液体だった


「これ・・・は・・・」


「フェイルの血です」


「血・・・!?」


「えぇ、知ってますか? 人の魂とは記録が刻まれた21gの水なんですよ、水だからこそ、血液にもその魂の記録が滲み出しているんです」


無知な生徒へと教鞭を取る教授の様に礼拝堂の中をギシギシと床が歪む音を立てながらマインは練り歩く


「彼に飲ませたのはこれの一部、今の彼はその副作用で苦しんでる最中という事ですね」


服の下で何かが蠢き、ついには膨張すら始め出した


今の状況が副作用であると

ならば、今彼は何になろうとしているのか想像出来ない恐怖がそこにはあった


「それじゃ・・・」


「ん?」


苦しむトウヤに回復魔法をかけながら介抱するフィリアが顔を歪ませ苦しそうに問う


それはある意味で、最も辛い質問

彼の話が真実とするならば、自分たちが今までに聞いてきた彼の


「トウヤの故郷は・・・」


「ありませんよ、そんなもの」


何の躊躇いもなく、罪悪感もなく、ただあっけらかんと言ってみせた


そこに何の感情の動きも見られない


「う・・・そだ・・・嘘だ!!」


優しかった母も、不躾ながらも世話好きの兄、調子に乗りやすい天真爛漫な姉

そんな彼らと住んだ家

幼少期の思い出に、通った筈の学校

友人達と遊んだ楽しい記憶

この世界に来るきっかけとなった就職


その全てがまやかし

全くの偽物、何処かの誰かの記憶をただ自分ごとの様に思い返しただけ


その事実にトウヤの心はボロボロと砕けていく


心の奥底に宿っていた望郷の念も、いつか望んだ帰る日が来ることは永遠に来ないのだから

瞳から溢れ落ちていく涙が、より喪失感の穴を広げていく


そんな彼を見たフィリアは、溢れ出る怒りの感情に促されるがままに眉を顰め感情を乗せた声を睨み付けながら発する


「マイン・・・!」


「あぁ漸くだ、漸く終わる」


だが、そんな彼女の事などお構いなしに恍惚とした表情を浮かべ感傷に浸る


脳裏に過ぎる光景はどれもこれも曖昧だ

当然である。彼はこの世界だけでも1999年も生きているのだから


「あれから何度も・・・何度も・・・」


だが、それでも

どれだけ年月を重ねようとも忘れる事など出来ないのだろう


俯き何かを堪える様に声を、拳を振るわせる


「故郷を、友を、家族を殺され・・・何度も、何度も世界の滅びを・・・人の死を・・・」


もう彼の心は限界なのだろうことは、彼自身が1番理解している

だが、それでもと


睨みつける様に天井を流し見ると咆哮する


「何度も消えていった。何人も、何百も、何億も、何兆も! 世界が滅び皆死んでいった。魂を砕かれた!! 何度も・・・何度も何度も何度も何度も! 何度も世界が滅び人の夢も希望も・・・私の手からこぼれ落ちていった全ての仇を・・・」


滅んでいった世界の中で多くの人と親交を交わしたのにもう誰1人も思い出せない

想い出の場所も、交わした言葉も、何一つ思い出せない


あんなに愛した女性の顔も、声も、姿形すらも、共に見た景色も、笑い合って食べた筈の食事も、経験も、その全てを喪失して、喪失してなお漸く辿り着いた


「もう誰も消させない! 誰の魂すらも忘却させない! 全てがお前の思い通りになると思うなよアズ!」


狂った瞳で笑顔を浮かべ狂叫し、笑い狂う


全ては散っていった全てに報いる為に

いつか、また会えた時に、あの時の様に彼女が笑える様に


そうして念願叶った夢に歓喜するのだ


「私は消えていった全ての・・・全ての・・・」



おかしい

トウヤへと視線を戻し異変に気がつく

彼の身体が肥大化していき、収束するを繰り返し続け一向に纏まる気配がない


いや、それどころか未だフェイルの魔力量には届かないとはいえ、あの量にしては異常過ぎるほど魔力量が膨張を続けている


「何だ・・・これは、知らない、これは・・・なんだ・・・?」


予想だにしない展開

本来ならば嬉しい誤算の筈なのに、予想を大きく上回り過ぎている結果に後退りをする


『思い通りにならぬのだろう? ならば、貴様のそれもそうならぬ保障は無かろう?』


「え・・・あ・・・」


その瞬間、マインの世界は赫く染まった

A.出生7ヶ月児と18歳なのでセーフ(書面だけならアウト)です笑

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