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元警守官

 朝日が昇り、莉月は読んでいた本を閉じ、居間へ向かった。家の内装は一見和式だが実は和洋折衷である。和室もあれば洋室もある。ちなみに莉月の部屋は洋室だ。居間は洋室だが一角だけ畳となっていた。そして居間では、祖父が新聞を読んでいた。


 「やっと起きてきたか。寝坊助」

 「まだ朝の五時半だろ」


 祖父は居間に入ってきた莉月(りつ)を横目にそう言った。冷徹そうに見える祖父だが、人望が厚い元警守官である。現役時代は、数え切れない程の癲者を葬り、命を救い、国民全員の憧れだったが、引退した今となってはただの気難しいおじさんである。それでも、(まく)った袖から見える腕の傷は危険な任務を遂行してきた証で、体格の良さ(など)は元警守官ということを物語っていた。


「警守官たるもの、努力を惜しんではならぬ。他人より優れるには、他人の倍の努力をしなければならん。五時半でも努力してる奴は、もうとっくに動いてる時刻だ」

「別にいいだろ。警守官でもないのに何でそんなことしなければならないんだよ」

「一条家の跡取りであるお前がそんなんでどうする!この家に産まれた以上、家業である警守官にならねばならん!」

「何度も言ってるだろ。俺は警守官にはならないと」

「莉月!」


 朝食を食べに居間へ来た莉月だったが、祖父の小言で完全に食欲がなくなったため、自室に戻ることにした。

 それから、昼前まで莉月は自室で過ごした。その間、祖父は、外出していたため小言を聞かずに済んだが、そろそろ帰って来る頃である。帰ってきたら真っ先にここに来るだろう。今、祖父と顔を合わせるのはなんとしてでも避けたい。それに朝から何も口にしてない、ということもあって空腹である。


(外で何か食べてくるか)


莉月は、携帯電話と財布を持って家を出た。



 莉月は最寄り駅から地下鉄に乗り中心街へとやってきた。観光客で溢れかえる中心街はとても賑やかで、毎年七月に行われる祭りも有名である。そんな中心街に莉月の行きつけのお店があった。大通りから一本脇に入ったところにあるその店は、和食から西洋料理まで提供してるが、地元の食材を使った和食が一番美味しい。莉月は早速その店に入った。お昼時、大通りにある飲食店は混んでいるが、一本脇に入ったこの店は空いていた。莉月は鱧定食を注文し平らげた。

 その後、周辺を少し散策することにした莉月は、大通りを東に真っ直ぐ進み橋を渡ったところにある神社に寄った。中心街の近くにあり、交通の便も良い神社は中心街と同様に賑わっている。御賽銭を入れ、境内を一周し、神社の脇にある小さな公園で一休みしようと公園に着いたときだった。莉月が癲者に遭遇したのは。

 



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